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【渡来美響 選手】ボクシング愛と研究心で勝利をつかむ探求者。想定外を打破し、王座を狙う

渡来 美響選手ってどんな人?

★日本スーパーライト級1位
★WBCスーパーライト級35位
★WBO Asia Pacificスーパーライト級5位
★OPBFスーパーライト級8位

所属:三迫ジム
生年月日:1998年11月26日 (26歳)
出身:神奈川県横浜市
デビュー:2022年4月12日
通算成績:6戦6勝(4KO)
スタンス:右ボクサーファイター


想定外を想定した練習を。ランク1位の相手を圧倒した前戦のお話。

ーー前戦は、関根幸太朗選手(ワタナベ)との最強挑戦者決定戦でしたが、振り返っていかがですか?

関根選手が1つ年上で、大学時代のリーグ戦から試合は見ていたんです。
KOが多い選手なので、パンチ力がある選手なんだろうなと警戒していました。
プロボクシングは、一発で勝負が変わってしまう世界なのでパンチがあるというのは脅威に感じていましたね。でも、相手が想定以上の動きをしてくることは考えていたので冷静に対応できたと思います。

一昨年戦ったウー・ジウ選手(中国)が想定外の強さで攻めてきたので、その試合の後から想定外を想定して練習をするようにしているんです。前戦は、佐々木尽選手(八王子中屋)とスパーリングさせていただいたんですけど、関根選手とタイプも少し似ていたので緊張感をもって練習ができましたね。

ーーしっかりと準備をされているからこその勝利だったんですね。試合後は、どのようなお気持ちでしたか?

試合後は、KO決着で終わらせられたのも嬉しかったですし、とにかく勝ててホッとしました。ダメージがほぼなかったので、試合の1ヶ月後にはラスベガス合宿へも行くことができました。ラスベガスへは何度か行っているんですけど、今回もメイウェザー選手が所属するジムで練習をさせてもらいました。

現地では、ドン・ハウストレーナーに色々と教わっています。メイウェザー選手のトレーナーと長い間練習をされていた方なんですよ。ドントレーナーは、メイウェザー選手が成長していく姿を近くで見ていた方なので毎回良い練習ができています。

2024年10月26日(土) DANGAN269
関根幸太朗(ワタナベ) VS 渡来美響(三迫)
出典:ボクシングモバイル

ラスベガスで学んだ攻撃性と精神面。王者の弱点を突いていく今回の試合。

ーーラスベガス合宿の話が出ましたが、具体的にどんなことを学ばれましたか?

ラスベガス合宿では、ボクシングのスキルに加えて精神面も学ぶことが多かったですね。
ボクシングのスキルでは、「攻撃性」を高めることを教わりました。
元々、足を使うアウトボクサータイプだったんですけど「攻撃性が足りない」と前々回のラスベガス合宿でドントレーナーから言われたんです。それから、攻撃性を高める練習を続けて、前回のラスベガス合宿では「攻撃性は高まっている」と褒めていただきました。今は、攻撃性を高めながら、ディフェンスやフットワークなど、総合的なスキルを磨いています。

精神面に関しては、謙遜と自信のバランスについて学びましたね。
自分は、実力を過大評価しないようにしているんです。でも、そのせいで「まだまだダメだな」と否定的になってしまう時があって。ドントレーナーは、そういうマイナスな部分を見抜いていたらしく、ジムに行った時に突然「世界で最強のボクサーは誰だ」と質問してきたんです。自分は、「日本だと井上尚弥選手(大橋)ですかね」と言ったら「違う。お前だ。」と言ってくれて。

WBA世界王者のジャーボンタ・デイビス選手も「トレーナーから常に最強の選手だと言われている」とインタビューで話していて、選手に自信を持たせる育て方がラスベガスの考えなんですよね。実際にドントレーナーの言葉で自信がつきましたし、メンタルと実力はつながっているんだなと学べました。

ーー学びの多い合宿だったことが伝わってきました…!今回の対戦相手、李健太選手(帝拳)の印象はいかがですか?

