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16.合否結果を受け止めて

わずか10分足らずでしたが、次女からそんな気持ちを聞けただけでも、今日ここに一緒に来てよかったと思いました。

そうこうしているうちに発表の時間が来て、校舎の二階の踊り場から、大きな紙が下ろされました。

わーともキャーともつかない声とともに、バラバラになって待っていた人たちが一斉に紙の前に駆け寄った瞬間、その声は歓声に変わっていきました。

あっちこっちで歓声をあげて、抱き合いうれし泣きをしているグループの中で、私と次女だけは、黙ってその紙を見つめていました。

「帰ろう」

もう十分見たよと言うように、次女は私を促すように、振り返って歩きだしました。
途中、次女は同級生に呼び止められ、結果がどうだったかを聞かれていました。
次女の短い返事に同級生たちの表情が変わり、困惑した様子が見られましたが、次女は”じゃあね!”と笑顔であいさつをして、また歩きだしました。

校庭で何度も同じことを繰り返しながら、校舎から遠ざかる様子を、私は少し距離をおきながら、心の中で頑張って!と応援しながら見守りました。

一番辛い瞬間ですが、これを一人で乗り越えないと、友達とも気まずい別れ方をすることになります。次女はそのことをよくわかっていて、しっかりと前を向いて、同級生たちに笑顔で、私の分まで頑張ってね!とエールを送っていました。

校門を出たところで、次女と私はまた一緒に歩き始めました。
来るときと同じように、二人とも何も話しませんでしたが、学校の近くの駅まで戻って電車に乗りこんだときに、次女がつぶやくように私に話したことは、

「落ちたことはショックじゃなかったけど、友達に『学校が違っても友達だからね』って言われたのが一番こたえた。あそこで、あんなこと言ってほしくなかったよ」
涙を見せず、落ち着いた口調でそう話した娘に”よく頑張ったね!”と伝えまた何も話さずに家まで帰りました。



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