紀州のドンファン殺害事件公判傍聴記(余罪)・2024年5月17日(被告人:須藤早貴)
2024年5月17日
和歌山地裁合議A係
101号法廷
事件番号:令和3年(わ)第178号
罪名:詐欺
被告人:須藤早貴
裁判長:福島恵子
書記官:水田朱音
<法廷の風景>
この事件は、紀州のドンファンと呼ばれる老資産家と結婚した被告人が、結婚数か月で、遺産目当てで「紀州のドンファン」に覚せい剤を飲ませて殺害したとされる事件である。
しかし、今回の裁判は、それとは別件の余罪についてのものである。被告人が19歳当時、知り合いの男性から、美容器具の弁済、留学などの名目で、3000万円近くをだまし取った、とされる事件の裁判である。
62枚の傍聴券に対し、9時25分の締め切りまでに、定員に達さず、全員が傍聴券の交付を受けられた。傍聴券は、整理券と傍聴券のリストバンドを二重にする方式だった。傍聴希望者は、締め切り後に増えたのか、法廷はかなり埋まっている様子だった。
9時55分に、入廷が許される。入廷前、ロッカーに荷物を預けさせられ、金属探知機でのボディチェックが行われた。
記者席14席に12人が座る。記者席には、法廷画家も座っている。
関係者席は、検察官側に一席指定される。しかし、誰も座っていない様子だった。
書記官は、髪を後ろで束ねた、若い女性である。
弁護人は、浅黒く太った、眉の濃い中年男性である、タカシマ弁護人が最初に入廷する。同人は、京アニ放火殺人事件の青葉真司、弟と父親を殺害した足立朱美、という死刑求刑事件の被告人の弁護を担当した、熟練の刑事弁護人である。
検察官は、短い髪を立てた、引き締まった体格の中年男性が最初に入廷する。のちに、山口という名だとわかる。風呂敷をもって入廷し、そこから青い分厚いファイルを二つ取り出していた。
二人目の弁護人が入廷する。髪を七三分けにした、痩せた3~40代の男性である。弁護人二人は、PCを立ち上げ、机の上にファイルを五つほど積み上げる。開廷前、二人で話をしている。
司法修習生らしき、若い痩せた男性三名が入廷し、バーの中の裁判官に近い位置に座る。
検察官は、さらに二人入廷する。髪を固めた中肉の中年男性と、薄い茶髪のショートカットの若い女性。二人とも、紫色の風呂敷をもって入廷する。青い分厚いファイルが、検察官側の机に、さらに四つ積み上げられる。
痩せた眼鏡の青年の弁護人が、さらに入廷する。痩せた中年男性の弁護人が、きびきびとした態度で、挨拶をする。青年弁護士も、弁護人席に座ると、PCを立ち上げる。
検察官、弁護人共に三名と、否認とはいえ小規模な詐欺事件としては、かなり多い人数である。当然、ドンファン殺害事件を詐欺事件の先に見ているのだろう。
そして、いよいよ被告人が入廷する。被告人は、刑務官三名に付き添われていた。長い黒髪は毛先が少し茶色にも見え、左肩に垂らしている。色白で、痩せている。黒い長袖のワンピース、黒いロングスカートという恰好である。白いマスクをつけており、顔は見えなかったが、動作や雰囲気は、色っぽいものであった。背筋を伸ばし、入廷する。入廷の途中には、弁護人に軽く会釈していた。ゆっくりとした動作で、弁護人の隣の被告席に座る。座ってからは、痩せた中年男性の弁護人に話しかけられ、資料を見せられていた。その後、下を向いたり、前を向いたり、首を少し動かしていた。
証人は、職員に付き添われて入廷する。黒い帽子をかぶった、痩せた眼鏡の白髪の老人である。半そでのストライプのシャツ、長ズボンという恰好である。
裁判長は、眼鏡をかけた中年女性。裁判官は、中年男性と、がっしりした体格の眼鏡をかけた30代ぐらいの男性。
10時40分となり、須藤早貴被告人の詐欺事件の第二回公判は開廷した。
裁判長『開廷します。検察官の証人尋問。書いてもらったもの』
証人『はい!』
裁判長『書いたとおり、宣誓してください』
証人『宣誓、良心に従って、本当のことを言います。嘘を言ったり付け加えたりしません。誓います』
偽証罪について注意が行われる。そして、検察官による証人尋問が開始される。尋問に立ったのは、髪を立てた中年男性の、山口検察官だった。
<山口検察官の証人尋問>
検察官『証人のこと。銀行員として働き、61歳、警備保障会社で働く』
証人『はい』
検察官『29で結婚し、婚姻中』
証人『はい』
検察官『子供いない』
証人『はい』
検察官『被告人と出会ったきっかけ。知ってる、被告人』
証人『はい』
検察官『知り合い』
証人『キャバクラであった』
検察官『いつ』
証人『平成26年10月下旬です』
検察官『何をしていた』
証人『ホステスをしてました』
検察官『接客受ける』
証人『はい』
検察官『一回?』
証人『いいえ』
