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もがいていた自分を越えた今。対話と出会った私達の現在地/DANROスクール卒業生の対談
人と人とのつながりの中には、”目には見えない温かさ”がある。その温かさが増し、循環する時、きっと、世界は今よりもっと明るくなる。そんな想いから『深いつながりを紡ぐ、実践型対話スクールDANRO』は生まれました。
フォトグラファーとして活動している山本真央さんは2年前、DANROスクール第一期となるSUMMERを。翌期のWINTERには、この記事の筆者であるインタビューライターの私(廣田彩乃)が参加していました。
対話と出会い、日常に根付いてきた2年間。変容を加速させた「私達にとっての対話とは」それぞれの現在地から語ります。
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最新のまなざしの先に在るもの
彩乃:DANROをきっかけに対話に出会って、日常に対話が在ることが当たり前になった私達だけれど、真央さんは2年前と今と、どんな変化を感じてる?
真央:そういえば最近(今でも、DANROスクールのSUMMERを一緒に受けた仲間とはよく話しているんだけど)自分のなかで幼少期の頃に置いてきぼりにしちゃった感情とか、自分自身を迎えに行っている感覚があって。
あの時あのタイミングで傷ついた自分を、今迎えに行っている。「大丈夫だよ。あなたはあなたらしくていいんだよ」って手を取った感覚みたいな。
でも、無理やりその小さな自分をぎゅって引っ張り上げようとする感覚もなく、もう大丈夫だからって声を掛けて「そこから進まなくてもいいけど、後ろに下がる必要もないよ。いつでもあなたのタイミングで前に進んでいいよ」って言ってあげているような。
それを言語化出来た時に、嬉しかったというか、しっくりきたんだよね。この2年してきたことが、やっと最近言語化できた気がしてる。
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彩乃:言葉こそ違うけれど、私も真央さんと近しい感覚はあるかもしれないなぁ。幼少期って、少ない選択肢のなかから自分ができる選択をしてきてて、それってすごく不器用な守り方だったというか。
でも、その昔のやり方を大人になった今でもやっていると、いつからか合わなくなってくる。だから「今は今で大丈夫なんだよ」って言ってあげることも、今の自分に当てはまる選択を見つけてあげることもすごく大事だなって思う。
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真央:そうなんだよね。私、前にセラピーを受けた経験があって、その時「自分の怒りの感情が許容できないのかもしれないね」って言われたことがあって。
確かに誰かに対して恨むとか、イライラするとか「こんちくしょー!」って怒ることって良くないことだと思って封じてたのね。自分がその感情になることもイヤだから、敢えて見ないとかそうならないように自分をコントロールすることをしてたんだけど。
それ故に、自分の身近な人がイライラしていることとか、誰かに怒っていることを本当の意味で許容できてなかった。自分がその感情を許せてないから、相手がその感情になった時の対処の仕方が私が分からなくなってて。
でも、対話とかセラピーを通して「自分の今の感情にとことん向き合う」っていうことをずっとやってきてたんだよね。今どんな感じ?じゃあどうしたい?って。
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真央:それで、セラピーの人に「怒りってものすごいエネルギーなんだけど、真央ちゃんがそのエネルギーを自分のなかでちゃんと”必要なパワー”に出来た時にすごい力になるよ」って言われた時に、初めて”怒りって受容してもいいんだ”って感じるようになった。
まだまだ怒りに向き合っている最中なんだけど(笑)怒り悲しみからの変換って、今の私にとって課題だなって思う。
「怒り」というエネルギーをパワーに変えて
彩乃:怒りって感情って、大小関わらず悩ましいよね。例えば「あぁ、今怒りを爆発させられてるな」って、ある意味感情を感じ切れているってことに少し時間が経てば分かるけど、その渦中にいる時は”そうなってしまった自分”に落ち込んだりするし……。
少なくとも、自分のことを俯瞰して理解できるようになっても、怒ってしまった相手に対してどうその後の関係性を築いていこうかとか、反対に相手(目の前の人)が感情を爆発させてる時も、その場の空気って心地良いものではないからしんどくなってしまったりとかあるもん。
怒ることは悪いことじゃないし、感情を露わにすることも悪くない。けど、「だがしかし…」みたいな(苦笑)
真央:怒りが感情のなかで一番パワーが強いんだよね。
彩乃:あと、痛い(笑)
真央:痛い!し、発するのも億劫なのよ。
彩乃:怒るのも防衛反応だし、気付かないふりするのも防衛反応。どちらも自分を傷つけないように守ろうとする大切な感情(行為)に変わりないけどね。
真央:そう!でも、子どもには前者しかないから「うわー!」って爆発してエネルギー切れになって、自分のキャパシティーを知っていくというか。考えずにいられるからそれができるけど、大人になるとそれが感覚的に分かるから抑えられちゃうんだよね。
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見て見ぬフリをすることが上手になるけれど
本当はちゃんと、自分と向き合いたかった
彩乃:協調性があるって大事なことだけど、必ずしもそれが最優先にしないといけない場面だけではないというか。その時の自分や、周囲との関係性の築き方、向き合い方ができてればいいというか。自分の取扱説明書を知るって大事なことだなって思う。
真央:あと、自分が怒りを発散できる人達と付き合うことも大事だよね。そういう人との繋がりをどう作るか。いろんな自分の感情を見せられるって、すごく尊い関係性だと思うから。
彩乃:怒った後、もう無理だと思われる関係性ってつらいけど「今この人はこういう状況なんだな」って、「今」として受けていれることってすごく大事だよね。それこそ、最近あった真央さんたちの個展の準備の時もそうじゃなかった?
