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恩田陸『蜜蜂と遠雷(上)』

2017年の本屋大賞受賞作品。映画化もされたらしい。

塵、亜夜、マサル、明石という4人の天才ピアニストと彼らを取り巻く人たちの様子を描いた作品。ピアノコンクールに出場を決めるところから、一次予選、二次予選と丁寧に描写する天下一武道会みたいな内容。文庫本で上下巻900ページの長編小説で、登場人物もかなり多いけれど、すごく分かりやすく魅力的に描写してくれて、食い入るように一日で上巻を読み終えてしまいました。

この筆者、どんだけ書くのが好きなんだろう、って思う。ひたすら曲を演奏して競っていくだけのストーリー。筋書きは明確で、誰が一位になるかは分からないけど、別に大きなトリックが潜んでるわけでもない。とにかく、みんなが全力で音楽に挑んでいる様を描き続ける。

そもそも、音楽を文章で表現するのにも限界があると思う。逆に、文章でしか表現し得ないような抽象的な音楽の描写も多い。もう、何が音楽で何が芸術かよく分からなくなる。でも、そんな天才演奏家たちのバトルを、延々と450ページ読んで、ようやく二次予選の半ばだ。どう考えても、このペースで進むと下巻の終わりでようやく決勝が決着する。このまま、さらに500ページも、どうやって展開するんだ?

読む限り全く飽きることはなく、すごく面白く登場人物の人生に引き込まれますが、それを書き続ける筆致がすごいなぁと感心しました。塵と亜夜とマサルは、お互いに色々と交錯して面白くなってきましたが、明石だけ一人ずっと浮いてるので、どんな感じに下巻では絡んでくるのかが気になります。

後半も楽しみに読みます。

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