『アクターズ・スタジオ』ハリウッドスターの本音
NHKやスターチャンネルでかつて放送していた『アクターズ・スタジオ・インタビュー』。
俳優の本音を引き出すインタビューに定評がありました。
名物司会者だったジェームズ・リプトンさんは2020年3月2日、すでにお亡くなりになっています。
『アクターズ・スタジオ・インタビュー』
あまり本音を話さない俳優でさえ、涙を流すほど熱くなることがある番組です。
その秘密は観客にあります。
このインタビューはニューヨークにある俳優養成学校「アクターズ・スタジオ」の授業の一環として行われ、スタジオで観覧しているのは俳優志望の生徒たちです。
原題は『Inside the Actors Studio』。アクターズ・スタジオの授業を覗いてみよう、という意味合いで「Inside」という言葉が使われています。
ジェームズ・リプトン
番組がはじまった1994年から2018年まで司会をしていたのがジェームズ・リプトンです。エピソード数は 270 を超えています。
「アクターズ・スタジオ」では、副学長、演技指導者、演出家として活動していました。ジェームズ・リプトンは、同じくニューヨークにあるペース大学の演劇科の学部長もしていました。
スタニスラフスキー・システム
アクターズ・スタジオは「スタニスラフスキー・システム」という演技法を教えてくれる学校です。
ざっくり説明すると人物像を深く作り込む演技法です。
綿密な下調べ
ジェームズ・リプトンが学校運営と同時におこなっていたのが、TVショーの『アクターズ・スタジオ・インタビュー』です。
エミー賞に20回以上ノミネートされ、2013年に受賞しています。100以上の国で放送され、日本でもNHKを中心に放送されていました。
ジェームズ・リプトンが亡くなったあとも断続的ですが続いていて、2019年の第23シーズンまで放送されています。
とにかくジェームズ・リプトンの下調べが念入りです。ゲストの出演作品を全部みることはもちろん、俳優の細部まで調べ上げてからインタビューを行います。
だからこそいつもとは違う俳優の一面がみられます。
生き様を見る
『アクターズ・スタジオ』は映画ファンだけでなく、誰がみても楽しめる番組です。俳優や監督たちは自分の俳優論を語りますが、同時に生き様を語ります。
俳優の人生は順風満帆とはいきません。成功までに浮き沈みがあります。それを語ってくれるのがこの番組です。
司会のジェームズ・リプトン、ゲスト、そして聴講する学生。全員が情熱をもっています。
めったにテレビのインタビューに出ないような俳優が登場することもある番組でした。ゲストがジェームズ・リプトンや学生たちに心を開き、ざっくばらんにいろんな話をするとてもいい番組です。
残り時間はキープするべき?
意見が分かれる部分があるとすれば、ジェームズ・リプトンはときどき話をバッサリ切って次の質問にいってしまいます。
ジェームズ・リプトンは自分で用意した質問はできるだけ聞きたいタイプです。授業の一環かつ、制限時間があるのでしょうがない部分もあります。ですが、インタビューではゲストがノってくることもあります。「その話もっと聞きたい!!」と思うこともあったので時々残念に思うことがありました。
笑福亭鶴瓶の『A-Studio』
日本で放送されている笑福亭鶴瓶さんによる『A-Studio』。『アクターズ・スタジオ』を参考にしている、と僕は勝手に思っています。
番組名にオマージュ感があります。『A-Studio』はもう少しゴシップ的な面が強いですが、笑福亭鶴瓶さんが自ら調べるという点や、ミュージシャンが来るときには鶴瓶さんが曲を全部聞いている、といった点はジェームズ・リプトンと同じです。
神回
多くの人がベストエピソードにあげるのが「ブラッドリー・クーパー」の回だと思います。
実は、ブラッドリー・クーパーは「アクターズ・スタジオ」の卒業生です。卒業生の中ではじめて『アクターズ・スタジオ』に出演しました。
かつてショーン・ペンが登場した回。若きブラッドリー・クーパーが質問している様子が映像に残っています。
ABCニュースの映像より、0:14 ~ 0:36 です。
サービス精神旺盛なブラッドリー・クーパー。ご両親が観覧する中、涙する場面もあり、かなり感動的な回でした。
ブラッドリー・クーパーはよくお母さんとアカデミー賞に出席しています。好感度上がりまくりです。
ちなみに日本での放送の最終回はこのブラッドリー・クーパーでした。
マギー・スミス
僕が個人的に印象に残っているのはマギー・スミスの回です。かなり前に見たので正確ではないのですがご紹介します。
ある舞台公演のことを話したエピソード。出演者の数はそう多くない舞台。
出演者の多くが二日酔いの状態で舞台をしていたそう……。
すると一番前の観客がずっと仏頂面。
その顔を見た出演者たちは反省し、休憩中に絶対にあの観客を喜ばせよう、と誓い合う。
休憩が開け、第2幕。
すると既にその観客はいなくなっていた。
一度失った観客がその劇場に戻ってくることはない。
ストイックな印象のあるマギー・スミスと全然つながらず、かなり意外なエピソードでした。ふつうは隠したいエピソードなのに、それを明かすマギー・スミスにもびっくりし、すごく印象に残っています。
出演者の行動としては最低ですが、それをインタビューで語ることや、話し方、振る舞い。よく覚えています。
ダンサー人生の中でときどき頭に浮かんでくることがあるくらい、胸に刻まれたエピソードでした。