真央:あったよ。やっぱりやりたくて始めたことだけど、期限があるし苦手なことも「やらなくちゃ」って思う瞬間もあるから、誰に対してとかじゃなくてその状況にイラってすることもあった(笑)
でも、関係性がその後に変わることはないというか、みんながその自分の状態の解消方法を知っていたんだよね。
本当に自己分析というか、自分を知ることって本当に大事で、その時に必要以上に自責になる必要って1㎜もないというか。昔はよく「私のせいで」って思ってたけど、「それって自分が生きるために必要ある?」って。
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どちらも大事で、心地良いバランスは変わっていくのだとやっと分かった
彩乃:どこまでが自分の責任で、どこまでが他者の責任かって対話でしか分かり合えないよね。
その話で言うと、最近ふと、自分をさらけ出せる関係性が昔に比べて増えたなって思ったんだよ。それを今年の上半期に参加していたDANRO BEYONDで感じたんだけど。
人を、環境を選ぶ勇気の積み重ね
彩乃:DANRO BEYONDのホームワークに、身近な人に【①私の信頼しているところ ②その信頼している理由がなくなったらどうするのか?】尋ねる機会があって。驚いたのは、私が聞いた人みんなが②の解答に「なんでそうなったのか理由を聞く。まずは知りたいなって思うかな」って言ってくれたの。
それを聞いて、私の取柄(良いところ)が変わってしまったら関係性が絶たれると思ってたけど、新たにお互いにとって心地良い関係性を見つめ直してくれる人が増えたなって気付きがすごく嬉しかったんだよね。
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真央:環境を選ぶ勇気を積み重ねていくことって、本当に大事だよね。もうさ、私たち本当にいろんなこと乗り越えてきたよね!?DANROスクールの最初とか、今思えば私にとってはもう訓練みたいだったもん(笑)
でも、その時その時の自分の人生のどこに点を打つのか。その連続だったなぁって思う。
もがいていた2年前の自分を越えて
真央:昨日開催したDANRO CHILDRENのクリエイティブチーム3人(私、YUIさん、絢子さん)の個展に、数年前から私のことを見てくれてる人が来てくれて。
私達をきっかけにDANROスクールに参加することを決めた方に「数年前から、真央さんがもがいてる姿を見続けてきた」って言われた時、「そっか!私もがいてきたんだ!」って思ったんだよね。
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真央:今はもがいているって感覚はないしあまり言わなくなったけど、だけど確かにもがいていたし、それを証明してくれる人もいる。
そのことを再認識して実感した時に、最初に話していたあの時もがいてきた自分に、今の自分が手を取って一緒に進んでいこうねって言えたんだよね。
展示した写真たちを見てくれた人が「今のまおちゃんが全部あるね」って言われたことも、自分が気付ききれない自分を写真展を通して、それから、写真展に足を運んでくれた人を通して実感したことも嬉しかった。
あの瞬間、また勇気を出して前に進めたなって感覚がすごくあるし、私のことを大切に想ってくれている人が私に伝えてくれた言葉っていうのは、すでにもう今の私の糧になってるなって感じてる。
彩乃:私も当時の真央さんの発信を見ていたけど、もがいてる姿をあんなにもリアルに見せられるってすごいなって思ってたなぁ。
真央:やばかったよね!?(笑)カメラの前でいきなり泣き出してそれをSNSに投稿してるのに、会ってる時はすごく元気で…って「病んでるの!?大丈夫!?」って心配した人もいたと思う(笑)
それくらい衝撃的だったと思うけど、あの時は自分の生きた証として残し続けようってそれだけだったんだよね。
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その一瞬を、もがきながらも生き続けてきた
彩乃:きっと、当時の真央さんは自分を客観的に見れないくらいいろんな自分が一体化していたから、フィルターを通して自分を俯瞰して見ようとしたり、いろんな人の目を通して自分を知ろうとしていたのかもね?その手段が発信することだっただけで。
本当に生々しいくらいに見せてくれていたから、私も自分に目を向ける勇気をもらっていた気がする。
真央:それに近しいこと、写真展の時にも言われたんだよね。「真央さんの気持ちがすごく入ってくる。自分事になる」って言われて「ありがとう」って気持ちにもなったなぁ。
