『テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョン』インタビュー(1)
▼はじめに
『テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョン』 GAMEBOY版(以降、なりダンGB)20周年という事でシナリオライターの新免G之進さん(以降、G)にお話しいただきました。
ご本人もおっしゃっていましたが、これはメーカー公式回答や設定ではなく、あくまでライター本人のエピソードや考えとして見ていただきたいとの事です。
とはいうものの、この方がオリジナルシナリオを書いたのは事実ですので、そこも含めて読んでいただきたいとインタビュアー・弾団丸は考えます。
この会話はメールとZoomによって行われました。内容を大きく変えない範囲で整形統一しています。また、2024年にて更新となっています。
▼ シナリオ発想のベースと暗黒時空
- この話を考えた経緯を教えて下さい。
G:『テイルズ オブ ファンタジア』プレイステーション版(以降、ファンタジアPS)の追加シナリオなどを作っている時からダオスがアセリアに来た原因はなんだろうと考えていました。
ー 理由については「母星の民を救うために大いなる実りを求めてダオスは戦っていた」とラストシーンで語られていますね。
G:ダオスが母星のために大いなる実りを求めていたという点は明らかになっても、マナが減少してデリス・カーラーンが危機に陥った原因はわからな
いままです。
プレイヤーの方々の想像にお任せでも構わないのですが、僕が想像した設定が本作シナリオのベースになりました。
ー なりダンGBおまけの部屋(スタッフルーム)にあった主人公はダオスという言葉ですね。
G: その疑問が出発点です。その時点ではなりダンの企画はありませんが、暗黒時空のイベントで語られるダオスサイドを先に考えたのは間違いありません。そし て、マナ減少の原因はああいうものだと仮定しました。魔科学は魔術というよりもサイエンス・テクノロジー寄りの印象なので。
ー そうですね。完成シナリオもそういうキーワードが多い。魔科学兵器は核兵器で青き光はチェレンコフ放射光と読み取れる。素晴らしき青き光や憎しみの青き光という言葉も含めて。
G:ファンタジアPSのムービーシーンでビジュアルは示されていたので独自のものではありませんが原子力の印象は強めました。
大惨事を起こす人間は『太陽を盗んだ男』(注1)の主人公を原爆を作る者と原爆を使う者の2人に分割したようなキャラを考えました。幼なじみの科学者と軍人。科学者の方が悲観主義で悪者っぽい。
- メルティアのセリフに名残がある気がします。ディオスはどちらかというといいやつですね。
G:元は両方男性で考えていましたが、なりダン主人公として設定された少年少女をその破壊者と同一人物にしてしまおうと思ったことで後半の形が決まりました。メルは良い子なのでメルティアは対比として狂った感じにしたかった。育つ環境のせいで曲がってしまった人間というのは本作の大きなテーマですから。
後で思ったのはもっとディオスとメルティアのシーンを入れればよかったという事です。ディオスを操作してメルティアと話すシーンなどシステム的には全く問題なく実装できました。メニュー画面を封じるだけで可能です。
ー メルティア絶命からディオスが大きく判断を誤るシーンはゲームボーイのグラフィック性能ながら大きなインパクトと迫力がありました。
G: 破壊を免れたシステムを自棄になって使用したら不発どころか出力過剰で多大な被害が出た。これを納得させるとしたら“感情”しかない。母国が壊滅した上に 唯一の肉親が目の前で血まみれで息絶えた。残ったのは絶望と復讐心だけ。この状況にディオスを置けば明らかに間違っている行動も成立すると思ったんです。
(注1)
1979年公開の日本映画。理科教師の城戸誠(演:沢田研二)は原発からプルトニウムを盗み、目的もなく原子爆弾を作ってしまう。原爆を何に使えばいいのか自分でもわからない城戸は愚にもつかない要求を日本政府に突きつける。詳細はWikipediaの『太陽を盗んだ男』の記事にて。