かつてその人は
かつてその人は光だった
知ってはいても、思ってはいても、
つながらなかったガラスのかけらを
手のなかで握りしめて投げ上げたら
かつてその人は風だった
人が集い、嵐が起きて、
歩き疲れた荒れ野で出逢う
ひとりぼっちを愛したら
かつてその人はブルースだった
悲しさが消え、さびしさを失い、
自ら明日を捨ててみて
誰も知らない道を進めば
かつてその人は空だった
大きな大きな雲は流れて
追いかけることもあきらめて
ため息まじりに振り向いたら
かつてその人は影だった
いつか見た光に照らされている波が
くだけて白く散っていく
去り行くものの名を叫んだら