320L冷蔵庫
職場と実家を行き来するだけの日々。
唯一の肉親である母の介護が、生活の軸だった。
帰宅した実家のリビングには、衣服と食べた終わったカップ麺、飲みきった空の2Lペットボトルなどが散らばっている。
これは、私がやったもの。
冷凍庫には、凍った肉の塊がいくつもある。カットされた玉ねぎやほうれん草もある。
それは、元気なときの母が残したもの。
冷たいフローリングをストッキング越しで感じながら、まるで死体を回収するよかのように散らばった衣類をかき集める。
死体。
冷蔵庫には、賞味期限の切れた卵と、納豆と、豆腐と、溶けたもやしがある。腐敗臭がした。
腐敗臭。
いっそ私も死んでしまえばいい。
そんなことはこの半年で何度も思った。
心拍数が上がる。
いつかはバレる。
だから死ぬのはバレたときでいい。
いつ死んだってどうせ同じなのだから。
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