でも、それを後押ししてくれていたのがDANROであり、SUMMERの仲間であり、草さん(DANRO SUMMERファシリテーター)だったから。
2年前を遡ると、あのもがいていた一番最初は本当にしんどかったけど、自分に一生懸命になって、自分に時間を割こうっていう勇気を出せたことから全部が回りだして今があるって思う。
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改めて思う、私たちにとっての「対話」とは
彩乃:最新の真央さんが「対話」を説明するなら、なんて言葉にする?
真央:うーん…。ぐっと潜った時は、最初に話した”手を伸ばしている感じ”なんだけど、「対話ってなに?」って聞かれたら、愛が真ん中にあるものだと思っていて。
ちょっと言葉にすると抽象的でファンタジーって思われるかもしれないけど、最近の自分の視点が”宇宙から見た地球”みたいな感じなのね?それくらい大きな視点がより自分を心地よくするなって思っているし、寛容になれたら世界平和にもつながっていくんじゃないかって思ってて。
もっともっと昔。現代に比べてなにもなくても毎日幸せを感じて生きていた時代もあったのに、いろんなことが効率化できるようになって、人生の効率化を求め始めて。それって幸せなんだっけ?って考えた時、否。違うなって思う。
みんなそれぞれがもっと自分らしくあればいいよねって思うし、何かに縛る必要も縛られる必要もないなって。
私が大事にしたい「地球を愛すること」って、つまり自分を愛することでもあるから、対話はそのための手段だなって思う。
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真央:彩乃さんは?
彩乃:私も愛が真ん中にある感覚だなぁ。言葉は違うけど、私にとって対話は「今を知り合うためのもの」。それはなんのために?って聞かれたら、大切な人を大切にし続けるためなんだけど。
最近、私にとっての人生の成功って、自分の大切な人と幸せを共有し続けることだなって再確認することがあって。ただ共有するだけじゃなくて”共有し続けること”なんだなってそこへの強い願いに気付いた時に、その過程にはハッピーハッピーなことだけじゃなくて、いろんなプロセスがあると思うんだよね。
でも、それすら最高だよねって、今生きてることに喜び合うことができたら、もっと幸せだよねって思うから。
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彩乃:そのためにもお互いを知り合い続けるって必要だし、そのための術があることは希望だと思う。だから、私にとっても大切な手段というか、自分のなかの一部っていう感覚かなぁ。
真央:いいね。最高。これからも対話し続けようね。
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\実践型対話スクールDANRO 詳細はこちらから/
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山本真央|photographer
「想いを温め合える」がモットー。その人が大切にしたいことに対し、レンズを通してその人の想いを馳せる。一度きりではなく何度も続いていく関係であるために、目の前の人が”心から愛おしい”と思えるように、そんな想いでシャッターを切る。Instagram
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廣田彩乃|インタビューライター、パーソナルコーチ
”自分の人生が愛おしく思える瞬間を、日常に増やす”ことをMISSIONに、人生の棚卸や感情の言語化に携わるインタビューライター、パーソナルコーチとして活動中。自分が満たされたその先に、大切な人との「今」をもっと大切にしたいという循環を後押しすべく、家族の物語を1冊の本にする家族向けのインタビューサービスも行っている。Instagram
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DANROについて
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「日常に対話を、対話を文化に。」をスローガンに掲げるダイアログカンパニー。私たちがともにこの世界に生きていくために、人、自然、社会など全体性を探求しながら、循環し合える空間を創造しています。
実践型対話スクール、DANRO CHILDREN、自己を探究するダイアログコミュニティの運営などを行う。その他対話を軸とした事業を展開。