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舞台OTになれんじゃね?

こんにちは。ダンサブルOTの小林三悠です。生理学実習を重ねていて、感想がいろいろ出てきたのでnoteします。感想、ご意見、こんな未来になったらいいねーを一緒に話せたら嬉しいです。

今回、学校で運動負荷による心拍数と血圧の変化を測定、記録、分析したうえで、再度、自律神経やその他生理現象について振り返り、臨床での意義を考えた。(内容に関心のある人は、文章下を見てね)

実習を通じて、リハビリテーションを行いながら同時に患者の神経系の働きを確認する術を得た気がしている。私は、これまでに重心児(者)や知的障害のある方と芸術文化事業に携わってきた。その際に、学んだことは、患者や施設利用者は、言葉で自身の感情や体調を言葉で支援者や介助者に的確に伝えることが難しいということである。そういった状況においても、介助者たちは、顔色や口数、排便や食事はいつも通り行えたか等家族から聞き取ることによって介入する日の体調や異変に気付こうとしていた。
以下の例は、障がい者芸術文化支援事業を行う仲間の現場でおこったことであるが、障がい者と共に舞台を作り上げるプロジェクトにおいて当日の参加者の異変に支援者の何人か気付いていたそうだ。結果として、利用者はいつもと異なる環境において緊張しているだけだろう、という判断をし、一同本番に踏み切ったことがあったそうだ。その後の様子を振り返る場面で、利用者は、実は、舞台上で小さなてんかん発作を起こしていたという事例を耳にしたことがあった。大事には至らなかったそうだが、ひやっとする事例である。発作の種類や病歴にもよるが、舞台上で意識消失していてもおかしくない状態であったかもしれないと思うと現場に医療者も同席していれば別の対処があったのではないかと考えさせられる。

 患者本人の神経系が正常に働いているのか、その日の活動を進めてよいかの判断は、顔色や家族からの申し送りを確認するのみでは不十分であるかもしれないと今回の実習を通じて考えるようになった。先ほどの例においても、本番に踏み切る前に簡単な運動負荷を行い、5分程度モニタリングすることによって、生理的に利用者の身体に何が起こっているのか理解する手立てを得ることができ、プログラムの微調整や別の判断を仰げたかもしれない。

 これからは、舞台で踊っていたことのあるリハビリ専門家として患者と携わる中で、障害のある患者や術後や認知に課題のある患者で必ずしも言葉を通じて体調を上手く我々に伝えることが容易でない状況が出てくると思う。今回の実習のように実際にリハビリをしながらモニタリングできる術を身に着けておければ患者本人の言葉のみで状況を判断し、不安材料を残しながら、作業やリハに踏み切らなくてもよくなり、しかも異変に気づけたらプログラム変更を検討する基準とすることも可能だ。現場でも取り入れられるようにしっかりと技術を身につけておきたい。

余談だが、能楽を習っていた時にこんなことを聞いたことがある。舞台上で演者が亡くなったとき亡骸を舞台から送り出す専用の出口があることを。パフォーマにとって舞台上で最期をおくれたら。。。自分なら少しあこがれてします。いずれにせよ、患者が舞台に立ちたいと言っているのであれば、舞台袖、または舞台上に黒子にでもなって、心拍でも血圧でも測りながら、まだいける、おーーーーーどってこーーーーーーい!!!!!(踊ってこい)と叫びたい。そんな舞台人を支える人になってたいな。私は。

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目的
運動負荷により血圧・心拍数が神経性に調整される仕組みを考察する
方法
道具:血圧計、聴診器、ストップウォッチ
対象者:作業療法学科夜間部1年(女性3名)
測定手段:
1) 座位にて安静時の最高血圧、最低血圧、15秒間の脈拍数を測定する
2) 被験者は膝の屈伸運動を30秒間行う。運動終了後、即座に座位安静の姿勢をとり、運動直後の血圧・脈拍を測定、その後1,2,3,4,5分後の両測定を継続する。
3) 被験者3名の血圧、脈数の平均値を計算し、グラフを作成する。安静時と運動直後の血圧と脈拍の変化を考察する。
結果
最高血圧について、安静時は、最高血圧97、運動直後は最高血圧106と上昇した。直後、1分後に上昇した後、2分後に極度に下降し、3,4,5分で最高血圧値と安静時のちょうど間ほどの102‐103の数値に落ち着いた。
最低血圧について、安静時には、最低血圧は83であった。運動直後に81と若干の下降が見られた。1分後に極度に下降し、2分後には再度一気に上昇した後は、3分後から安静時の数値よりむしろ20余り60台となり5分後まで60台を継続した。
脈拍においては、安静時77回に対し、運動直後は、109回と急上昇した。運動直後に一気に回数の増加をみせたが、1分後には77とほぼ安静値と変わらない回数へと回復し、2分後には、安静時と同数回に戻った。その後は5分後まで、微細なアップダウンを記録したが、徐々に安静時の数値へ近づいていき、5分後測定では安静時と+1回数へと落ち着いた。


