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意外に難しい 社内敬語 練習帳
以前、定期購読誌に掲載していただいた記事です。「お客様により、社内の人への言葉遣いの方が難しい」という編集部の方からのご相談がきっかけになりました。
お取引先に伺ったときに、とても気になるのは、お客様に対しての言葉遣いより、社内でどのようなやり取りが行われているかです。
⬛️意外に難しい!社内敬語 練習帳
敬語が使えることは社会人の常識です。会社の代表として、お客様に接していると言う自覚を持って、感じよく丁寧に、整った言葉遣いで話すことで、あなた自身の印象だけでなく企業のイメージもアップします。
しかし、社外の方に対する敬語が出来ていても、社内での敬語が出来ていない人は意外に多いようです。
「親しき仲にも礼儀あり」と言われますが、社内の人とは、何をポイントにおいて、どこまで丁寧に接していけばいいのでしょう?今回は、社内での敬語の使い方について考えてみましょう。
1.そもそも敬語の持つ役割とは?
会社では一般的に「目上の方には敬語で話しなさい」「お客様に対しては尊敬語で、社内の人のことを伝えるときは、謙譲語で伝えましょう」と教えられます。
ではなぜ、目上の人やお客様には、敬語で話さなければいけないのでしょうか?
私たちは、一般的に、親しい友達と話すときには、言葉遣いにあまり気を遣いません。
ところが、同じような調子で上司やお客様と話すと、上司からは「タメ口を叩くな(友達言葉で話してはいけないという意味)」と注意されたり、お客様からは、「馴れ馴れしすぎる」「失礼な人だ」と思われてしまいます。
社会や組織では、人と人との間に、年齢、経験、職位、立場など、様々な『差』が存在していますし、この差のあるもの同士が、一緒に仕事をしています。そして、コミュニケーションをとるためには、差を埋める道具を使う必要があります。その道具が敬語なのです。
敬語を使うことで、立場や経験、年齢などが違っても対等に話をすることができます。伝えたいことや、伝える必要があることは、相手にきちんと受け止めてもらえるよう、態度とともに言葉も整えなければいけません。
つまり、敬語が身についているというのは、単に文法や言葉を理解しているだけでなく、この差の存在を知った上で、状況に応じた気配りが出来ていることも意味しています。
2.社内敬語はなぜ難しいのか?
先日、訪問した企業の管理職の方が、こんなことをおっしゃっていました。
「うちの女子社員は、お客様への応対は丁寧で感じがいいと評判なんだけど、社内の言葉遣いがちょっと気になるんだよね。お客様と同じように接してくれとは言わないけど、一緒に気持ちよく仕事をするためには、社員同士の言葉遣いに、もう少し気を配ってほしいなって思う。明るくて積極的なことも大事だけど、『親しき仲にこそ礼儀』も大事だと思うんだけど…」
この方がおっしゃるように、確かにお客様に対してだけ敬語で話しても、話し方が身についているとはいえません。
しかし、「社内敬語」は、意外と難しいのです。私も、物流会社に勤務していた頃、社内の人への言葉遣いには、お客様以上に苦労しました。
社内敬語が難しい理由は、2つ考えられます。
1つ目の理由は、社内には前述した『差』が多種多様に存在していることです。お客様と社員の差は一定のものですし、応対の仕方がある程度パターン化されていますので、それを覚えて活用すれば、失礼な話し方は避けられます。
ところが、社内では、同僚、先輩をはじめ、直属の上司、課長、部長、重役、さらに、日々一緒に仕事をしている人、あまり関わりのない人など、自分との差は様々です。そして、相手と自分との「差」や「距離」を考え、どのような話し方がふさわしいかを瞬時に判断することが問われます。丁寧さを欠いても、丁寧すぎても、差は広がってしまいます。
2つ目の理由は、社内のコミュニケーションの一番の目的は、仕事をスムーズに運ぶためにあることです。過度に気を遣う必要はありませんが、役割や仕事を請け負い、引き渡していくためには、単なる言葉の伝達だけでは不十分で、相手の意向を汲みとった受け応えが必要です。
この配慮ある言い回しや表現が、社内業務の効率化やスピード化を優先するあまり、見落とされてきたり、おかしいと思っても何がどうおかしいのかわからず、注意が出来なくなったり、改められないことが少なくないのです。
3.社内敬語の習熟度をテストしてみよう
次にあげる話し方について、どこがおかしいか?どのように言いかれえれば感じよくなるか、考えてみましょう。
①出先から帰ってきた上司に、「ごくろうさまでした」とねぎらいの言葉をかけた。
②上司と客先を訪問することになったので「お車と電車、どちらで参られますか」と尋ねた。
③上司から案内状の作成を頼まれたので、「すぐに作成して、メールで送らさせていただきます」と答えた。
④ 仕事を手伝ってくれた先輩に「手伝ってくれて、ありがとうございます」と言った。
⑤ 作成した書類の間違いを指摘されたので「間違ってましたか?では直しておきます」と言った。
⑥ 部長にコピーを20部頼まれたので「はい、コピーしておきます」と言った。
