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ベトナムは公安支配が進んでいるのか

2024年7月下旬〜8月上旬はチョン前書記長が亡くなり、ラム国家主席が新書記長に就任するなど、ベトナムの政局が大きく動いた1ヶ月であった。

政治局・書記局の補充人事

チョン書記長が亡くなったため、欠員の出た政治局(Bộ Chính trị)の補充人事が8月16日に行われた。
政治局に新任されたのは公安大臣のルオン・タム・クアン(Lương Tam Quang)だが、クアン氏はラム書記長の後任として6月16日公安大臣となったばかりであった。

また書記局(Ban Bí thư)でも3名の補充人事が行われた。

党中央事務局長のグエン・ズイ・ゴック(Nguyễn Duy Ngọc)はラム書記長やクアン公安相と同じく人民公安の出身である。

書記局員に新任された残り2人は、人民軍政治総局長のチン・ヴァン・クエット(Trịnh Văn Quyết)と最高人民検察院長官のレ・ミン・チ(Lê Minh Trí)である。

この補充人事により政治局員15名のうち5名が公安出身(ラム書記長、チン首相、チャック党中央内務委員長、ビン最高人民法院長官、クアン公安相)、そして政治局員を除いた書記局員4名のうち1名が公安出身ということになる。
現在の第13期中央委員会が始まった2021年当時、公安出身の党指導部はチン首相とラム公安相(当時)、チャック党中央内務委員長、ビン最高人民法院長官の4名だけであったことを考えると、公安支配の色合いが強まってきたと言われても当然である。

プロセス軽視の政治局人事

公安支配という分かりやすい批判とは別に、人事プロセスに関する批判がBBCで指摘されている。

今回政治局員に新任されたクアン公安相は、第13期中央委員会(2021〜26年)において初めて中央委員(Ủy viên Trung ương)に選ばれた。
この中央委員から政権幹部である政治局員になるためには、少なくとも1期5年以上中央委員会の正委員を務めなければならない。

45歳の若さで政治局員に任命されたトゥオン前国家主席も中央委員会の正委員を1期5年を務めてから政治局員になっている(補欠委員も含めると2期10年)。
にも関わらずクアン公安相は中央委員として1期目の途中で政治局員となったわけだ。

僅か3年半のうちに7名の政治局員が失脚し、彼らの粛清を進めた張本人であるチョン書記長が亡くなってしまったため、異例の昇格人事が必要になったのであろう。
とはいえ2期目以上務めている中央委員は100名ほどおり、この昇格人事は公安支配と共に恨みを買うことになりかねない。


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