『テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョン』インタビュー(2)
▼ 2人の進行役
ー 個性的な語り口調のナレーターがゲーム冒頭からしゃべりまくる展開が印象的です。シリーズはもちろん他のRPGを含めても異端児ですね。
G:あのナレーターは要するに僕がしゃべっているだけなので。
ー プロローグの流星のシーンから引き込まれました。童話風というか他と違うぞこれというか。そして、なりきりハウスでのチュートリアルは完全にギャグ路線でした。全部ふしぎふしぎで済ますところとかも。
G:天丼(注1)が好きなんです。あのナレーターでいけるかなという
感触があったのでギャグ混じりの軽いノリで進めようとも思ったんですが、先に待つストーリーが罪と罰などの重いテーマなのでそちらの進行役となる真面目な人が必要だったんです。
ー それがノルンですね。
G:あのキャラクターはなりダンの10年前に作ったゲーム『クリスタルチ
ェイサー』(注2)(注3)の語り手(注4)を元にしたものです。その女性はナレーション以外に時を戻して主人公たちをゲームオーバーから救う役目もありました。セリフや容姿もところどころ重なっているんですが元ゲームがマイナーなので言及がなかった。
▼制作進行
ー 経緯を伺うと27歳の2人といいノルンといいシナリオライターが単独で動いている印象が強いのですが。事前打ち合わせや意見交換はどの程度ありましたか?
G:突然決定稿が出る設定が多かったです。翼を持った女性がある日突然表示されるとか。ロムのバージョンが上がったら正体不明の男が何か言うと か。この酷い村はなに? 暗黒時空ってなに? となるのが事後に等しいとか。
普通そんなプロセスはとらないんですが、たのまれごとを含め、他の人は知らないという形になりがちでした。中でもスタッフが驚いたのはクルールを抜いた戦闘を作って欲しいと言われた時だと思います。ラスボスは暗黒の自分だと思っていたはずですから。
ー かなり攻めたシーンやセリフがあるシナリオですがストップがかかった部分はありますか?
G:ルーシーだけテストプレイヤーの意見で「やりすぎではないか」と来ました。心配していたティアの花の正体は特になかった。ヴァルハラ村のセリフも特に大きく変えた記憶はありません。
▼たのまれごと
ー たのまれごとは全話考えたのですか。
G:アイデア、セリフ、芝居付けまで一括でやっています。ただ、ダウジングやウサギの配置などはできないので、そういう場所のテキストは穴埋めです。それから、題材についても例外があってサーカスの話を入れて欲しいというオーダーがありまし た。具体的なので理由がわかりませんでしたがサーカスネタを作りました(注5)。あれは楽しい雰囲気になったと思います。
ー たのまれごとで特に好きなものはありますか?
G:これが一番というは決めにくいですが、一輪の花と、消えたフランシーヌ。あれはクリアしたら暗い気持ちになるイベントとして入れました。真に人の心を学ぶのであれば善や幸福だけを見てはいけないんです。
一輪の花は、たのまれごと1のハッピーバースデーの正反対で、届け物をしたらとても不幸なラストが待っているものとして。
消えたフランシーヌはネタとして最も計算して作ったので好きです。騙し展開とか。
ー あれはなんの事はない犬探しクエストだと思いましたよ。これも解決して複雑な心境になるものでした。
G:ヴァルハラ村ですから。
ー すずのセリフみたいですね(笑)(注6)
ー たのまれごとの順番は作成順ですか?
G:1から3(注7)はそうですね。その次が8と9(注8)として入っているもの。1は試作の色が濃い。往復してフラグを立てれば終わるので。
ー たのまれごとは多彩な内容ですが、精霊の試練はダンジョンが続くだけで率直に言わせていただけばストーリーが薄いのでサブシナリオをもっと見たかったです。
G:よーし、100作っちゃうぞ。 ……というコドモ発言も面白いかもしれませんが、もっとたくさん作りたかった。ボエボエはもっと段階があってもよかったし、ワンダーモモやリリスのような短いものでいいのならコドモ発言くらいは楽にいけました。
シナリオ専業だったら100はコドモ発言ではなかったはずです。そもそも、リリスはたのまれごとに入っておらず28は別なものでした。
ー それは?
G:ネコを使ったものにしようと思っていました。構想だけでしたがギミックの総集編的な内容です。作る人がつらくなってしまうので結局作りませんでした。
ー なるほど。作業量の事情でしたか。それと、ドルアーガの塔のボリュームがすごかったですね。専用のエンディングまでありました。
G:60階でのコントが唯一ノルンがキャラを変えるところですね。
(注1)
食べ物の方ではなくここでは同じギャグを繰り返す手法の事。
(注2)
企画・原作・シナリオ・演出・キャラクターデザイン・グラフィック・ディレクターとまるで自主制作映画のような掛け持ちで制作されたパソコンゲーム。れっきとした商業作品。詳細はWikipediaの『クリスタルチェイサー~天空の魔晶球~』の記事にて。
(注3)
主人公の鷹之進と野苺はディオとメルの隠しコスチュームとしてなりダンに登場する。しのびの里で建物の裏から入ると貸衣装屋がある。見るためにはポケットプリンタが必要だがゲームクリア後のスタッフルームでも見る事ができる。
(注4)
語り手。最初の画面に1人で大きく表示されている女性。間違った選択をした場合に時間を戻してやり直させる。エンドクレジット寸前に意外な正体が判明する。
(注5)
たのまれごと7「サーカス!サーカス!」の事。ドラマCDにサーカスのシーンがあるのでゲームシナリオの方を合わせた可能性もある。
(注6)
どんな技や知識も「忍者ですから」 で済ませる。
(注7)
1・ハッピーバースデー、2・我儘なグルメ、3・ああ、御先祖様
(注8)
8・ミスタースランプ、9・メル、熱唱