立夏 第二十一候 竹笋生
雨季入りしたと思いきや、なぜか雨が降らない日が続いています。
それでも、少し前の毎日のように降った雨のおかげで「竹笋生 たけのこしょうず」のとおり、山の方の山岳民族の人たちの市場では、野生の筍が売られ始めていると聞きますが、残念ながらCOVID-19のロックダウン中でそうした市場がある場所へ行くのは少し難しいこと。町で筍が手に入るようになるのは、もう少し先になりそうです。
この雨の降らないのに加えて、ここ数日は苦しいほど暑いのですが、それには訳があります。
第二十一候に入る少し前。14日、15日は、チェンマイでは12時20分頃、太陽が天頂に至る日。(本当は89.9度なので、90度にはほんの少し足りませんが)もっとも太陽が地上に近くなる日だったのです。
そして垂直に光が降り注ぐこの瞬間、垂直に立つものから影が消えてしまうので、もちろん木陰や軒下にはささやかな影はありますが、普段よりその面積ははるかに少なく、あたりは不思議な平板な明るさに満ちます。
そんな不思議な奇妙な瞬間を確かめたくなって、部屋から余計な出っ張りがなく、真っ直ぐ立てられるものを見つけてきてベランダに並べ、影が消える様子を確かめるのが毎年の楽しみになっています。
この天頂を太陽が通る日があるのは、タイが北回帰線の内側にあるから。おかげで日本と異なり、夏至の少し前に陽射しが一番強くなる日が年に二度あることになります。
さらにこの日以降、夏至を過ぎて次の太陽が天頂に至る日までの間、太陽はどんどん北側へ傾いてゆくので、影が南に落ちたり、北の窓から光が射しこむという日本では見られない不思議な風景が体験できるのですが、これが緯度の低い国に居る楽しみの一つでは。そんな気がしています。
この強烈な日照と北方アジアで生まれて培われた方向感覚を惑わす奇妙の光の角度や深さ微かに船酔のような眩暈を時折感じながら。