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酒場の純米大吟醸 仕込み体験

SAKE Storyで働くぐらいなので、勿論自分は日本酒が好きだ。
ただ、飲むことが好きな私は造りの事となると紙面上の形式的な知識しか持ち合わせていない。
それを実践を以て理解できる場があるなら、当然参加したいものだ。
今回は当店の看板酒でもある酒場の大吟醸を醸す、
新澤醸造店様に協力を得て、お酒造りに対する理解を深めさせて頂いた。
今後もうできないかもしれない、本当に、最高の体験だった。


再びの仙台の地

夜行バスのアナウンスで目を覚まし、車内の人たちはこぞって下車をし早朝の仙台駅へ向かっていく。
ゴールデンウィーク真っ只中にも関わらず、始発が始まるか始まらないかの時間にスーツで出かける人も多く見られた。
半年ほど前に来た仙台駅の空気感をじわじわと思い出しながら、今回はより身の引き締まる思いで、待ち合わせの仙台駅西口のロータリで迎えに来てくださるのを待った。

今回も新澤醸造店様にお世話になる。
しかも今回は4日間も酒造り体験をさせて頂ける事になった。
というのも、3月に行われたペアリングのイベントの最後、
こんな機会はもうないだろうと、えぇいままよと勢いで、
渡部杜氏に仕込みの体験をさせて欲しいとお願いをしたのだった。
なんとも図々しいお願いではあったものの、スピード感がある会社という事もあってか、
あれよあれよと話が進み、ゴールデンウィークに4日間も対応頂ける事となったのだ。

緊張と高揚の初日

初日は前回同様夜行バスでの到着となる。
到着が早すぎるかと考えていたがやはり蔵の仕事は朝が早く、
飲食で働く自分には想像のつかない時間から動き出しているようだった。

醸造を行う川崎蔵に到着するとまずは気替えを行う。
左手にある事務所兼休憩室は新築だろうという様な綺麗さだった。

到着時貸して頂いた白のウインドブレイカーには、新澤醸造店の文字と、松のマークのロゴが記されており、見るからに格好いい。
これを着ていいのかと興奮していた当時の自分に、それは渡部杜氏個人の借り物だと伝えてやりたい。
汚したというわけではないが、洗濯等を改めて申し訳ない気持ちになる。
本当にありがとうございました。

着替えが終わると、その先左手にある醸造蔵に入っていく。
入る際は毛が落ちないように帽子をするのは勿論、靴を履き替えを行う。
そのまま進んでいくと、分析室、酒米を蒸す大きな釜、酒母室、麹室がある。

初日の午前中は早速朝仕事・仕込み・片付けを手伝わせて頂き、
午後はグループ会社のライスコーポレーション株式会社とMCG株式会社の新築のジンの仕込み蔵を見学させて頂いた。

前回も苦戦した櫂入れ。
これを早速行う事になろうとは。
一番初めは、三段仕込みの最後の段階である留添を行ったタンクをの櫂入れだった。
量の少なかった前回の仕込みと比べ、圧倒的な量と重さに更に苦戦。
下から持ち上げるような意識で混ぜるが何度やっても、表面にふわっとした波紋の様なものが出てこない。
やはり一朝一夕では身につかない作業だ。
教えてくださった蔵人さんがとても丁寧な方で、作業の方法は勿論、
どの様な理由でそれを行うのか、それを行わないと(もしくは行うと)どうなるのか、分かりやすく教えてくださったおかげで、その作業の意図が理解しやすかった。
何度も指導頂きながら、ひたすら混ぜつつ、品温のチェックと分析に回すお酒の採取、混ぜた後に飛んだもろみを拭き取る作業などを並行し、朝仕事が進んでいく。
その際、同じ酵母のものは同じ櫂を使用して良いものの、タンクの番号は若い順に混ぜないといけないという説明もして頂いた。
こういう部分の徹底ぶりがきっと良いお造りに繋がっているんだろうと思う。

またこの日は仕込みの日だったこともあり、蒸米と麹米を混ぜ込む作業も行った。
まだこちらの方が軽く混ぜやすい。
作業中に教えて頂いたヒントで、踊るように混ぜるを実践できた事もやりやすさに繋がったのだろう。

そしてその後、その日に使った器具などの片付けを行う。
櫂入れした櫂は勿論、蒸米を入れていたネットや床自体も掃除をする。
それぞれに使用するタオルやスポンジが違うなど、既に確立された必要性のある決まりと、効率が良いシステムは仕事がしやすく参考にしたくなる程だった。

