エピソード4 私にどう生きるかを示してくれた人たち
毎年届く年賀状。ハガキは年々少なくなってきていますが、楽しみな1年に1度の便りです。1枚1枚、文面を読みながら、ハガキをくださった方のことや交流について思い出しています。
この年賀状が交流を続けるたった一つの手段、という方の葉書を手にするとき、嬉しさが倍増します。
勤務していた会社を退職したのは、もう31年前ですが、苦楽をともにしながら働いた先輩や上司たちとは、今でも、細く長くお付き合いをさせていただいています。
織田所長からは、5年前のはがきに「今年で年賀状を最後にします」という文章が添えられていましたが、2番目の上司だった定岡さんと、途中で退職した最初の上司の数井さんとは、交流が続いています。
定岡さんは、宣言どおり、会社始まって以来のスピード昇進で部長になられました。当時、その知らせを受けた時に、
「おめでとう!」と思う前に「くやしい!!」と思ってしまいました。
いつまでも、定岡さんは、私の前を歩いてくれているような気がします。
私は果たして、定岡さんに追いつけるのでしょうか!?
諦めずに頑張ります。
織田支店長は、会社を去り、北海道で奥様とともに第2の人生を謳歌しておられます。
営業所の解体という事業を成し遂げた所長は、その後別の支社の支社長を務められた後、本社に戻り取締役に昇格されました。しかし、定年を前に、突然退職!(実は、密かに計画中だったようですが・・・)その去り方は実に見事で、”さすが、所長!”と拍手を送りたいほどでした。
「君は、ここに来たことを誇りに思いなさい。そして、やるからには一流を目指しなさい!」
営業所に初出勤した日に、織田所長から贈られた意味不明な歓迎の言葉。
その時は、“ヘンなボスだ!”としか思わなかったのですが、仕事に限らず、生き方、考え方に触れるたび、次第にその意味が理解できるようになりました。
「自分の信じた道を貫き通すこと。人に媚びない。妥協しない。でも、弱いものを守り、感謝の気持ちを抱き、謙虚な気持ちで人と接する。
そして、どんなことでも、楽しむこと。やるからには、例え遊びでも仕事でもとことん没頭しプロに徹すること。」
それが、織田所長や、定岡さんの仕事振り、考え方、生き方から、私自身が学んだことです。おかげで私は、私自身を取り巻く環境が変化しても、この考えを貫き通して自分自身を生きています。
残念ながら、在職中には、そのひとかけらも身につきませんでしたが、私がこれからも、一生かけて大切に育んでいきたいことでもあります。
「青春グラフィティ」では、たった一人営業所に残ることになった私を定岡さんが励ましてくれたことを書きました。
織田所長からも、転勤される前にこんなお手紙をもらいました。
季節はずれの便り
移ろいゆく 時の流れは、私たちに必ず変化をもたらせます。
小さな幸せの上に、安住していてはならない_。あの営業所解体も、何もしなかったら、まだまだ皆と、一緒に居れたことでしょう。
何もしなかったほうがよかったのでしょうか?
私にとって、あの営業所のメンバーは素晴らしい最高の部下達であり、宝物のようなものでした。(でした…ではなく、今でも・・・です)
おそらく、今後あれだけ揃ったメンバー達には、多分巡り逢うことがないだろうと思います。
彼ら、彼女達は、それぞれ自分の意思を持ち、個性豊かで、時には勝手に振舞いつつも(私が一番わがままだったけど・・・)共に行動する時は、それなりに全体を優先し、そして精一杯お互いを思いやり、口には出さないが、気を遣ってくれていました。
それぞれの考え方や、行動の違いはありましたが、何かそれが私にはよくわかりました。
それだけに、こんな良い関係がいつまでも続くのだろうか?そのうちに、心遣いの行き違いから、可愛い娘達の誰かが傷つくのではないだろうかと、心配したこともありました。
私には、あの最高の素晴らしい仲間達との関係を、いつまでも続けるには、良い状態の時に、離れた方がベターという思いがありました。(このことと、営業所解体は別の事です。解体はあくまでも公的なことです)
そして、今、結果としてこうなったことが、絶対に良かったのだと信じています。
この2か月、一人行き、二人送りだす中で、何度も後悔しそうになり、お酒の量も増えました。(そのまま、お酒が減らずに今まで続いているのはなぜだろう??)
ホント云って、私も辛い数週間でした。だけど、全てが終った今、やっぱり良かったと思っています。
私の転勤も、あなたが残っているのも、別れではなく立場を超えて替えて、みんなといつまでも付き合っていくための方策であったとしたら…。
わたしには、これからもズーッと気楽に付き合える後輩、弟や娘達が大勢いて、メッチャ心強い思いでいっぱいです。
これからは、兄と妹であったり、父と娘だったり、時には男と女であったり…?そんなことを楽しみにしています。私には、楽しみが増えたのです。
今日は、一方的に私の思いを記しました。昨年の夏から、皆には、不安を持たせたり、時には悲しませたり、自分自身もイラだったり・・・で、なかなか書くことができなく、ようやく今になって、言い訳を整理してみました。
わたしはこれから、あの営業所の仲間達とのことを大切にしながら、時には酔っ払い、わがままを通して、新しいファミリー作りを試みていくつもりです。今までとは、ちょっと違うものをと、考えていますが、どうなるでしょう?無理せず、自然流にやっていくつもりです。
あなたからの贈り物(成長)を、毎日楽しんでいきます。
勝手気まままな 元所長より・・・・
立場も、年齢も、環境も、すっかり変わり、みんなそれぞれに年を重ねていますが、今でも変わらないものがあります。いえ、変えてはいけないものが私の心の中にはあるのです。
定岡さんや、織田所長のその後を思いながら、年賀状が届く時期になると私は気持ちを奮い立たせています。