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時間は削るより増やした方がいい!

銀行の支店を訪問して改善指導をする毎日です。開店から閉店まで、ロビーからお仕事の様子を見ているだけでも、たくさんの大切なことに気づきます。
セミナーを受講したり、専門書を読む以上に、現場は鮮度の高い実践的な気づきや学びの宝庫です。

窓口や後方での業務の進め方を見ていて、多くの人がやっていることがあります。
それは、忙しくなって時間に追われると、仕事のピッチを上げて時間短縮を図ろうとすることです。
しかし、これは、「能ある鷹が普段は爪を隠している」くらいのツワモノでない限り、大して時間短縮はできません。

それなのに、”何とかして早くしなくちゃ!”と思って必死になっている。そしてピッチを上げるだけでなく、作業に集中するあまり、表情が険しくなるし、話し方までスピードアップして何を言っているんだかわからない。さらにはモノの扱い方まで雑になる。
待っている人のためにやっていることが、いつの間にか「今話しかけないで!」というオーラを体中から発散しているような状態になり、”そこまでする必要があるのかなぁ?”と気の毒に感じてしまいます。

”早くしてあげなきゃ!”という思いが強くなればなるほど、時間よりも心が削られていくんです。

でも、みんながみんな”早くして!”って思っているんでしょうか?
”遅い!”と思ってイライラしているんでしょうか?
私は、決してそうではないと思っています。

人は待たされているときに、なぜイライラしてしまうのか?
その理由は2つあります。

①いつまで待たされるのかがわからない
②私が待っていることに気づいてもらっていない

つまり、どんなにピッチを上げて作業をしていても、待っている人に何の配慮もなければ、人は待っている時間の長さに関係なく「待たされた!」と感じてしまうのです。たとえ5分、10分時間が短縮できたとしても、喜んでもらうどころか不満に感じていたら、努力は報われないですよね?

だから私は「時間は削るんじゃなく増やすことを考えましょう」とお伝えしています。

では、どうすれば増やせるか?例えば…
①待っている人を見かけたら、「少しお待ちください」「すぐ伺いますのでおかけになってお待ちください」と声をかける
②待っている方を窓口でお迎えする際には「大変お待たせしました」と丁寧に告げてから、ご用件を伺う/手続きを始める
③時間がかかる手続きの場合は、どれくらい時間がかかるかを事前に伝えておく
④事前に告知したより時間がかかる場合は、早めに途中経過や、あとどれくらいで終わるかを伝える
⑤お待たせしたお客さまには、最後のごあいさつは感謝とお詫びの言葉を心を込めて伝える

「待たせてはいけない」と思ったら、方法は「早くしないといけない」の一つだけになってしまいます。
でも、「安心して待ってもらおう」と思えば、方法や工夫はたくさんあるし、必要な時間が確保できます。
①~⑤は、たとえ手続きに時間がかかっていたとしても、「この人は仕事をしながらも私のことを気にかけてくれているんだな」と思ってくれる人もいるはずです。
そして、手続きをする人は、時間も心も削ることなく、正確で丁寧に仕事に取り組むことができるのです。

自分が今やっていることは、必ず誰かが待ってくれているものです。
だから、時間や期限を守るのは、人として必須のマナー。でも、時間や期限さえ守ればそれでいいというわではありません。
また、絶対に守らなければ!と思っても、アクシデントなどに巻き込まれて守れないこともあります。

守ることを前提に、計画的に仕事を進めるとともに、待っている人のことを気遣えること。
単なる作業と仕事はそこに違いがあると思うし、信頼されるために一番大切な要件だと思っています。

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