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静かな夏
タイでは4月6日の月曜日はチャックリー王朝記念日で祝日、おかげで今週末は3連休です。
例年ならばタイ正月のソンクラーンも間近になってきて、水掛祭りの激しさが有名なチェンマイは、真夏の師走という風の祝祭めいた喧騒が炎熱の中で沸き立つような頃ですが、今年はcovid-19によるソフトなロックダウンの最中。夏はいよいよ静けさを増し、街も人も息を潜めるという風です。
夜間は外出禁止令が敷かれ、昼間も県境を越えることは原則禁じられ(経済や生活を支えている物流など除外されているものもあります)、国道にはチェックポイントも設けられるような状態なので、自動車の往来も少なく、飛行機は国内線も飛ばなくなったせいでしょうか、常に空気に響いている微かな振動やノイズのようなものが減って、風の音や鳥の声が大きく聞こえます。
たとえば、昔の世界とはこのように静かだったのだろうか?その時代ごとに地球上を、気圏や地殻を、どんなノイズや振動が響き渡り覆っていたのだろうか?と、想像しつつ、このエアポケットに落ち込んだように訪れた静けさに、不安をあげつらう思考とは別に、皮膚や身体はむしろどこか深く落ち着いてゆき、忘れていた何か懐かしいものを思い出すような気がしているのも確かです。
この名前をつけがたい懐かしさには、これまで誰もが普段は自分とは関わりがなく、そして忘れていただろう、孤独とか死も、それ自体ではなくても、その影くらいは射し込んでいる気がします。