検察官『メールアドレスを交換する』
証人『はい』
検察官『いつですか』
証人『会って二回目です』
検察官『会うの、キャバクラのみ』
証人『いいえ』
検察官『どこで会う』
証人『ビッグエコーで会ってます』
検察官『何故』
証人『店に入店する前の同伴で会いました』
検察官『いつまで』
証人『平成26年12月です』
検察官『何故』
証人『私の方が、キャバクラをやめなさい、と言ったからです』
検察官『話したこと聞く。被告人、昼は何をしていると』
証人『美容学校に通っていると言っていました』
検察官『何故』
証人『美容師になりたい夢を持っているからと』
検察官『キャバクラは』
証人『学費を支払わなければと』
検察官『学費は』
証人『月15万かかると言っていた』
検察官『両親は』
証人『自分の両親は病院関係で勤めていて、私にもそれを求めている。反対して、学費出してくれないと言っていました』
検察官『親は出してくれない』
証人『はい』
検察官『証人は』
証人『ひどい親だと思いまして、学費を出してやると言いました』
検察官『他は』
証人『キャバクラを辞めなさいと言いました』
検察官『他は』
証人『・・・』
検察官『美容師になる夢あると』
証人『はい』
検察官『貴方は』
証人『応援してやる、と言いました』
検察官『何故』
証人『美容師になる夢を応援してあげたかったからです』
検察官『他は』
証人『私と誕生日が同じだったというのも、一つの要因です』
検察官『他は』
証人『・・・』
検察官『被告人の年に照らして』
証人『成人していないので、キャバクラで働いてはいけないと思いました』
検察官『学費出す』
証人『はい』
検察官『いつから』
証人『平成27年1月からです』
検察官『キャバクラ辞めたと思っていた』
証人『はい』
検察官『学費は』
証人『須藤早貴の銀行口座に払い込みました』
検察官『口座知ったの』
証人『メールで教えてもらいました』
検察官『平成27年3月。平成27年3月18日、300万円を払い込む』
証人『はい』
検察官『何故』
証人『早貴から頼まれました』
検察官『どこで』
証人『北区にあるカフェテラーサです』
検察官『札幌の』
証人『はい』
検察官『サルサルーサカフェテラーサ』
証人『はい』
検察官『カフェに行くきっかけは』
証人『早貴から会いたいというメールをもらったからです』
検察官『何を言われた』
証人『美容学校で演習中に美容器具を壊したと』
検察官『どうでしたか』
証人『コードを美容器具に引っ掛けて倒した、とのことです』
検察官『他には』
証人『自分が弁償しなければならないと言っていました』
検察官『他は』
証人『親に相談したけど出してくれない、Mちゃんしか助けてくれる人いない、と』
検察官『いくらと』
証人『300万と言われました』
検察官『尋ねたことは』
証人『早貴だけが悪いのか、保険等入っていないのか、と』
検察官『被告人は』
証人『備品なので入っていない、早貴が自分でやったので弁償しないといけない、と言っています』
検察官『Mちゃんしか頼れないと』
証人『はい』
検察官『信じた』
証人『はい』
検察官『嘘だと思いましたか』
証人『いいえ』
検察官『被告人の表情は』
証人『非常に困っている表情です』
検察官『300万円弁償と聞いて』
証人『学校を辞めなければいけないかもしれないと思いました』
検察官『美容学校』
証人『はい』
検察官『300万円被告人用意できると?』
証人『いいえ』
検察官『貴方は』
証人『解った出してあげる、と』
検察官『被告人は』
証人『「うれしい、ありがとう」と』
検察官『表情は』
証人『明るい感じに変わりました』
検察官『他に話は』
証人『学校はどう、という話を』
検察官『で、退店』
証人『はい』
検察官『払い込みは』
証人『5,6日後です』
検察官『手続きは』
証人『北洋銀行境町支店です』
検察官『払い込み依頼書を書いた』
証人『はい』
検察官『3月16日付依頼書示します(証人に見せる)、平成27年3月17日、300万、証人の名前』
証人『はい』
検察官『依頼書』
証人『はい』
被告人は、目を閉じている。
検察官『いつ頼まれた』
証人『平成27年3月中旬です。10日前後だと思います』
検察官『カフェでの話』
証人『はい』
検察官『平成27年3月、10日前後』
証人『はい』
検察官『嘘と疑った?』
証人『いいえ』
検察官『嘘とわかっていたら、300万円払い込み』
証人『しません』
検察官『次、二つ目。平成27年7月14日、被告人名義口座、1507万振り込み』
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