アマチュア時代から変わらず、正統派のサウスポーだなという印象です。
KOが少なくて、ポイントアウトで勝っていくアマチュアの選手らしい戦い方ですよね。
李選手の試合を観た時に気が強い部分もある一方で、弱い部分も見えやすいと思いました。例えば、相手が前に出てきた時にやりづらいことが顔に出ていて、弱点を見つけやすいのかなと感じています。攻めるポイントは抑えているので、試合ではそこをしっかり突いていければと考えています。
今回は、李選手の対策として秋山選手(秋山佑太選手:自衛隊体育学校)と今永選手(今永虎雅選手:大橋)とスパーリングしています。
想定外を想定した試合ができるようにスパーリングパートナーにもこだわっているんです。

秋山選手は、テンポが独特なので李選手のアマチュアらしい戦い方とリンクしている部分があるかなと感じています。
今永選手はKO率が高いので、李選手にパンチ力があることを想定して練習ができています。あとは、長身のサウスポーで李選手とほぼ同じ体格なので実戦を想定して良い経験を積めています。

ドントレーナーとのお写真
出典:ご自身Instagram

人生の転機①5歳から始めたボクシング。夢を見つけたきっかけは世界チャンピオンの存在。

ーー人生の転機についてお聞きしたいです!

1つ目は、ボクシングを始めたことですかね。
5歳の誕生日に友達に悪戯をされて、家で泣いていた時に父から「強くなれば悪戯はされない。近くに空手道場とボクシングジムがあるけど、どっちに行く?」と質問されたんです。
迷わずボクシングを選んで、大橋ジムに通い始めました。その頃は川嶋勝重さんや八重樫東さんなど世界チャンピオンが練習している姿を直接見ることができて、刺激的でしたね。

実は、自分が世界チャンピオンを目指すきっかけも川嶋さんなんです。2005年の川嶋さんとホセ・ナバードの試合を父と観に行った時に川嶋さんが巻いているベルトに興味津々だったみたいで。父が「あれは、世界一強い男しか巻けないベルトだよ」と教えると「自分も世界チャンピオンになりたい!」と言ったみたいです。今考えると、なぜ迷わずボクシングを選んだのかは謎なんですけど…(笑)

ーー素敵なエピソード…!本能的にボクシングを選ばれていることにも運命を感じますね!

小学4年生の渡来選手
出典:ご自身Instagram

人生の転機②高校時代に2度骨折。出来ることをこなすだけの日々を乗り越えて。

ーーボクシング歴が長い渡来選手ですが、これまで挫折された経験などあるんでしょうか?

高校2年生のインターハイで右手を骨折したことですかね。それが2つ目の転機だと思います。
相手のおでこを打って骨折して、すぐに近くの病院で診てもらったんですが、骨が曲がったままくっついてしまったんです。その影響で復帰直後のスパーリングで同じ箇所を骨折してしまい、関東大会や選抜大会に出場できなくなってしまいました。当時は、怪我で練習も上手くできなくてメンタル的にしんどかったですね。関東大会は毎回優勝していたので、それもあって出場できなかった年だけが悔いとして残っていました。今考えると、出場できなかったことなんて大したことじゃないんですけどね(笑)

2回目の骨折の時は、近くの病院ではなく井上尚弥さんの主治医を紹介してもらったので、今も怪我なく戦えています。それまではボディや硬い部分を何度も打っていたので、パンチの打ち分けを意識するようになりましたね。怪我をした時は出来ることも限られていて目の前のことをこなすだけでしたけど、パンチのコントロールが大事だと改めて学べた期間でした。

大学時代の渡来選手
出典:ご自身Instagram

人生の転機③"世界に適応"するために日々研究。海外のスタイルも細かく分析!