 

考察
運動負荷により血圧・心拍数がどのように神経性に調整されるかについての考察を行う。運動後、最高血圧は安静時から運動直後に上昇し、その後急激な変動を経て、安静時と運動直後の間の値に落ち着いた。これは運動による一時的な血流量増加とその後の神経性調整によるものと考えられる。最低血圧も同様に、運動直後には若干の下降が見られ、その後急激な変動を経て、安静時より低い値に安定しました。これは、運動に伴う血管拡張と神経性調整の影響を反映していると考えられる。
脈拍数については、運動直後に急上昇し、短時間で安静時の数値に回復した。この現象は、運動による心拍数の急激な増加と、その後の神経性調整による迅速な回復を示している。
全体として、運動負荷により血圧・心拍数が神経性に調整されるメカニズムは、運動による一時的な変化に対して迅速かつ適切に調整されることが確認された。運動の負荷をかけながら、脈拍と血圧を測定することによって被験者の自律神経の働きの調整が正常に行われているかを確認できる検査であることを確認できた。
(臨床的な意義)
以下にこの実験の目的と結果から以下のリハビリテーションにおける臨床的意義について述べる。主たる意義として、運動負荷への即時対応についてだ。運動によって血圧と心拍数が迅速に変動し、その後すぐに安静時の値に回復することから、リハビリテーションにおいて運動負荷を適切に調整することで、患者の心血管系の反応を安全にモニタリングし、効果的な運動プログラムを設計するための基礎的な検査になると考える。
第一に、神経性調整の理解についてだ。 血圧と心拍数の変動は神経系の調整機能に依存しているため、この理解を深めることで、リハビリテーションにおいて特定の神経系疾患や障害に対する介入方法を開発・改善することを可能にする。
第二に、適切な運動強度の設定についてだ。 この実験結果から、適切な運動強度を設定することによって、患者が安全かつ効果的にリハビリテーションを進められるようになると考える。特に、高齢者や心血管疾患を抱える患者に対して、過度の運動負荷を避けつつ、適切な負荷を提供するためのガイドラインとして活用でるであろう。
 最後に、リアルタイムのバイタルサインのモニタリングへの可能性についてだ。運動後のバイタルサイン(血圧、心拍数)の変動をリアルタイムでモニタリングすることによって、患者の反応を即座に評価し、リハビリテーションの進行状況や効果を判断することが可能となる。
 この実験の結果を基に、リハビリテーションにおいて安全かつ効果的な運動プログラムを策定し、患者の健康状態を向上させるための臨床的意義を示せたと考える。
設問に対する解答
Q:運動負荷による最高血圧、最低血圧および心拍数の変化は、どのような仕組みで起こるか。
A: 運動負荷による最高血圧(収縮期血圧)、最低血圧(拡張期血圧)、および心拍数の変化は、身体が運動に対応するために行う一連の複雑な生理的メカニズムによって引き起こされると考えられる。
 
まず、心拍数の変化については、交感神経系の活性化が挙げられる。
運動を開始すると、交感神経系が活性化され、心拍数が上昇する。これは、体が運動に必要な酸素と栄養を供給するための反応と考えられる。交感神経系は、アドレナリンやノルアドレナリンを分泌し、これが心臓のβ1受容体に作用して心拍数を増加させられ、迷走神経の抑制が起こると考えられる。同時に、副交感神経系(特に迷走神経)の活動が抑制され、これにより心拍数が減少しないようになる。
血圧の変化については、どうだろうか。収縮期血圧(最高血圧)の変化については、運動中、心臓はより強く収縮し、心拍出量が増加する。これにより、収縮期血圧の上昇が起こる。その結果、筋肉への血流が増加し、酸素と栄養の供給が促進されることになる。
拡張期血圧(最低血圧)の変化については、運動中、末梢血管が拡張し、血液の流れがスムーズになる。運動パフォーマンスが向上し、疲労を軽減する役割を果たしている。これにより、拡張期血圧は比較的安定するが、激しい運動では若干の変化が見られることがある。一方で、運動時には、酸素供給とエネルギー消費がおき、運動中の酸素消費量とエネルギー代謝の増加が生じる。これにより、骨格筋血管は代謝物などにより拡張を起こすこととなり、この拡張により末梢血管抵抗は低下し、最低血圧は、最高血圧に比べてさほど変化しないことになる。(実習での測定も同じような結果となった。)
最後に、総合的な調整が行われると考えられる。
例えば、循環中枢の役割である。視床下部や延髄にある循環中枢が、交感神経系と副交感神経系のバランスを調整し、心拍数と血圧の適切な変化を誘導する。
よって、ホルモンの分泌を促される。アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンが分泌され、これらが心拍数と血圧の調整に寄与すると考えられる。
このように、運動負荷による心拍数と血圧の変化は、体が効率的に運動に適応するための複雑な生理的反応を起こしていると考えられる。

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