浄土宗全書5附言
明治41年(1908)12月に刊行した『浄全』第5巻に付録された附言を紹介します。
なお旧字を常用漢字等現在通用の漢字に直し、適宜読点を加えました。
第五巻附言
一、本書第五巻に収むる所の書籍稿本の種類、並に稿本所蔵家の芳名、例によりて左に之を記す、
(書目) (稿木種類) (蔵書家芳名)
慧遠大経義疏 (寛文板) 宗教大学
吉蔵大経義疏 (延宝板) 同
元暁両巻宗要 (未詳) 本会
璟興大経述文賛 (元禄板) 不染信翁師
慧遠観経義疏 (未詳) 宗教大学
智顗観経疏 (正保板) 同
法聡釈観経記 (亨保板) 同
智礼観経疏妙宗鈔 (元禄板) 不染信翁師
吉蔵観経義疏 (延宝板) 宗教大学
元照観経義疏 (未詳) 同
戒度観経疏正観記 (宝永板) 同
戒度観経扶新論 (貞享板) 同
智顗小経義記 (承応板) 同
窺基小経疏 (寛政板) 同
窺基小経通賛疏 (未詳) 同
元暁小経疏 (元禄板) 同
智円小経疏 (正徳板) 本会
元照戒度小経疏記 (寛文板) 宗教大学
一、本巻の口絵、智者慈恩両大師画像に対する平子鐸嶺氏の考証を得たれは、左に之を録す、
智者大師画像 この原本は近江国滋賀郡坂本西教寺の所蔵にして、その下に記せる賛辞の跋によれば、最澄法師が貞元中入唐の際に将来せるものなること明なり。然れども今よくその描写の法を精審するに、今本は既に澄公が将来の旧物に非ず、蓋しその原図によりて鎌倉時代に襯写されたるものなる可し。而して原本疾く烏有に帰したる現時にありては、また大師か無二の照相とするに足るなり。(最澄将来目録には智者大師影のことを記載せず)
慈恩大師像 この原本は大和国生駒郡西ノ京薬師寺の所蔵にして、往昔同寺慈恩会の遺宝なり、その製作は必や鎌倉時代以前にあらむ、実に我古肖像画中において白眉の称を恣にするものなり。寺僧唐筆といふは従ふ可からず、その用ゐる所の絹帛邦人の製なるを見よ。
一、本巻を出版するに方り、原稿又は参考として書籍を貸与せられたる宗教大学及椎尾弁匡、松濤松厳、不染信翁、吉川沢誠等諸師の好意と、口絵登載斡旋の労をとり、且つ該口絵の考証を寄せられたる平子鐸嶺氏の厚誼を鳴謝す、
明治四十一年十二月 浄土宗宗典刊行会