喫茶店
女の客が一人でテーブル席に座っていた。
わたしは広げた新聞の上の端のその向こうの景色を盗み見していた。
その女はいつからそこに座っているのかわからない。
伸びた背筋を曲げることはない。
時々天井の照明や壁に貼ってあるなにか紙に書いてあるものに目をやって、
そのあと必ず壁の時計を見る。
それ以外は何もせずただテーブルに目を落としていた。
待っているのだろう。
いつから誰を待っているのかはわからない。
よくよく観察していると、笑顔を作っている。
いつもではないが、時々だ。
待っているのだろう。彼を。
わたしは何故かいたたまれなくなり、
店を出た。