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ベトナム国家主席人事のゆくえ

「ベトナム政局ウォッチ」4本目の記事は、国家主席の人事がどうなるか深掘りする。

国会臨時会議の開催決定

ベトナムで8月26日に第15期国会の第8回臨時会議が開催されることが決まった。
今回の臨時会開催では、党中央委員を解任されたレ・ミン・カイ(Lê Minh Khái)副首相ダン・クオック・カイン(Đặng Quc Khánh)資源環境大臣の後任が選ばれるのではないかと言われている。

カイ副首相とカイン資源環境相は、チョン前書記長の国葬が執り行われた直後の8月3日に中央委員を解任された。
カイ副首相は国葬に参列した時、党内序列で16位に位置しており、そこから僅か1週間ほどで失脚したことになる。
今年の5月に来日し、日本の政財界との繋がりのある有力政治家であったため、更なる昇進を期待する人も多かったのではないだろうか。

また8月21日にチャン・ルー・クアン(Trn Lưu Quang)副首相が党中央経済委員長に任命された。
前任の党中央経済委員長であるチャン・トゥアン・アイン(Trn Tun Anh)は政治局員も務め、最高指導部の1人であったが、今年1月に汚職撲滅運動の煽りを受けて辞任し、経済委員長のポストは欠員となっていた。

クアン副首相は党中央経済委員長の専任となって、副首相を辞任するのではないかと見られている。
仮にクアン氏も辞任となると元々4人いた副首相のポストは2人になってしまう。
これら欠員の出た閣僚ポストの後任を選ぶことがこの臨時会議の目的であると表向きは考えられている。

臨時会議開催の真の目的とは

しかし臨時会議での注目人事は国家主席のポストであるともっぱらの噂である。
先日亡くなったチョン書記長の後任はトー・ラム国家主席が兼任することとなった。
かつてチョン書記長も国家主席との兼任をしたことがあったが、ラム書記長もまた兼任を続けるのか、それとも書記長に専任して国家主席は後身に譲るのか、それがこの臨時会議で最大の注目人事である。

ジャーナリストのガー・ファム(Nga Pham)氏はルオン・クオン(Lương Cường)党書記局常任が新たに国家主席として選ばれるのではないかと見ている。
クオン党書記常任は既に党内序列で4位に位置しており、次の国家主席としては適任であろう。

クオン氏は人民軍の将軍だが、軍の将軍が四柱に選ばれることはないという見方もあるが、レ・クアン・ダオ(Lê Quang Đạo)が国会議長(1987〜92年)に、レ・ドゥック・アイン(Lê Đức Anh)が国家主席(1992〜1997年)に、そしてレ・カ・フュー(Lê Khả Phiêu)が書記長(1997〜2001年)を務めた前例はある。
しかし軍出身で最後の四柱はフュー書記長を最後に23年間も例が無く、仮にクオン氏が国家主席に選ばれれば大きな時代の変化であると捉えられるだろう。

ラム国家主席としての最後の仕事

ここに来てラム書記長は10月に開催される第8回通常会議まで国家主席の兼任を続けるのではないかとの見方が強くなってきている。
その理由として、9月24日から国連総会で一般討論が始まるが、ラム書記長は国連総会に出席し、バイデン大統領との会談を計画していると言われているからだ。

国連総会の一般討論にベトナム代表として書記長が出席することは通常無く、チョン書記長が2020年に一般討論に出席した時は、国家主席を兼任していた。
ラム書記長もこの前例に倣い、国家主席として国連総会に出席するのではないかと見られている。

またバイデン大統領と会談するならば、ホワイトハウスに招くにあたって共産党の書記長であるよりも、国家元首である国家主席としての方が穏当である。
2015年にチョン書記長が訪米してオバマ大統領と会談した時の前例があるものの、アメリカ側は国家間での会談を好むであろう。

ラム書記長は3ヶ月前まではただの公安大臣であったため、国際的な知名度はかなり低い。
国家主席としての立場を最大限活用した後に、書記長に専任することになるのではないだろうか。
さてこの読みやいかに。

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