その後お昼を挟んで関連会社のライスコーポレーション株式会社とMCG株式会社の見学も行わせて頂いた。
ライスコーポレーションの代表である浅野さんに直接お話を伺った。
もとはラベル貼りのアルバイトから始まった浅野代表は生粋の叩き上げだ。
蔵内部だけでなく関連会社も見学させて頂いたわけだが、
実は自分の実家も中身は異なるものの粉製品を扱う会社であるため、
何か参考にできるものがあるのではないかとお願いさせて頂いた。
ライスコーポレーション株式会社は精米を行っている会社で、新澤醸造店で使われている酒米をはじめ、他の酒蔵の精米も行い、その際に出てくる糠の販売も行っている。
設備も素晴らしく、2台の精米機を駆使してなんと1%未満まで精米できる技術を持つ。
当たり前だが設備だけでなく、それを駆使する技術や管理体制も徹底している。
精米した際に出てきた糠は、赤糠・中糠・白糠・上白糠に分けられる。
これらが混ざらない様に、また、粉が舞い上がることを防ぐため(粉を扱う場合、粉塵爆発の可能性があるため)に風の通り道まで考えながら窓の開閉を行うそうだ。
その徹底ぶりは流石、新澤醸造店の関連会社である。

その後、ジンを製造している株式会社 MCGの代表である杉原代表にお話を伺った。
彼は新澤醸造店では専務でもある方だ。(分かりやすいように以下杉原専務)
ジンやリキュールを製造するこの会社は、当店でもお出ししているクラフトジンの欅を製造している。
このお酒は宮城の名物である芹など、地域の特性を生かした食材を使用している点も特徴で、東北初のジンの蒸留所である。
丁度新しい醸造所ができたため、その内部を見学させて頂いた。

新設の蒸留機


通常ジンの定義は幅広く、ざっくりと言うとジュニパーベリーとハーブを使用した蒸留酒を指す。
こちらでは、芹やゆずなど複数種類の蒸留酒を造った後それらを配合する事で欅が完成になる。
その一つ一つの蒸留酒をとても小さなタンク1つで行っていたものの、
大きなタンクを導入した事でより効率よく大量に生産が可能となるそうだ。
自分もこちらのジンが好きで、個人的に欅を購入したりしている。
また別の機会だが、秋保のあるホテルで群緑という別ラベルのジンも飲んだ。
より力強さを感じるその味は、ある酒屋限定のため簡単には手に入らないが、一度飲んだら本当に止まらなくなる。
今回の見学で教えて頂いたこだわりと杉原専務の熱意も相まって、また見つけることができたら絶対に飲みたいお酒の一つだ。

既に肉体の限界がくる2日目

2日目は朝5時に出勤し、米張りの作業から、洗米・酒母室を見学させて頂く。
飲食店で働く普段の生活と真逆の動きをしているため、起きられるか物凄く不安だったものの、緊張のためか意外とすんなりと起きる事が出来たのは個人的にとても安心した。
しかし、前日の櫂入れのためか、着替える時の腕を上げる動作が本当にきつい。
両方の肘から肘にかけて突っ張り棒を付けられているような感覚だ。
こんなにも着替えが苦痛だったのは人生初めてである。
2日目は、お米を洗う洗米という作業から始まる。
ネットが敷かれているキャスター付きの台車で洗米と水切りを行い、
重さを計測して水の吸収率(お米が吸収した水の割合で、浸漬は麹菌が蒸米を分解しやす環境をつくるために行う)を測っていく。
教本で目にする浸漬は桶で行うものと書かれている事が多い。
それでは大変な回数行うのだろうと考えていたが、台車で行うとはなんと便利だろうか。
桶より格段に大きいため作業の回数は減るだろうし、ましてキャスターまで付いていれば運ぶのも便利と、二重で効率化されていて素晴らしい。
とはいえ、米袋から洗米機にお米を移す作業ははやはり人力で、30kgの米袋を持ち上げていく力を持っているのは慣れとはいえ流石だと思う。
米の周りの糠を洗い流し台車に入れながら水を貯め、一定量が貯まったら米が壊れないように混ぜて再度糠を落としていく。 
これを何度か繰り返し、水の濁りが落ち着いてきた所で完全に水を切る。
この作業を繰り返していくが、そのうちの隙間時間で、測りに吊るして重さを測りその増えた量で吸収率を測って保管をする。
ひたすら水を浴びながら行う作業で、これは冬の時期に行ったらなんと寒くなることか。
勿論、ゴム手袋やエプロンも付けているため実際に浴びる事はないものの…
何度目かはわからないが、やはり大変な作業だと再度体感した。
そちらが落ち着くと、次はお米を蒸す作業に入る。
甑(こしき)と呼ばれる大きな釜の様なもので米を炊いていくのだが、
1m位の台の上で作業していくため、足を滑らせないか不安だった。
しかし、教えて下さった蔵人さんは私と同い年にも関わらず、10年もの経験があるため、ひょいと軽々動き回っていた。
洗米の時に使用したものと似たネットを甑に敷き、
その上に洗った米を入れ、再度ネットを敷きお米を入れ…という作業を何度か繰り返す。
その際に蒸し上がりにムラができない様均しつつ、一部は少し盛ったりするなど調整し、熱を入れ米を蒸していく。

