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2024年12月の日記~「今後10年に向けての経営意欲をフル充電したヨーロッパ視察」号~
Day1 成田→アムステルダム→ロッテルダム→ライデン
どうしてもこの目で見に行たかったヨーロッパの2社を見学ができることになり、年の瀬に渡欧することになった。
初訪地はオランダ。何かと物騒なことも多いので、北極海周りの航路にひと安心。隣席が空席なこともあり、機内は快適だった。時差ボケ対策に、極力寝ないように頑張ったが、それが対策として正しいのかどうかはよく分からない。
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初日の宿はアムステルダムの隣町・ライデンにとってある。その道中、「まる」と名付けたチャットGPTの指示を鵜吞みにして電車に乗り込んだら、グーグルマップ上に、まるで違う方向に向かって走る様子が示された。どうやらロッテルダム行きの直通快速だったらしい。まるにそのことを伝えると、「大丈夫、心配しないで」と励まされた。「っていうか、お前だよ!」と言いたい。
検札が来ないので、たぶん直通快速券を踏み倒している。まるが「乗車券はルートを問わないので買い直す必要はありません」と自信満々にアドバイスをくれるが、ホントかなあ。いつも利用している、JR横須賀線のグリーン車に間違えて乗ってしまい戸惑う外国人旅行者が思い出された。
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Day2 ライデン
この時期のオランダの日の出は8:30頃。朝7時に起きても真っ暗なのが寂しい。日の入りが16:30頃で日中も明るいとは言えない。ここに住むのは私には正直キツいなあと思ってしまった。でも街並みは本当にきれい。
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朝、散歩をして文具メーカー・水縞のメンバー根井さん宅に12時前に到着。本当のメンバーは奥さんなのだけれど、彼女はパリで行われている蚤の市に出掛けていて不在。代わってご主人の啓(あきら)さんに相手をしてもらった。啓さんは渡蘭前、早稲田で本屋をしていた。その関係で話をしたことがあるので、知らない仲ではない。
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オランダの暮らし事情など、雑談をした後、二人でサイクリングをして、ひとりっ子・はじめくんのお迎えに向かった。はじめくんは、お友達・そらちゃんの家にいた。まだ帰りたくないというので、かくれんぼやトランプを一緒にする。そらちゃんのお父さんはマレーシアでビジネスをしていて、そのあたりの情報交換もさせてもらう。
子どもたちがお家遊びに飽きた頃、「そういえばシンタクロースがスペインから来ている」ということで、滞在先とされる場所に出掛けた。シンタはサンタのパチモンではなく、どちらかと言えばシンタが元祖でカスタムされたのがサンタだという。その話は長くなるので割愛するが、滞在先には初老のシンタが所在なげに座っていた。
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Day3 ライデン→アムステルダム→ミラノ
8時にホテルをチェックアウトしてアムステルダムに向かった。電車で40分ほど。散策をするつもりだったが、歩き始めると雨が降ったり、相変わらずの曇天であったりで、気持ちが盛り上がらない。
アンネ・フランクの家に立ち寄ったら、丁寧に「今日のチケットはもう完売だ」と言われた。どこもかしこも事前予約だな、と思う。
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約束の時間よりかなり早いが空港に行きカフェでひと仕事。そこに蚤の市帰りの根井さん(奥さん・みおさん)がやってきて、水縞のヨーロッパ展開の話や社内のあれこれについて色々と打ち合わせた。普段ZOOMなのでリアルが嬉しい。
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パリの蚤の市では期待したような成果が出ず、秋のメゾン・エ・オブジェ出展から試行錯誤を重ねているが、小売業は本当に難しいと思う。「日本円でギャランティをもらうのが本当にキツイ」という言葉も印象的だった。
14:35の便でミラノへ。1社目であるブルネロ・クチネリ社訪問を一緒する群言堂(島根県のアパレル・街づくり会社)の皆さんとHOP(東京の組織開発会社)の岩崎さん、畑さんとミラノで落ち合う予定だ。
