# 1 「南ちゃん」という幻想を求めて。
幼馴染の真弓(仮名)とはいつも喧嘩ばかりしていた。
信仰を同じくする母親同士の仲が良かったので(僕の母親は熱心なキリスト教徒だった)、物心ついた時には側にいて、いわゆる一つの幼馴染という関係だった。しかし喧嘩友達といった方がしっくりくるほど、僕たちは会うたびに喧嘩していたのだ。
あるときはこうだった。
教会でいつものように母親同士が楽しげに談笑しているのを尻目にそれぞれ遊んでいたのだが、僕らのどちらかが傍らに停めてある自転車に小さな樹脂製の魚のキーホルダーが付いているの