その間、酒母室の方で体験をさせて頂いた。
お米が炊きあがるまでの時間で基本的な作業を終えるため、スピード感のある中動いていく。
まずは仕込んでいるタンクの状態のチェックを行うため、櫂入れと分析用に酒母の採取を行う。
また、この日は酒母作りの初日だったため、タンクの清掃も行った。
仕込みの時に使用するものより遥かに小さなタンクに仕込んでいく。
ブロックの上に置いて高さを出しているタンクは、斜めにしてあるため洗いやすくなっているがそれも重労働で、何も考えずひたすら洗っていたが、
タンクを揺らすほどバランスを崩しそうになって本当に肝が冷えた。
倒れなくて本当に良かった。

酒母も温度管理がとても重要になってくる。
温度を測り、目標の温度まで上げるためタンクを温める。
それが俗に言う暖気入れのタイミングで、温める事で糖化を促進させる事が目的になる。
ここでは直接ガスによって暖めるという方法をとっていた。
またその横で日誌に温度を記入していく。
タンクが何日目かによって目標の温度が変わり、温めては下げるというのを繰り返す。
目標値と実際の温度を測り記入し、グラフにつけてどの様な温度の上下があるかを視覚的に分かりやすくしていた。
そのタイミングで米が蒸し上がると、以前のように米を運ぶ作業に移る。
今回は麹室ではなく先ほど洗浄した酒母のタンクに移すと、そのまま仕込みの作業に移っていった。

お昼休憩を挟み、午後は瓶詰めと出荷の見学をさせて頂く。
生憎瓶詰めの大規模な作業はなかったものの、瓶詰めされた大量のお酒が並んでいる様子は圧巻だった。
瓶詰めの工場は二重の入口になっており、片方が閉まっていないともう片方は開かない仕組みになっている。
工場内の環境を保持して品質管理を向上させるための装置らしい。
動いてはいないものの大きなタンクとレーン、またそれらを管理するパネルの説明の後、工場内にあるビニールのカーテン内での瓶詰めの作業も拝見させて頂いた。
出荷数量が少ない場合は大規模なレーンは動かさず、
手作業で詰めていく事もあるそうだ。
こんな大手でも手作業なのかと意外と思ったが、
確かに大きなレーンを動かすための前準備や後処理を考えると納得だ。

その後は出荷の工場に移ってお話を聞いた。
午前中で仕事がほぼ落ち着いたそうなので、少し残っているラベル貼りの作業を行う。
ここも意外な事に手作業で貼っていく。
空気が入らないか、斜めっていないかなど緊張しいな自分は1瓶貼るのに他の方の2倍はかけたと思う。
合格点をもらって作業を続けたが、
自分がラベルを貼ったお酒はどなたの元に届くのだろうか…と考えると愛着が湧いてくる。
我が子が手を離れるような感覚…
と言っているものの、念の為申し上げるが、自分はラベル貼りしかやっていない。
となると造っている方達からすると、長い時間かけて造りあげた作品が手を離れる事は、中々寂しかったり不安もあるんだろうか。
まさかラベル貼りでこんな感情に気付かされるとは…

貼っていくラベルの場所の管理も徹底されていて、
どこに戻していくのか一目瞭然だ。
その後は、お酒を郵送する際の段ボールづくりを行った。
おそらく40個くらいは組み立てた。
実家でも段ボールを形成する作業はしたことがあるので、
この時ほどこの経験が役に立った事はないと思う。
そしてそこで丁寧に教えてくれた研修の方が海外からいらした方で、
家でもどぶろくを造るほど日本酒がお好きだそうだ。
近日中に関東に来られるそうなので、
これも何かの御縁だと当店にもお越し頂くことになった。
当日も日本酒を飲みながら色々とお話を聞かせて頂き、個人的にも有意義な時間を過ごすことが出来た。

