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走馬灯には出ない日 2024.11.14

今日は細かな出来事が沢山あったね、死ぬ時に思い出すかと言われると思い出せないんだけど、今日を生きる私にとってはかなり印象に残る日だった。

私は目を覚ました瞬間に違和を感じた。どうやら寝違えてしまったようで、首が動かないとは言わないけれど、動かしたくは無いくらいの違和を抱えていた。そして今日は大学のテストの日。前日も夜中までパソコンで日々の課題の模範解答を追っていた。
そんな無理もあってか、今日1日首固定生活を余儀なくされた。
そしていつもだと私は朝風呂に入るのだが、(なぜなら私は怠惰で風呂を先延ばしにしてしまう。)テストに不安があったので、テスト勉強の続きをすることにした。
とは言っても当日の朝にするテスト勉強というのは、ただの確認作業、もっと言うと、怒りとか祈りの方が近い。私自身が如何にテストという目標に対し誠実に挑むことが出来なかったか、を確認する時間である。その時に私はまるで邪眼が解放されることを信じてやまない厨二病のように、私の秘められた勉学の才能が突然開かれることを望むばかりなのである。
ギリギリまで勉強をした後、大学へ向かう。
大学のセブンでいつもの「ポテトピザパン」を手に取り、レジに並ぶ愚民を見下しながらセルフレジで颯爽とPayPayと轟かせ店を去る。「ポテトピザパン」は100円そこらで優越感を味わせてくれる。
そしてそこからのテストはお察しで、90分間己を責めるのみの時間である。この時間だけは誰にも負けないくらい後悔している。この時間だけは。後悔先に立たずとはよく言ったものだが、私に言わせると後悔は後にも立たない。後悔するようなことは大抵繰り返し失敗していることで、失敗の繰り返しというのは適切な後悔が出来ていないから起こることである。

退屈ないつもの大学の授業を終えて、ウキウキで家へ帰る。今日は大好きなカネコアヤノのライブがある日。数時間前までテストで鬱屈として、生活全てがテスト用紙のように白黒に見えていたのに、今となっては4Kのテレビくらい全てが輝いて見える。
バスに電車に乗り継いで会場へ向かった。途中で電子チケットを確認してみると座席は「C列12番」と表示され、これってもしかして、前から三列目ってこと!?!とワクワクでニコニコでキラキラな気持ちになった。
会場に着いた頃にちょうど開場時間になっていた。本当はライブ前にご飯を食べるつもりだったのだが、なんとなくそのまま入場してしまった。迷いなくグッズ販売の列に並び、長袖を買った。フロアマップとチケットを見比べて自分の席を探す。予想通り席はこれ以上なく良いところで、1列目よりもむしろ首の角度もよく、本当に最高なのでは!?と思った。ステージから見て少し右寄りの席だったがこれもむしろ中央より良いと言える。なぜなら、ギターを弾いたことがある人なら分かるかもしれないが、ギターというのは体に対して右斜めに構えるので、むしろ真ん中より正面とも言える。そんな早口を心の中で唱えて、自身の席を特等席に仕立て上げる。人生で起こる大抵のことは捉え方次第でしかない。人はこれまでも神からの試練だとかめちゃくちゃなことを言って現実を歪めてきた。今回は無茶な現実改変をしなくて助かった。良い席を与えてくれてありがとう!神!
そして会場が暗くなり、いよいよ始まるという期待のようなものが数百人から発せられているのが私にもわかった。私は右から出てくるのか、左から出てくるのかそんなことばかり気にしていた。
ライブが始まってからはあまり覚えていない。私は感情が高ぶるとどうも記憶が曖昧になってしまう。
もっと言うと他者から自分に向けられた感情の起こりというのは私には少し刺激が強すぎて、普段より強固に自分と周りの壁を感じてしまう。だけどこれが気持ちいいし、特にカネコアヤノは私にこういう種類の気持ちよさを与えてくれる。彼女はライブであまり曲以外で話すことはなく、それが一方的なものであると感じさせてくれる。これがいいと思うか悪いと思うかは人によると思うのだが、相手との間により強く壁を作りそれをより近くに擦り寄せる。そういう種類のエンタメだなと私は思う。特に今回の弾き語り形式のライブでは、まるでカネコアヤノが部屋で1人で自分のために歌っているかのように見えた。本当はそれでいいはずだ。歌を歌う人は自分が救われるために歌を歌うし、歌を聞く人は自分が救われたいと思って歌を聞く、それでいいはず。

その後腹を空かしたまま私はLUUPに乗り、以前から気になっていた無人古着屋に行った。道中でいい感じのお店があれば入ってなにか食べようと思っていたけれど思ったより街が栄えておらず、古着屋に到着してしまった。
古着屋には壁一面にかけられた私にはどう価値があるのか分からない服たちと、乱雑にカゴに詰められた二着で千円の服たちがあった。私は服、ファッションなどに興味があるが、服屋の店員という人種に苦手意識があり、イマイチ気持ちよく買い物ができない。だが、無人となれば独壇場。私は砂場で遊ぶ子供のように服の山をかき分けていた。中から色違いの同じデザインの服が出てきたりして、それを友達でLINEで報告して2人で同じ服を買おうなどと話していた。結局その服は、間違ったカゴに入れられたもっと高い服だったから買わなかった。少しムカついた。何も買わないのもわざわざ来て癪だしなーと思って2000円の手提げバックを買った。

帰り道は歩いてみた、LUUPで素早く通り過ぎた道にも見逃していただけで美味しそうなお店があるかもしれない!と思った。もしかしたらライブ終わりのカネコアヤノが飯食ってるとこ見れるかも!とか無駄な妄想もした。結局お目にかかる飯屋はなかった。人生はこんなもんだ。いくら好きな音楽を聞いて人生が変わったような気がしても、とんでもない幸運に出くわしたりはしない。人生が変わるような気がするだけだ。
ライブとの落差を感じて、少し悲しくなった。そして何も食べずに電車に乗った。

PS.写真は歩いてる途中で見つけた、エビフライ屋さんの光。

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