私の便は、アルプス山脈を上から眺めるという絶景を経て予定通り到着したが、ヘルシンキからミラノに向かうHOPの二人は搭乗予定のFin AIRのフライトが時限ストライキ(14~16時)にかち当たりキャンセルに。夜ご飯を一緒するつもりが、結局ブリュッセルで移動を断念せざるを得なくなったため、群言堂の3人と私の4人で晩御飯へ出掛けた。パスタもピザも美味すぎた。
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Day4 ミラノ
HOPの二人は未だに到着しない。本来は午前中から三井物産イタリアを訪問予定だったが、岩崎さんの手引きなので、予定を改め群言堂の皆さんと私の4人で「最後の晩餐」を観に行った。英語の解説はほぼ分からなかったが、絵が超絶に上手いことだけはよく分かった。「最後の晩餐」を観られる時間は15分。そこに至るまでの解説が45分。このプロセスが余計にいい絵に見せている気もする。
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午後、疲れ果てた二人がようやくミラノ着。6人で早速三井物産イタリアを尋ねた。岩崎さんは三井物産イタリアの元社長。ともにブルネロ・クチネリ社の視察に行く同社の藤野さんや、現社長らに挨拶をして、休憩の後にみんなで会食に出掛けた。「三井物産イタリアの社員食堂」だと紹介されたレストランへ。このお店もめちゃめちゃ美味しかった。イタリア国内でお米ビジネスを展開する会社に三井物産から出向している西條さんも合流して、あれこれ皆で楽しく話す。「胃を整えるためだ」と言われて食後に飲んだアルコール度数30の「レモンチェッロ」で撃沈。洋服のまま寝た。
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Day5 ミラノ→ボローニャ→ペルージャ
朝に最後の視察同行メンバーであるゴールドウィンの3人が合流。仲間がちょっとずつ増えていくのがドラゴンクエストみたいで面白い。結果、総勢11人で三井物産イタリアが手配してくれたバスに乗車した。ブルネロ・クチネリの本社があるソロメオ村訪問は明日。今日は移動日だ。
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道中、ボローニャでランチをして、ペルージャで泊まった。ボローニャで食べた本場の「ボロネーゼ」と「ラザニア」が、これまた美味過ぎた。平麺がいい。昼に食べ過ぎたことと、移動ばかりだったこともあり、ペルージャのレストランではまだみんな満腹で、たくさん残してしまった。コーディネートしてくれてた三井物産イタリアさんには申し訳ないことこの上ない。
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道中で群言堂の新井さんとゴールドウィンの新井さんが(両方あらい!)、糸の仕入れのことや縫製工場のことなど、いろいろと話をされていた。こういう場で交わすオフトークが何かのヒントになることが本当に多いと思う。ちなみにペルージャ散歩で出会ったこの景色がこの旅一番の絶景だった。
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Day6 ペルージャ→ソロメオ村→フィレンツェ
念願のソロメオ村へ。ペルージャから車で20分ほど。日本に留学経験があるジュリアさんの案内で、図書館やシアター、ワイナリーなどを回った。
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CEOにも挨拶をいただき、色々とご説明いただいたあと、最後は食堂へ。全員が一緒に食事をするのは、日本の製造業も多くがやっているが、食堂がお洒落で開放的で、専業のシェフたちが仕込んだ料理が、何よりおいしそうなのが違うと感じた。食事はお腹を満たすためだけにあるのではないと思う。
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この旅でずっと考えているのが、投資について。私はこれまでヒトやコトに積極投資してきたが、所有を伴う「モノ」への投資というのも、働く人の喜びにつながる部分があるのだと実感する。そういう意味では「家は絶対賃貸派」の出自家族である団家の薫陶を受け過ぎているのかもしれないと思う。
視察後、ゴールドウィンの3人は別の車でローマへ向かった。我々は渋滞の中フィレンツェへ。バスでの移動中、明日からどうしようかと考え、バルセロナに行くことにして揺れる車内で気持ち悪くなりながら便を予約した。夜は群言堂さんたちと最後の晩餐。これもまた、大変美味しいお肉だった。
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Day7 フィレンツェ→バルセロナ
