意味から逃げ出そう
先ほど、ネットフリックスの「マインドフルに殺して」というドラマを観終わった。視聴前、あらすじに「マインドフルネスによって気づきを得た主人公が闇組織を壊滅させる」みたいなことが書いてあったので、怪しげな洗脳を描いた安っぽいサイコスリラーなのかなと思ったが、全然違っていた。
主人公は多忙を極める有能な弁護士で、仕事に没頭するあまり家庭を全く省みていない。結果、夜遅く帰宅しても愛娘とは話もできず、奥さんには小言ばかり言われている。その奥さんに最後のチャンスとしてマインドフルネスの教室に通うよう要求され、いやいや門戸を叩くところからストーリーは始まる。
それからなんやかんやあって、主人公は自分のクライアントだった闇組織のボスを殺めてしまうのだが、様々な機転を利かせて毎回窮地を乗り越えていく。その際にマインドフルネスの先生の教えが回想で挟まるのだが、その中で僕が気に入ったのは「今やっていることだけ考えなさい」というものだ。
今の世の中は超マルチタスク社会で、僕たちは常に大量の情報を浴びせられ脳が疲弊しきっている。例えば、流行りのドラマを流しながらXで更に今日のトレンドをチェックし、明日の仕事の準備もしているといった具合にだ。だが先の先生によると、それは幸せから遠ざかる習慣らしい。そうではなくて、どこまでもシングルタスクに歩いている時は歩いていることだけ考えればいいと言うのだ。
僕は昔、スヌーピーが好きで原作の漫画をよく読んでいたのだけど、今でも憶えている印象的なセリフがある。
「一度に1週間を生きようとするから疲れるんだよ、考えるのは1日のことだけでいいんだ」(スヌーピーには哲学が詰まっている)
少し文脈が違うかもしれないが、近いことを言っているように感じる。
これに関連して僕自身も変化を感じている。少し前までは余暇の時間を全て有意義なことで埋め尽くさなくてはいけないという強迫観念に捉われていて、ゲームをしたら読書し、それから映画という具合にめまぐるしく脳に情報と刺激を送り込んでいた。そんな心境ではせっかくのコンテンツも楽しめるわけがない。だから、普通に口にされる「ゆっくりする」という言葉の意味が心底理解できなかったのだ。
それが最近では、やる気がしない時には何もせず、横になってただ目を閉じている時間が一番幸せだったりする。時の流れに身を任せるのがこんなに気持ちのいいことだったなんて。しかも今読んでいる本のタイトルも「怠惰は存在しない」というもので、そんな僕の在り方を全肯定してくれているような気がする。ここまで何もしないことを楽しめるというのは、心が元気になってきている証拠なのかもしれない。
ドラマの話に戻るが、本筋はクライムストーリーだがジャンルはコメディであるため、暗い雰囲気は一切ない。ただ、たまに主人公がカメラを見つめて話しかけてきたりするので、そういうのが苦手でない人にはオススメしたい一作である。
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