⑦ メール機能がわからなかったので、先輩に「送り先とかが見えないやつの使い方がわからないんです」と聞いた。
⑧ 忙しそうな上司に書類を見てもらいたかったので、「お暇なときでいいので、見ておいてください」と頼んだ。
⑨ 課長に部長からの伝言を伝えるとき、「部長は○○と言われていました」と言った。
⑩ 部長から「課長が戻ったら連絡をしてくれるよう伝えてくれ」と頼まれたので、戻ってきた課長に「部長に至急連絡を入れてください」と伝えた。
いかがでしたか?明らかにおかしな表現と思われるものから、“この言い方のどこがおかしいの?”と思われるものまで、社内でよく耳にする表現を集めてみました。適切な表現に言い換えると、以下のようになります。
① 上司や目上の方へのねぎらいの言葉は、「おつかれさまでした」(「ごくろうさま」は目上から下の者へのねぎらいの 言葉です。)
② 「お車と電車、どちらでいらっしゃいますか」(「参る」は謙譲語なので、「られる」をつけても尊敬語にはなりません。)
③ 「すぐに作成してメールで送らせていただきます」(「~させていただく」の活用間違いは意外と多いです)
④ 「手伝ってくださって、ありがとうございます」(「~してくれて」という表現も気になる表現のひとつです)
⑤ 「申し訳ありません。すぐに直します」(ミスをして迷惑をかけたのですから、まず謝り、迅速に対応する旨を伝えましょう)
⑥ 「はい、20部ですね。承知しました(かしこまりました)」(指示を受けたときは、「わかりました」だけでは不十分。 内容も復唱しましょう。)
⑦「あて先を隠してメールを送りたいのですが、やり方を教えてもらえますか?」(「とか」や「やつ」は余分な言葉。 教えてもらいたいときに、「わからない」だけでは、教えてもらう相手に失礼です。)
⑧「お時間のあるときでかまいませんので、目を通していただけますか?」(暇に「お」をつけても丁寧とは言えません。忙しい方への配慮ある依頼のフレーズとして是非覚えて活用しましょう。)
⑨「部長は○○とおっしゃっていました」(上級レベルの社内敬語。職位によって敬語表現が変わります。相手より職位が上の人のことを伝えるときは、尊敬語の度合いを強め、職位が下の人のことを伝える場合は、表現を少なくします。部長に課長の言ったことを伝える場合は、「課長は○○と言われていました」)
⑩「課長、部長が『戻り次第連絡がほしい』とおっしゃっていました。ご連絡をお願いできますでしょうか?(お願いいたします)」(部長の指示でも、あなたが課長に命令口調になっては失礼です。)
4.社内敬語の基本はこう考える
毎日顔をつき合わせて仕事をしている間柄だからこそ、意識していないとついおろそかになってしまうのが、社内での言葉遣いです。前述の10の事例をもとに考えると、社内敬語でおさえるべきポイントは、以下の5つになります。
ポイント1 基本は「です」「ます」で話そう。語尾を丁寧にすると、言葉遣いが引き締まる。
ポイント2 尊敬語と謙譲語の種類と活用を再確認して、正しい用法を身につけよう。
ポイント3 敬語表現の誤用より、意外と気になる「~とか」「~やつ」「~ほう」。余分な言葉を省いて、シンプルでスマートな表現を心がけよう。
ポイント4 相手の意向を汲み取って言葉遣いにもう一工夫。
◎間違いを指摘されたら、まず謝る。
◎指示に対しては、返事と内容の復唱で応える。
◎お願いするときは、命令口調にならないよう依頼形で話す。
ポイント5 立場の違う人の間に挟まれたときは、誰に対して一番に敬意を払えばいいかを考えよう。
お客様に対しても、社内の人に対しても、接し方や言葉遣いは難しいですね。人それぞれ、受け止め方や反応が違いますから、言葉を覚えて使うだけでは不十分。TPOをわきまえた言葉の選び方、遣い方が求められますし、その人の接し方のセンスが問われます。
しかし、それが身につけば、あなたの印象がアップするだけでなく、格段に仕事がしやすくなるのも事実です。
敬語は、相手との差や距離を縮めるための道具であり、相手と気持ちよくお付き合いするための潤滑油ですが、私は、自分自身の元気の素_心のビタミン剤でもあると思っています。
会社や組織では、どんな小さな仕事でも、一つの流れの中で重要な目的や役割を果たしています。人から手渡され、人に手渡していく中で、ただ仕事を事務的に受け渡しているだけでは、味気ないと思いませんか?
その仕事を、責任を持って行うことと同時に、関わる人に心を込めて言葉をかけていきましょう。自分の贈った言葉によって、上司や同僚、お客様から笑顔や感謝、ねぎらいの言葉が必ず返ってきます。大変な仕事でも、返ってきた言葉に励まされ、また頑張ろう!という気持ちになれます。
前述したポイントをおさえて、社内敬語を実践してみましょう。一度に全部とは言いません。あなた自身が気持ちよくなる言葉を、あなたから、周りの方にプレゼントするつもりで使ってみましょう。そうすれば、社内でのあなたの存在感や、信頼度はますます高まります。そして、お客様にも、自信と余裕を持って、より丁寧に、感じよく接することができるようになるでしょう。それが「敬語の達人」です。あなたにも、きっとなれるはずです。