野生の思考 第五章「範疇、元素、種、数」
ここでは主に二分法の話をしている。簡単に言えばアキネーターだ。どんなものでも、質問を繰り返すことで特定できるようになる仕組み。
それは動物ですか、植物ですか?
それは草ですか、木ですか?
それはトウガラシですか、イネですか?
それは栽培種ですか、野生種ですか?
それはキダチトウガラシですか、アマトウガラシですか?
未開人たちは、このように二分法を使うことであらゆる動植物を同定できるように体系を作り上げている。その分類はとても精緻で、抜け漏れなく、重複なく、とてもよくできている。すごいよね。
病気についても、同じように分類している。
それは傷ですか、皮膚病ですか?
それは炎症ですか、潰瘍ですか、発疹ですか?
それは単純ですか、複合ですか?
それは開口症ですか、内部症ですか?
それは重症ですか、軽症ですか?
それは表層部ですか、深部ですか?
それは末端部位ですか、中央部位ですか?
分類の基準は、現代科学の分類と違うかもしれない。未開人たちは神話的思考であり、出来事から理屈を組み立てるので、ちょっとその分類はどうなの、って思うかもしれない。でも、彼らは事実として正確に分類を行っているのだ。
こうした二分法は、あらゆる概念に適用される。上と下、右と左、男と女、空と地、昼と夜、夏と冬、平和と戦争、宗教と政治、静と動、聖と俗。
また、二分法によって分類された動植物たちは、別の分類によって再統合されていく。
それはあざらしですか、くまですか、わしですか?
それは頭ですか、首ですか、足ですか?
こうして分類したものを、逆に束ねていく。
あざらしの頭と、くまの頭と、わしの頭。すべての頭。
あざらしの首と、くまの首と、わしの首。すべての首。
あざらしの足と、くまの足と、わしの足。すべての足。
すべての頭と、すべての首と、すべての足。すべての動物。
は?
何を言ってるか分かりません。
筆者は厨二病にかかったらしく、突然こうした意味の分からないことを言い出した挙句、この分類体系に名前を付けました。
トーテム操作媒体(オペレーター)!!!!
どどん!
謎の用語にカタカナのルビ付き!
謎の図解付き!
筆者が考えたこのトーテム操作媒体(オペレーター)という分類方法は、よく分からないけど未開人が自然とやっていることらしい。
未開人の分類は、とにかく、まず大きな範疇(動物など)から、その下の中分類である元素(陸の動物、海の動物、空の動物など)に分けられ、そして個別の種(イヌワシ、カラフトワシ、白頭ワシなど)に分けられていく。
こうして分類された個別の種は、さらに様々な特性、たとえば色(赤、白、まだらなど)や年齢(若鳥、成鳥、老鳥など)によって細かく分類されることによって、個体識別にまで至る。
どの部族を見ても、だいたいこの個体識別の数の限界は二千らしい。きっと人間の把握力の限界がその辺にあるんだろう。
こうして分類されたワシを、別の視点で考える。たとえば、あの老いた赤いイヌワシも、こっちの若い赤色のカラフトワシも、攻撃的な性格をしているな。赤色のワシは攻撃的なんだろう、と別のくくりで新しく分類することがトーテム操作媒体でやっていることだと思う。
最後に面白い事例を紹介しよう。昔、オーストラリアに西洋人がやってきて、原住民をみんな収容所にぶち込んだらしい。原住民はそれぞれの部族で違う分類のトーテムを信仰していたが、それが一ヶ所に集められた結果どうなったか?
なんと原住民たちは、共通の分類体系を作るためのすり合わせを行ったという。我々はオッポサムを火の仲間だと思っているが、あなたたちはアカシアの木の仲間だと思っている。じゃあどういう風に分類すればお互いに納得できるかな、ということを一つ一つ探っていくらしい。
そのとき、木とその木に巣をかける鳥は同じ仲間だよね、川とその近くに生える木は同じ仲間だよね、そういった様々な個体識別の切り口から新たな分類形態を再統合していく作業こそ、トーテム操作媒体(オペレーター)なのではないだろうか?
そして、この作業は、言語学における恣意性と有縁性の関係とも同じ構造なのだよ!!!分かったか言語学者ども!!!(突然の飛躍)(さすが厨二)
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