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憧れた人
自分が芸人を志した時に欠かせない人、それこそが志村けんさんだ。 僕は、『生い立ち』の記事でも書いたが愛媛県の田舎出身。 ただでさえ地方には映るチャンネルが限られている中で、『志村けんのだいじょうぶだぁ』「志村けんのバカ殿様』は欠かせなかった。
幼少期に何を観て面白いと思うか?はすごく大事だ。 関西だと吉本超合金であるとかすんげぇ〜ベスト10とか、ごっつええ感じもそうだ。 僕は志村さんの番組に大きな影響を受けたのには間違いない。 分かりやすい動き、タイミング、突然のハプニング、気持ちの良い音感、顔の使い方、沢山の志村要素がバンビーノの端々に入ってるように思う。志村さんのおかげで家族と同じテレビで笑い合えたことは幸せであった。 父ちゃんも母ちゃんもみんな笑ってた。
今もなお色褪せることのない演芸。 追悼番組で世代を超えて、笑って泣ける芸人さんは数少ないと思う。
芸人を始めるにあたって志村けんさんと共演するのが夢だった。 バカ殿様に出れたら最高だなぁーなんて漠然と思っていた。
それが現実になるとオファーを頂いた時は、『本当か? そんなうまい話ないやろ!』 とあまりもの現実味のなさにドッキリちゃうか??と本番まで半信半疑だった記憶がある。 バンビーノはダンソンの格好で!!と漠然とした事しか聞かされてなかった。当時、同じようなオファーが沢山あった。いつもの仕事とそこまで変わりないことなので、どこかで出てきて踊るんだろうな〜という感覚でいた。
とりあえず、僕はどの場面でダンソンを踊ればいいのだろう?
台本は前日か前々日に渡されたのだと思う。
殿の部屋?
これオープニングぽくない?めちゃくちゃ大事な場面やないかっ!!
えっ?志村さんもあの衣装着てくれるん?
そんなことある!?
え、志村さんと一緒にダンソンを踊るってこと?
殿の部屋で踊り、袖にもハケる。しっかりダンソンが成立する舞台の台本。ほんで、台本で見た時のダンソンの歌詞が全く意味わからんわ! フル台詞いらんて!台本を書いた人にも謝りたい!
今でもこの台本は僕の宝物だ。 この台本を見るたびにコントを諦めてはいけないと思う。
とにかくめっちゃ嬉しい! 一緒にコントできることが。まさか自分が作ったコントをバカ殿と一緒にやることが出来るとは!?過去の小さい頃の自分に今すぐ教えてあげたかった。
そして、当日
楽屋に入る前に女中役の楽屋にご挨拶、これだ!!いつも横にいる綺麗な方たちだ。
横に沢山のスタッフを従えて衣装を合わせながら軽く喋っている人がいる。
『あれだ。きっとあれが志村けんだ。 本物だ。本物の志村けんだ。」
背中からビシバシ感じる大御所の空気。百戦錬磨の芸人。 まだ背中しか見れてない。
「そやんな? あれは絶対に志村やった」
とコンビ間で話し合いながら、挨拶もまともにできずにメイクをする。 そして、自分の楽屋に帰る。 台本には書いてるが、2人の不安が凄い!
まず、1人ずつ踊っていくのか? 2人がいっせーのと同じタイミングでダンソンを踊り始めるのか? そもそも、志村さんと僕の獲物は一緒なのか? 袖にハケる時はどこまでハケるのか?
コント師としては気になることが沢山あった。 しかし、元来、バカ殿様はこれぐらいの打ち合わせで本番はJAZZのセッションのようにしていくのではないかという可能性もある。そうなるとヤバイぞ。こんなペーペーの芸人が志村さんと立ち会えるか? 2人して色々なパターンを頭で描きながら対応策を楽屋で練っていたその時、コンコンと楽屋がノックされた。
スタッフ『バンビーノさん、志村さんが呼んでます!!』
バンビーノ『えっ? 志村さんが?えっ本人が?』
うわ!怒られるっ!!と思った。挨拶がまだ出来ていなかったし、これはヤバイぞと。
スタッフ 『コントの打ち合わせがしたいそうです。志村さんが楽屋で待っています。』
バンビーノ『えぇーーーー!! 志村さんと楽屋で? 3人で?』
僕らの出番なんてほんの少しなのに。そこもちゃんと打ち合わせしてくれるんだ。緊張した足取りで志村さんの楽屋へ。 とうとう初めて志村さんと喋るのだ。緊張で心臓はバクバクだ。
コンコン
『失礼します』
『はいはい、どうぞ!そこでいいから聞いて!』
挨拶もそこそこに、志村さんが台本を開きながら、『今日のコントなんだけど、、、』とコントの説明や自分達の位置取りまで説明してくれる。
志村さんは胡座をかいて台本を、僕たちは靴を脱がずに、志村さんが座っている目線に合わすように2人しゃがんで話を聞いていたと思う。
今、この楽屋には志村けんとバンビーノしか居ないのだ。
憧れの人がすぐ近くにいる感覚、自分が作ったネタを笑いながら話をしてくれる感覚。そんな経験はなかなか出来ることがないだろう。 そんなことを思っていたらあっという間に終わった。
志村さんが言った最後の『うん、後は本番で!』
そんな一言が芸人として少しは認めてくれているようでほんのり嬉しくなった。
本番は俺がいるから何があっても大丈夫。そんな風に言われている気もした。
『ありがとうございました! 本番、お願いします!』
石山『ほんまに志村けんやった。こんな事ないで、藤田? 凄かったなぁー。こんな短い出番の俺たちにもあんな風に打ち合わせしてくれるんやな。やっぱりコントは準備が大事ってことやなぁ〜』
藤田『思ったよりOFFの時、声小さかったなぁ。あれ途中はなんて言うてたん?』
石山 『いや、俺も緊張してて真ん中の方あんまり聞けてないかも。俺から踊るっていうのは言うてたよな?そしたら殿が出てきて、、
藤田 『いや、俺は石山の後ろに座ってたから本当にほとんど聞こえんかってん。石山が全部聞いてるやろうと思って。』
大事件である。
2人とも打ち合わせの半分を聞き流している。
2人が唯一覚えてたのは最後の
『じゃあ、まぁ、、あとは本番で!』
この一言だ。
やばい。 それしか頭に残ってない。。
これ。本番でセッションするのとほとんど同じやん!
そして、本番へ臨むのである。。
志村と即興でJAZZ?
そんなことができるか??
打開策を探せっ!! バンビーノ!!
続きはまた。
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![バンビーノ 石山大輔](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/28265866/profile_b9aa527139736408dedf0067d46eed82.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)