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UIがクソすぎた神ゲー「エピックミッキー:Rebrushed」

どうせディズニーのゲームだろと鼻で笑っていたら普通に神ゲーだった。
気付いたらディズニーシーのチケット買ってた、ウケる

※この記事はただの自主研究のためのレポートでありnoteが使いやすいのでついでに投稿しているだけです。あくまで個人の意見ですので鵜吞みにしないでください。
※当然ながらネタバレあり。未プレイの方は見ないでほしいな。


どういうゲーム?

「ディズニー エピックミッキー:Rebrushed」
発売日:2024年9月24日
対応プラットフォーム:PS4,PS5,NintendoSwitch
ジャンル:3Dアクションアドベンチャーゲーム
私の総プレイ時間:13時間

2011年に発売されたWii向けソフトの完全リメイク版。創造するインク「ペイント」と消してしまうインク「イレーサー」の二種類を駆使して謎の世界から脱出するゲームである。
いずれの効果も適用できる場所には限りがあり、あきらかに明るい色のところや薄く囲いがある部分にのみ発動する。
詳しくは映像を見てほしい。

このゲームでは以下を楽しめる。
・塗る、消すといった好奇心が掻き立てられる遊び
・実際のディズニー作品にちなんだ2Dスクロールアクション
・普段のディズニーらしからぬダークな世界観とストーリー
・使用するペイントによって変わるエンディング

ペイントが使用できる対象が決まっているため遊びが狭まると思いきやなかなか面白いギミックが多く、これしかできないのかといった不満は全くなかった。どこを描いて消すのかという正しい判断が求められるいい塩梅のバランスになっている。というか間違い探しのような感覚で、そこにあったのか!という感じで進めることが多々あった。

ストーリーに関してはディズニー好きの私にとってはたまらない最高のものだったが、一般人はどうかわからない。つまらないことはないだろうが、楽しさは段違いかもしれない。ストーリー関しては後述する。

楽しいところ

塗る、消すという単純なようで難しい遊び
このゲームの操作はいたって簡単で、塗るか消すかしかない。後はアクションゲームおなじみの二段ジャンプとかダッシュとか、気持ち程度のスピンあアタックがある。ミッキーができるのはそれぐらいである。二段ジャンプで何でもさせようとしてくるのはとりあえず置いておくとして、ステージを進むのも敵を攻撃するのもすべて塗るか消すかしかない。
塗るのは消えていたのが戻るだけで、足場が復活したりとかそれだけの話なのだが、消す「イレーサー」がとにかく遊びの範囲を広げている。というかこのゲームは正直「イレーサー」だけでも面白いのではないかと思っている。
なぜこれだけで面白いのかというと、既にあったものを消すことで隠し部屋が現れたり隠しアイテムが出たりするからだ。ただのデザイン的な消せるオブジェクトかと思ったら消した先に部屋があったり、建物に部分的に融合している消せるオブジェクトを「イレーサー」してみたら穴が開いてて建物内には入れた、なんてこともある。床を消したら地下があったなどザラにあるのだ。ただのかわいい花畑の床を消したら隠し部屋が出てくるとかわかるわけないだろ!となる。
しかしそこが面白い。とりあえず目に入ったものを消してみる、という楽しさを上手く誘導してるのがこのゲームのレベルデザインの上手さだと私は感じた。

公式より引用

塗りに関してはそこまでの欲求はわかなかったのだが、ストーリーを進めるにつれてこの部屋はキレイに戻してあげようとかそういう気持ちが湧いてきて、自己満足で「ペイント」してあげることがほとんどだった。ラスボスのステージとか、オズワルドの家だと発覚して「散らかっててごめんね」と言われたからにはもう直す以外の選択肢はなかった。
「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」もそうだが、プレイヤーの気持ちとゲームプレイ欲をマッチさせるのは本当に難しいことだ。しかしマッチしてクリアしたときの感動はゲームならではのものになるため、いかにそれをうまく取り込めるかはゲームを進めるモチベにもなるしかなり重要なのではなかろうか。

2Dスクロールもなかなか面白い
このゲーム、なぜかフィールド移動で2Dモードをやらされる。やることはマリオのディズニー版なのだが、すべてが過去のディズニー作品をモチーフとしたステージでそこそこ難易度もあっておもしろい。「ペイント」など使う場面はないしそもそも使用できない。ほんとになんであるんだこれ。
これ普通にすごいなと思ったのがプルートをモチーフとしたステージだ。
このステージはミッキーの位置や時間経過によって背景の色が変わるのだが、その色を利用して足場を隠したり表示したりしているのである。

緑だと木が表示されるが…
右に進むと背景と同化して消える!