3つ目の転機は、一昨年の吉野さん(吉野修一郎選手:三迫)とシャクール・スティーブンソン選手の試合を観たことですね。
吉野さんのスパーリングパートナーを務めていたこともあり、自分の実力を測るうえで重要な試合になると思って、現地のニューアークまで観に行きました。リングサイドで観たのですが、相手の一方的な攻撃が続いて、吉野さんにとって良いシーンが最後までなかったんです。あそこまで何もできないまま終わるとは思っていなかったので、「今までのボクシングでは世界では通用しないんだ」と痛感して、より火が付きました。

「スタイルを学ぶなら、本場のアメリカでやらなければ意味がない」と思って、吉野さんの試合後すぐにアメリカ合宿を決意しました。中学生の頃からメキシコやキューバなど、さまざまな国に行ったことはあったのですが、自ら率先して動いたのはアメリカ合宿が初めてでしたね。

アメリカ合宿では、まずロスで2週間スパーリングを行い、その後メイウェザー選手が所属するジムで2週間練習しました。
ロスでは、元世界チャンピオンのセルゲイ・リピネッツ選手とスパーリングをさせてもらって濃い時間を過ごせました。冒頭でも話しましたが、ドントレーナーを紹介してもらったのは、このアメリカ合宿の期間中だったんです。中谷潤人選手(M.T)など数多くの世界王者を育てているルディトレーナーから紹介してもらって、運命的な出会いでしたね。

ーー今の渡来選手を支える練習期間だったんですね。ぜひ、渡来選手が考える国別のボクシングスタイルを教えていただきたいです!

メキシコのボクシングスタイルは、マニュアル化されていて型にはまっている印象がありますね。日本のスタイルとも共通点が多いと感じます。メキシコの有名な選手でカネロがいますけど、メイウェザーには敗れているのでやはり世界の頂点を目指すならアメリカのスタイルが最適なんじゃないかな…。

アメリカのボクシングは、自由度が高くてオリジナリティがあるなと感じるんですよね。メイウェザーを基盤にキーション・デイビスやシャクール・スティーブンソンなどの世界的に有名なボクサーが米国には多いですよね。生まれ持った身体能力の差はもちろんあるとは思うんですけど、技術面の差に「日本人だから」という言い訳は通用しないと思っています。アメリカのスタイルに適応できることを今後証明していきたいです。

ーーすごい分析力…。ボクシングへの愛を感じますね。

自分は中学2年生の頃からメイウェザーに憧れて、そのスタイルを軸に方針を立てていたので、他のボクサーとは比べものにならないくらい研究している自負はあります。

世界で通用するスタイルの答えは既にあるものの、それを解き明かすには自分自身で研究し続ける必要があるじゃないですか。そこがボクシングの面白さですよね。自分は、解き明かすまでに時間がかかるタイプですが、答えを導き出す頃には完璧に適応できているタイプなんです。ちょうど関根戦の前が、キーション・デイビスのディフェンスを自分の中に落とし込むことができた時期で。だから、ディフェンス面が光った試合だったと個人的に思っています。

ーー渡来選手のお話を聞いてから関根選手との試合を見返してみると、違った見方で楽しめるかもしれないですね…!(関根選手との試合はBOXING RAISEにてアーカイブ配信中

出典:ボクシングモバイル

趣味はスイーツ巡り!?ボクシングと同じく趣味にも探求心があふれる一面も!

ーー休日は何をされて過ごされていますか?

甘いものが好きなので、ケーキやチョコレートなどを食べに行くことが多いです。「業界のNO.1を見つけたい」という気持ちが強いんですよ(笑)
よく“NO.1”と話題になっているスイーツを一通り試して、自分の中のNO.1を見つけています。スイーツのお店は多いので、果てしないんですけど楽しいですね。

最近感動したのは、モンブランです。ずっと自分がNO.1だと思うお店のモンブランがあったんですけど、それを超えるものを先月見つけることができて嬉しかったです(笑)

最近食べられたスイーツたち
出典:本人ご提供

★U-NEXTでの視聴はこちらから

3月1日(土)17時35分配信開始 17時45分試合開始https://video.unext.jp/livedetail/LIV0000008315

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