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雨水 第六候 草木萌動

 三月一日から昨日まで、雨水の末候「草木芽生え萌えいずる」でした。

 チェンマイの我が家や郊外のアトリエのあたりでは、早朝に春ゼミが鳴き始め、普段は美しい緑の屋根で日陰を作ってくれるレインツリーが落葉の時を迎えて、小さな歪な楕円形の葉を際限なく降らせています。
 その葉は、淡い茶色なので、まるで金色の紙吹雪のようでもあり、軽い音を立てながら舞い散る金葉の中にいると、どこかシアトリカルな不思議な胸に迫るものがあります。

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 落葉の季節では草木萌動ではないようですが、日本の秋の落葉とタイの違うのは、落葉の直後、あるいは同時に若葉が芽吹くこと。レインツリーに限らず、ニーム、龍眼、チーク、砲丸木、菩提樹などなど、ほとんどの木がそうです。
 しかも、この季節はマンゴーや龍眼など果樹や蘭の花の盛りの頃でもあります。物狂おしいほど一斉に咲く花の香りの中、切れ目なく葉が落ち再生する生滅のさまは、もしかするとタイの仏教の輪廻の感覚にも影響を与えているのかもしれません。

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