この変化がなかなかテンポよく、プレイヤーが進む先はきちんと見えるように色が変わるので上手くいきやすいしなぜかいつも以上に達成感がある。そもそもその背景色によって見える足場が隠しルートだったりするのがほとんどだからというのもあるのだろうが、自分は見逃さずに見つけられたという達成感に説得力が増すのだと思われる。
元ネタをすべて理解しているわけではないが、それぞれかなり再現度が高く、コミカルなステージとなっているため単調にならず楽しめるのが良い。前述した二段ジャンプですべて何とかさせようとしてくる例の筆頭ではあるが、隠しルート(あとから元ネタ作品が見返せるアイテムやお金がゲットできる)はなかなか高度な操作を求められるので満足感も十分である。

楽しくないところ

やはりフィールドに行くたびに発生するおつかいシステムだろうか。ゲームあるあるだし仕方ないと言えば仕方ないのだが、次のステージに向かう際に特定のアイテムを数十個集めなければならないのがかなり苦痛に感じた。一つ集めるのに脳死ではできないようなクエストをこなさなければならないためこのせいで飽きるということもあるだろう。ただゲーム内通貨さえ払えば解決できるので比較的親切だなとは思っている。
クエストが関わるのはどちらかと言えばクリア後のムービー演出なためただクリアをしたい人はお金で解決すればいいし完璧なエンディングを見たい人はしっかりNPCの悩みを解決してあげよう。後者は特にディズニーのファンであればあるほど苦痛にならないような気がするので他のRPGと比べたらマシなおつかいなのではなかろうか。
というかクエスト未達成状態のままのエンドで見せられるムービーがあまりにも悲しすぎるのでやらざるを得ない。
もちろんそんなことクリア前は知る由もないためクリアしてから後悔する。

このゲームはそういった示唆が少ないし、UIがあまりよろしくない。ここを抜けたらクエスト達成できなくなるよと言ってくることもあるが、最初のピートの日誌はよくわからないまま突然クエスト失敗になってて優しくないなと思った。
一度選んだ選択が後に影響を及ぼすのを明確にしている演出ではあるのだが、周回をする時間がない、やりたくないプレイヤーにとっては非常にストレスどころかプレイを中断する理由にすらなりうるだろう。
極めつけはセーブシステムがあいまいな点だ。このゲームはオートセーブで、セーブスロットを分けて保存などができない。うっかりボタンを押し間違えたり興味本位で悪い方を選んだ暁には即セーブされ後のエンドはおじゃんである。本当はしっかりとセーブスロットがあったのかもしれないがそういった誘導UIが一切なかったので私にはわからない。
ゲーム本編が楽しかっただけに、そういったUI関連だけが非常に残念だった。「はい」・「いいえ」の選択がなぜか「はい」・「払わない」だったし。
おそらくクエスト関連やステージ移動スキップで使用する金銭の選択肢表示がそのまますべてのものに適用されてしまっているバグなのだろうが、取り返しのつかないクエストもある以上早急に直したほうがいいのではと思う。
原版がYes・Noしかなくてそれに日本語訳を付けた結果「No」が「払わない」になっている可能性もあるのだろうか。

