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記憶の上書き

母の背中ごしに見たのは、赤い光だった。
それしか覚えていない。
遠ざかるのか近づいてくるのか、
それも覚えていない。

ただ、夜の駅のプラットホームだった。
汽車に乗ったのか、降りたのか、
それも覚えていない。

寒い季節だったように思う。
あの赤い光は、近づきもせず遠ざかりもせず、
ただ線路の彼方にとどまっていたのかもしれない。

このようなぼやけた記憶は、
後に自分で無意識のうちに後付けで上書きされた記憶かもしれない。
赤い光を見たこと以外は。

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