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#24 公共施設マネジメントにおいて大事なコトvol.1(現場を知っているという強み)

公務員という職業にあって、かつ僕の抱えている事務分掌上の職務は結構多岐(庁舎管理や車両管理とか他にももろもろ)に渡っているが、その活動の中心軸に据えているのが公共施設マネジメントやFM(ファシリティマネジメント)ということになる。

その公共施設マネジメントやFMの仕事に関わるようになって、かれこれ10年近い年月が経とうとしているが、僕が仕事を進めていく上で重要だと考えていることの幾つかについて、今回はシリーズ物として何回かに分けて綴っていこうかと思う。

その第一弾は、現場を知っているという強みについてで、Vol.1ではその辺りのことについて書いてみたい。


保有資産の情報をどれだけ知っているか?

公共施設マネジメントにしても、ファシリティマネジメントにしても「マネジメント」という言葉がついているように、保有している資産(ここでは公共施設がそれに当たる)をいかに適正に管理し、資産としての価値を高めていくかということが目標であり業務の目的でもある。

翻って、我々のまち・津山市は約560の公共施設(ここでは公共建築物を指す)を保有していて、これらを経営的視点で捉えて全体最適を目指して管理していくのが我々にとってのミッションということになる。
公共施設というと大抵の住民が知っている庁舎や学校、文化センターや公民館などもあるが、行政目的もよく分からない倉庫みたいな施設や、ほとんど利用のされていない資料館とか作業所みたいな施設もあって、正直、各施設の所管課ですら認知されていないようなものも結構あったりする^^;

こんなものも公共施設として保有している(筆者の発表資料より抜粋)

幸いにして自治体の規模(人口約10万人)がそれほど大きくもなく、市域は広い(≒500㎢)ものの全部拾い上げても数百件ということで、(頭の中も含めて)情報を整理するのに絶望的な数字ではないのだけは救いだ。

僕はこの部門に異動してきて、まずは施設のほとんどをくまなく廻り、ある程度規模の大きな施設については、その劣化状況を自ら点検するというところからスタートさせているため、頭の中には各施設のおおよその概況を描くことができる。
どこにどういう施設が建っていて、どんな風に使われていて、(ハードもソフトも)どこがどれくらい悪いのかというコトをほとんど把握しているし、建築が専門(&建築オタク)ということもあって、施設の平面図を見れば、どの施設のものかくらいは大抵判ってしまうという特殊能力も備えている(笑)

資産情報をどれだけ知っているか?
公共施設マネジメントやFMで有効な一手を打つためには、僕はそれが前提条件だと思っている。
それは孫子の言葉「彼を知り己を知れば百戦殆からず」の通りである。
資産情報を網羅的に整理し、不動産情報として所管課という枠を超えて横並びに施設を捉えているからこそ、色んな戦いに挑むことができるし、最適解に向けて色んな策を講じることができるという訳だ。

もちろん、僕だけでなく課員である若手メンバーたちにもこの考えを共有し、できるだけメンバー全員が現場の状況まで把握できるように仕事を回している。

机の上だけでは分からないことが沢山ある

他の自治体の話を聞いていると、公共施設マネジメントやFMを担当する部門が、行政内で管理セクションに寄りすぎてしまい、現場のことをあまり知らないという実態が多く見受けられる。
FM部門は単に計画(公共施設等総合管理計画など)を作ったり、数字を追っかけているだけで、現場のことは所管課任せというやつだ。

役所の組織が大きくなればなるほど、ホワイトカラーとブルーカラーがはっきりと分かれているという構図が強く、分断の構図が見え隠れすることも珍しくない。

もちろん分業体制で良いこともあるのだが、僕たちの強みはホワイトとブルー両方の色を持っていることにある。
机の上で戦略を練ることもあるし、時には戦場の最前線で戦うことだってある。
流石に僕自身、役職も上がってきているので、建築工事の現場に赴くことはだんだん減ってきているが、建物の不具合や空間の様子などを見にいくことを出来るだけ疎まないようにしている。
単に現場が好きというのもあるけれど、机の上だけで解決しようとせず、現場の状況を知っているからこその解決策は必ずあると信じているからだ。

建築や電気の専門知識(僕も建築職)をアドバンテージとして、ハード的な側面はもちろんのこと、我々が作成している施設カルテなどの情報によって、ソフト面の情報も把握できているため、様々なフェイズにおいてこの情報資産が役に立っているのは言うまでもない。

システム構築により情報を整理し、いつでも引き出せる状況にしておくことはもちろん有益なのだが、現場の空気感や細部の状況を掴み、その情報をメンバー間で共有していること、これが我々の一番の強みとなっている。

机上の空論に陥らずに済んでいるのは、こういった行動があってこその結果である。

「事件は現場で起こっている」ことを認識する

さて、実際に現場に出向いていくと実に様々なことが見えてくる。
雨漏りの原因やメカニズム(ちなみに雨漏りの原因の9割は設計に起因すると僕は思っている)が見えてきたり、設備の劣化具合や更新のタイミングも大体把握することができる。

行政にお金がないのは今に始まったことではないし、金がないからこそ、知恵を出さないと解決できなかったり、時には(命をかけるくらいの)覚悟をかけることだって必要なことも出てくるのだが、これらのほとんどは、現場で起こっていて、決して会議室の中だけでは解決できないことである。

例えば、あまり褒められたことではないが、雨がダダ漏れしている施設があって、大きな予算を投下することが叶わないから、体を張って直営で防水することだってある。

塗膜防水を直営でやってみることも(筆者の発表資料より抜粋)

時にはお股がスースーするような高いところに登って、直営コーキングで雨漏りを止めないといけないことだってある。

コーキングガンくらい使えないとダメだよね(とある現場の屋根の上で)

時にはプールくらいの大きな浄化槽の中に潜って、命懸けでウンコと格闘しなといけないことだってある(笑)

ホントにやった浄化槽の汲み取り(筆者の発表資料より抜粋)

こんなことは机の上では決して想像もつかないだろうが、現場主義だと日常茶飯事だし、現場で汗をかくからこそ、公共施設を心底憎んだり、逆に愛情が増してきたりと、感情面でも豊かになれるのが現場主義の良いところだ(笑)

レイボーブリッジも今や封鎖できるのねw

「事件は会議室で起こっているのよ」と声高に言う沖田管理官の言葉が有名な「踊る大捜査線 the movie2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」であるが、いやいややっぱそうじゃないのよね・・・と。

もちろん机上での議論も必要で、単に体を張るだけでもクリティカルポイントに辿りつけないことだってある。
結局のところ頭と体の両方を駆使しないとダメなのよね〜。

これ昭和的なところでわかりやすいアイコンで言えば、男と女の二面性を持つマジンガーZの「あしゅら男爵」みたいなものか(笑)

あっ、そうそう、今はレインボーブリッジも閉鎖できるみたい。
まぁ、相応な準備期間が必要で、急には無理だろうけどね(笑)

ということで今回はここまで。

次は、また別に考えている大事なコトを書くのでお楽しみに。

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