まとめ・何気ない決断に意味を持たせる

本作をプレイして一番感じたことは選択の重さだ。「Undertale」にも似たようなことが言えるが、ゲームでは何気ない選択肢が後のストーリーに大きく影響することがある。
「Undertale」であれば「殺す」か「殺さない」かといういかにも重要そうな選択であるが、今作は「塗る」か「消す」かという私たちが日常で行っている何気ない行動が分岐点となっている。とても身近にある行動であるがゆえに気軽に選択してしまい、結果最悪な事態を招いてしまうプレイヤーもいるのだろう。それはまさにミッキー自身のことなのだ。何も気にせず好奇心で筆とインクを使い、結果街に甚大な被害をもたらした。ストーリー中盤までミッキーは自身の行いで悲劇が起きたことに気づいていない点も、終わってからああすればよかったとなってしまう本作のシステムに酷似している。
『楽しいところ』で操作キャラクターに親近感をわかせることについて少し語ったが、自身のプレイによって起こす操作キャラとの類似感情はゲームへの没入感を非常に高める。まるで自分がそのプレイキャラのようだと、自分がミッキーになったかのような気持ちになって、オズワルドに罪悪感が湧くし、怪物を倒さなければと思いが湧く。
本作は殺すような直接的な表現ではなく身近な表現を使うことでそれをより深く表現できているのが非常に興味深い。
いかにプレイヤーに親近感をわかせるかは、ゲームを継続してプレイしてもらうための重要なエッセンスの一つだろうと私は考えた。

おまけ・オズワルドに会いたい

以下、オタクの早口喋りです。

しんどすぎて無理

オズワルドを知っていますか?しあわせうさぎのオズワルド、ウォルト・ディズニーの最初のヒット作であり、最初の息子であり、80年の間ディズニーから離されてしまったキャラクターです。
ディズニーの版権問題でよく話題に出されますから名前は知ってるって人結構いるんじゃないでしょうか。
じゃあどういうキャラクターなのかはほとんど知らないでしょう。私だって詳しくありませんでした。
ゲーム本編序盤ではミッキーと対立し、喧嘩腰でなし崩し的に協力関係になりますが、彼は最初から青のハートマークが出ていました。青のハートマークとは信頼度のようなもので、ミッキーに好意的に接してくれるNPC・敵に表示されるエフェクトです。オズワルドはNPCとして話しかけられるようになってから、最初からずっとそのエフェクトを出していました。
ミッキーのせいでオズワルドは人気を落とし、ついには忘れられてしまいましたから恨み口を叩きたくなるのは当たり前のことです。でもオズワルドは表面上だけで、ずっとミッキーに好意的に接していたのです。
嫌味な態度をとってくるけれど、結局彼は優しくてずっとミッキーに会いたかったのでしょう。だって、大好きなお父さんの息子、自分の弟なのだから。

ミッキーにあの人を重ねていたりしたのでしょうか

彼の優しさと複雑な心境を考えると本当に胸が熱くなりましたし、プレイ中は早くこの街を元に戻さないとという思いがどんどん増えていきました。

オズワルドは本当に優しい。ミッキーに嫌味なこと言っときながら、ちゃんとオズタウンにミッキーの家を作ってあげてるんです。ミッキーが忘れられるのを心待ちにしてるなんて解釈もありますが、本当に嫌いだったら自分の国に来るなとなるのが普通でしょう。
初めからオズワルドの優しさを少しずつ見せてヘイトをためすぎないようにしてるのが上手いなあと思う。結局悪いのはミッキーだし。そう、オズワルドのことを嫌いになれないんです。ミッキーのせいで人気落ちしたし、ミッキーのせいで自分の国をめちゃくちゃにされてる。やっと帰ってきたオズワルドを悪者にしすぎず対立関係を築くストーリーの上手さに脱帽です。

最初から兄弟とは思ってたらしいしな

ふと、東京ディズニーランド30周年パレードを見ました。このパレードは最後のフロートがミッキー、グーフィー、ドナルドで構成されていて、遠目で見ると本当に仲睦まじくくっついています。
ああ、ここに彼がいないのが本当に悲しい。
悲劇が起きなきゃここにオルテンシアと一緒に並んでいたのかもしれない。そう考えてしまって、この作品がいかにオズワルドを好きにさせて、彼のことを忘れられなくしているのかを自覚しました。
ゲーム内じゃ忘れられたキャラクターとして登場しているけれど、こうやって少しずつ、少しずつ彼を知る人が増えて、彼の優しさを知って幸せな笑顔になれたらいいな。
いつかパレードの最後は兄弟で並びますように。
そんなことを、思ってしまいました。


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