03.育児ノイローゼ状態

ずっと以前見たTVドラマで、主人公が「あ~実家はやっぱり天国よね」としみじみ話している場面がありました。でも、わたしにとっては、実家ほど居心地の悪い場所はありません。特に長女を産んだ30年前のあの頃は....。

わたしは、中学校の頃から親元を離れて生活をしていました。中学・高校の頃は、寮生活をし、大学の頃から独り暮らしをはじめ、そのまま就職をし、一度も自宅からの通学・通勤を経験しないまま結婚しました。

実家で過ごすのは、せいぜいお盆やお正月で長くても1週間程度。ほとんど家に寄り付かなかったわたしが、2ヶ月も実家で過ごすなんて十数年ぶりのことでした。

初めての出産_最初は、幸せな母と子の触れ合いを想像し生まれてくることを毎日楽しみに待っていました。
しかし、いざ生まれてみると、何もかも思い通りにいかないことばかり。授乳すること、おしめを替えること、お風呂に入れること...。それだけのことでも、入院中は他のお母さん達よりもたついて、看護師さんに手伝ってもらうばかりで、ひとりで何一つ十分に出来なかったのです。

だから1週間後にわが子を手渡されて病院の外に出たときは、これからひとりでこの子の世話をしていけるのだろうか?と体が震えるほど不安で仕方ありませんでした。

そんな不安定な気持ちを抱いている上に、実家に戻ってみると頼みの母は、手術後の経過が思わしくなく、寝たり起きたりの状態。
父はひとりで家業を切り盛りしており、他人のことなど気遣う余裕などありませんでした。
産後の身体を休めるために帰ってきたのに、実家にはわたしが心も身体すらも落ち着かせる場所はどこにもなかったのです。

赤ちゃんというのは実に敏感なものです。
そんな私の不安定な精神状態を察知して、入院中はあれだけおとなしかったのに、家に帰った途端、ほとんど泣きっぱなしになりました。
おまけに夜ずっと泣きつづけ、昼間は疲れてぐっすりと眠りつづけるという習慣がついてしまっていました。

真夜中に、ふすま1枚隔てた隣の部屋にいる父から、
「また今日も寝ないのか?その子はおかしいんじゃないか?もう、いい加減にしてくれないと、こっちは明日も仕事があるんだ。お前は母親だろ。なんとかしろ!」

と毎日のように怒鳴られました。わたしもわからないなりに、昼間は日光浴や入浴をさせて、夜寝させようと努力したのですが、一向にこのパターンは直らないのです。たくさんの育児書を参考にし、電話相談も受けました。でも、状況は変わらないままでした。

私たちは、マニュアル世代の走りなんですよね。説明書どおり事が運んでるうちはのびのびと頑張れるのですが、こんな風にイレギュラーなことについては対応できずパニックに陥ってしまうのです。
子育てなんて思い通りにいかない事の代表格なのに。でも、子育てもマニュアルどおりうまくいくと信じていたのです。

睡眠不足が続き、不安で胃や頭が痛み出し、神経をピリピリさせ続けてはいても一緒に暮らしている父や母には相談できない。育児ノイローゼ状態でした。毎晩泣き叫ぶ長女を抱きしめながら、父に悟られないように声を殺して泣いていました。

「公私共に充実した生活を捨てて、わたしはこんな悲惨な生活を選んでしまった!何が研修講師の道を歩むよ!こんな状態では、自分のやりたい仕事につくための準備なんて、何にもできるわけないじゃない!」
思うようにいかない子育て以上に、自分が選んだこの生活を悔やみました。

期間にしてみればたった2ヶ月のこと。でも、あの頃、実家で過ごした2ヶ月は、わたしにとって10年にも20年にも感じられました。

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