挑戦と不安の3日目

3日目は午前中に再度米張りから朝仕事・麹作業に入り、片付けの後、午後からサーキットと呼ばれる利き酒を行った。
人生初の利き酒に不安と自分がどこまでやれるのかという
挑戦心の様なものを抱えて一日が始まった。

昨日同様、甑の中にネットと米を順番に敷いて均していく。
今回は他の社員さんも1人加わり3人で作業を進めていったため、
幾分か早く米のセットをし終わった。
その後、タンクを混ぜて温度を測り、分析用の採取をして朝仕事の手伝いが終わる。
次は今回初めての麹室入りをする。
前回は麹が満遍なく行き渡るように混ぜ込む種切りを教えて頂いた。
今回はまず盛りの作業から。
麹をかけてからよく混ぜた後、布をかぶせて時間を置く。
そのタイミングで乾燥しお米どうしがくっつき始めたら、
温度と水分量をより均等にするために、お米をそれぞれ切り離す切り返しを行う。
その作業後時間を置いてから、一定の温度に保てるよう、盛りという作業に移る。
業務用冷蔵庫のような見た目の保温器のようなものに、複数段に分けてネットを敷いてお米を乗せていく。
こちらもなるべく平らになるようにし、中段の板の真ん中に温度計を挿して保管する。
これで庫内の麹米の温度を測り目標の数値にして品温の低下を防ぎ、麹がしっかりと定着するのを待つ。
その作業を終えると麹室内の清掃を行った。
1つの作業ごとに清掃はどこの部署でも徹底しているのは流石である。
その後は、乾燥させ完成した麹米を袋に詰めていく作業だった。
これがまた腰を使う作業でなんとも大変で個人的には、作業の中で一番きつい動きだった。
そんな腰の中、蔵の中の清掃に入る。
この日は蒸し器の下などを水で流していく作業だった。
お米1つ残さないようにとブラシをかけ、水を流していくのもやはり大変な作業だ。

そして休憩を挟んで、サーキットと呼ばれる利き酒を新澤代表自ら監督してくださった。
60種類の日本酒が注いだ状態で置いてあり、それを口に含んで点数をつけていく。

大量のお酒を前にたじろぎながら利き酒を始める


それを複数回繰り返し、点数の誤差が少ない方が舌のブレが少ないため、
いつも同じ味わいで日本酒を味わえている事になる。
この感想も面白い事に職業ごとにつける点数が変わってくるそうだ。
蔵人なら雑味や老香(ひねか)があるかなど、造りとしての美味しさを見ていくらしい。
飲食のサービスはどういう香りがするのか、何と合わせれば美味しそうと考え、点数も個人の好みによって変わってくるそうだ。
ただ大切なのは、どの点数だから良い悪いという事ではなく、
複数回やってもそのお酒毎に評価を変えない事が利き酒のポイントとなる。
1週目を行った際は大体45分くらい、2回目は30分くらいで飲み比べをした。
今回が初めての利き酒である。
勿論、お店で試飲をして店主と感覚のすり合わせをしたりはしていたが、
この量を一度に比べるなんて初めてである。
個人的には全力で臨んだつもりだったが、後から利き酒をしている新澤代表をみて驚いた。
1週20分程のペースで利き酒をしていく。
口に含んでは吐器に出す。
まさにそんな動きを繰り返していく。
利き酒は回数を重ねる事が大切だとお聞きしたが、
今の自分には何度やっても絶対に追いつけないだろう。
点数の差の集計後、新澤代表の点数と自分の点数を比較したが、
当然、新澤代表の方が圧倒的に誤差が少なかった。
また、合間に挟んだ自社のお酒について、
同席してくださった渡部杜氏と品評を行う様も拝見させて頂いた。
飲むだけで造り手が分かり、今年はどういう味でどの時期に売り出そうとお話しされている様子は、住む世界が違うというか、
自分はこの場にいていいのかと恐縮するタイミングであった。
こちらでお世話になる前から、店主からこちらのお蔵で体験させてもらえるなんて一生に一回もない機会だと、それは口酸っぱく言われ委縮していた。
この事は醸造の行程の厳しさに気を取られ、どこか頭の片隅にいたが、
普段からこの会話を自然と行っているであろうお二人の風景を目の当たりにすると、改めて店主の言葉の意味を身を以て知らされたのだった。

