新書記長就任と続く汚職撲滅運動
ラム新書記長の就任
前回の記事(「国葬と党内序列」)では、現職のまま亡くなったグエン・フー・チョン(Nguyễn Phú Trọng)書記長の後任が決まるのは、任期満了となる2026年1月の共産党大会か、次の中央執行委員会が開催される今年10月ではないかと書いた。
これは例年10月に共産党の中央執行委員会が開催されるので、そこまで人事は保留されたままになるのではないかという見通しのためであった。
ところが8月3日に臨時の中央執行委員会が開催され、書記長代行であったトー・ラム(Tô Lâm)国家主席が正式に書記長に就任した。
ラム新書記長の任期は次の党大会が開催される2026年1月までだが、今回の人事でチョン前書記長の政治路線があと1年ほど継続されることは確実である。
汚職撲滅運動の継続
チョン前書記長の政治路線とは、国内政治においては第一に汚職撲滅運動である。汚職撲滅と言えば聞こえは良いが、実際は汚職を理由とした政敵の粛清である。
早速共産党はレ・ミン・カイ(Lê Minh Khái)副首相の辞任を発表した。
カイ副首相は4人いる副首相の筆頭格であり、先日の葬儀委員会でも党内序列16位に位置していた有力政治家の1人であり、現在の党幹部の中では数少ない「経済通」としても知られていた人物であった。
チョン書記長によって粛清されたグエン・スアン・フック(Nguyễn Xuân Phúc)国家主席やヴォン・ディン・フエ(Vương Đình Huệ)国会議長は経済・財政政策を司るポストを歴任してきた「経済通」であった。
カイ副首相の更迭もこの延長線上にあると考えられ、汚職撲滅運動の名を借りた政敵の粛清が継続されることは間違いないだろう。
そうなると既にラム書記長の支配体制は確固たるものとなっていると考えるのが自然かもしれない。1年数ヶ月で書記長ポストを降りて次の体制に譲ることは考えづらいが、さてどのようになるだろうか。