寂しさの芽生えた最終日

最終日は麹作業と清掃、酒粕取りを行った。
日曜日だったこともあるのか出勤の人数も少なく、平日より落ち着いた雰囲気が蔵の中に流れていた。
この日の麹作業は昨日行ったものとは違い、麹室から出した麹米を更に乾燥を進める作業だった。
麹室にある麹米をメッシュの布を引いた台に薄く広げて乾燥させる。
それを約20段弱くらいをどんどんと進めていく。
麹米を室(むろ)から出し台の上に乗せる作業は、室担当のお姉さまが行ってくださった。
齢60を過ぎた方が、自分の身長と同じくらいの高さの室からそれは重い米を出し、乾燥用の台にのせていく。
自分はのせられた麹米を平たくする作業を行っていたが、これも中々腰にくる。
中段あたりは問題ないが、下段は腰を屈ませ1.5mくらいはありそうな幅の台にひろげるのである。
一段終わるとまたその上にもう一段重ね…という様に次第に高さが出てくる。
上段に関しては最早身長が足りず、終始背伸びでの作業。
お姉さまはそれに加えて、室からお米を運ぶ作業も担っている。
話をして緊張をほぐしてくれている上に、重い物を運ぶ作業をし、さらに動きはスピーディー。
元気が過ぎる。
全ての麹米をのせ終わると、次は室の清掃に入る。
掃き掃除や拭き掃除、アルコールでの消毒を終わらせて作業終了かと思いきや、翌週の準備を行う。
翌週作業予定の麹の種類や重さを記入し、麹完成後に貼る何のためのお米かか分かる様にするためのテープの作成。
作業をする日は作業以外の事で時間を割かずスムーズに仕事を行えるよう、細かい作業は先に済ませておく。
何とも効率的な働き方だろうか。
本当に何度も言うがうちも見習いたい。
その後は圧搾機から酒粕を剥がす作業を行った。 
ヤブタ式と呼ばれるその機械は、両側から与えられる圧力でお酒を搾る。
その際に機械に残る酒粕は板状なため板粕とも呼ばれる。
圧搾室を開けた瞬間、もわっと香芳醇な香りが広がった。
お酒が苦手な人はこれだけで酔ってしまうのではないかと思うくらい、強いお酒の香りだった。
薄い板と厚い板が交互に並んでいるためそれを剥がし、
その間に挟まれている酒粕をヘラを使ってこそいでいく。
弾力のある酒粕の綺麗に形が保たれたまま剥がれた際のこの感じ、
なんとも快感である。
お酒の通り道である直径7-8cmくらいの円にも粕が付いていたが、
なんとなく粘度が高そうで剥がすのが大変そうだ。
酒粕をヤブタから剥がす、それが最後の自分の作業となった。

仕込みの4日間を終えて・・・

今回酒造りの一連の流れを実際に経験させて頂き、
前回以上にお酒造りの大変さと、この味がいかに計算されてできており、
それを守るために努力をされているかを肌で感じる事ができた。
だからこそ数多の賞を受賞してきているのだと改めて納得した。
また、この4日間は必ずどなたかお一人についてまわる様な形だったのだが、蔵の皆さんがその作業の意味を教えてくれながら実際に行わせてくれる。
作業の意図を伝えてくれる事は、ただこなすだけではなく、
必要性の理解にも繋がるため流れが覚えやすくとても分かりやすかった。
お酒造りは勿論だが、会社としていかに仕事をテンポ良くこなし、
効率性をあげていく事を常に考える姿勢は本当に素晴らしいと思う。
だからこそずっと良い品質のお酒を、良い意味で変わらないお酒が保てるのだろう。
実際店にいらっしゃるお客様でも、伯楽星があるというと
安定の味、ずっと飲んでいられる味、と言われる方が多い。
特に年配の方が多いイメージなので、それほど長い間愛されている事や、
新澤代表の意志の通りに飲み手に受け入れられている事が分かって
こちらとしてもより嬉しくなる。
今回の体験はお酒造りを学ぶだけではなく、
会社としての在り方や皆さんの熱意により触れることが出来た。
そして今回の記事には記載していないものの、蔵の外でも大変お世話になった。
車の運転もできない自分を毎日お送りくださった渡部杜氏、杉原専務。
お忙しい中直接お話しをする時間をつくってくださった新澤代表。
造りの忙しいタイミングにも関わらず、丁寧に説ご指導してくださった
蔵や精米所、蒸留所の方々。
また、でしゃばった自分に食事の機会も設けてくださり、
それに加え、酒場の純米大吟醸を提供しているお仲間とお会いする場もつくってくださるなど感謝してもし切れない程だ。
造りの素晴らしさ、こだわりや熱意はもちろん、
これらの新澤醸造店で働く方々の素晴らしさも含めてお客様に伝え、
微力ながら新澤醸造店のお酒をより好きになってもらい、
より日本酒自体もを好きになってもらえる様に精進していきたい。


最後に記念写真をパチリ

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