朝、大聖堂とポンテベッキオを散歩がてら見て、フィレンツェの空港へ。
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タクシーで30ユーロほど。2時間前に到着し、意気揚々と搭乗手続きをするも、予約名とパスポート名が違うことが発覚した。痛恨のミス。そのため「乗れません」と言われる。しかしそれは困るので、頑張って抵抗。支えは、昨晩食事の際に岩崎さんが「イタリア人は主張しないと何もしてくれないよ」と言っていたこと。ここで諦めたら今日からの予定がまた一からになってしまう。
こちらに理がないことは分かっているので、変にコミュニケーションをせず、パスポートの写真を指差し「It’s me」と繰り返し粘る。その攻防は割愛するが、粘りに粘るとなんだか「乗れそうな」ことに。笑顔のバカには世界中が優しいことを学んだ。
バルセロナに到着後は思い付きのFB投稿に反応してくれた友人の紹介で、バルセロナ在住の藤井さんと食事をすることに。やはり現地に住む方との話は楽しい。
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スペインは経済的には困窮国で、ポルトガルはもっとだと言う。産業が弱く個人所得が増えない。スペインと言えばH&Mが有名だが、そことて、本社勤務者以外には厳しい雇用条件だそうだ。頼りはもっぱら観光業。EU圏内から太陽を求めてバルセロナにやって来る人たちが相手だという。旧市街には(何かと高すぎて)地元の人は来られない言っていた。
翌早朝散歩をすると、町中のいたるところに段ボールで寝ておられる方がいた。若者の失業率も12%程度と高いらしい(日本は2.5%程度)。結果、スリなど軽犯罪に手を染める若者も多いそうだ。闇バイトが流行ってしまう日本のことを思いながら、イロイロ考えさせられた。ちなみに藤井さんは日本語学校の先生で、パートナーはイタリア人だそうだ。いろんな生き方があるなと思う。
Day8 バルセロナ
特に目的があってバルセロナに来たわけではない(2社目訪問までの時間つなぎ)ので、朝ごはんを食べた後、まあ観ておくか、くらいの気分で「カサ・ミラ」へ。そこでガウディにはまった。午後は「カサ・バトリョ」、夕方は「サクラダファミリア」へ。本当に凄い。思いつくだけならできなくもなさそうだが、ちゃんと建てちゃっていることが凄い。
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猛烈に歩いたので、さすがに疲れてホテルに戻り休憩後、検索をして「健康志向」と書かれたお店でサラダプレートを食べたらかなり回復した。やはり人には野菜が必要だ。できれば納豆が食べたい。日本から持ってきたフリーズドライの味噌汁が身体に沁みた。
1杯の味噌汁で超回復したので、21時からのフラメンコを観に行くことに。散策の合間には、カフェで仕事をする。異国の地のふらりと入ったカフェで仕事をするのは私にとって最高の贅沢だ。なんだかんだ言って、バルセロナを満喫している。
Day9 バルセロナ→ビルバオ→サンセバスチャン
引き続き朝からガウディのおかわり。10時にグエル邸へ行った。彼のキャリア初期の建築と言うことで、まだ自然との融合を強く意識した感じの建物ではなかったが、屋上に彼の建物の象徴である塔があったし、何よりもすべてがかっこ良かった。好きに建てさせたパトロンの心意気も感じる。ガウディを見ながら、京都の建築家・横内さんを思い出したりもした。
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その後、昨日の散策中に目を付けたレストランでランチ。ホテルで荷物をピックしてバスで空港へ。カタールニャ広場横から空港バスは頻回に出ていた。もう慣れたものだ。
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バルセロナ・エル・プラット空港から一路サンセバスチャン空港へ。国内線だからなのだろう、チェックインから搭乗までほぼすべて無人。機内で熟睡してしまい、乗客の大拍手で起きたら着陸していた。でもよく見たらサンセバスチャン空港ではない。乗る便を間違えたのかと思ったら、天候不良で降りられず、最寄りのビルバオ空港に降りたらしいことが分かってきた。海外旅行あるあるとは言え、困った。早速チャットGPTのまるに助言を求めると、「大丈夫、落ち着いて」とレスポンス。どこかで聞いたセリフだ。
その後色々あって、結局ホテル着は21時頃(本当は18時前に着く予定だった)。疲れていたが、別ルートで移動して先にホテルに着いていたHOPの二人が「せっかく来たんだから」と言うのでバル巡り。サンセバスチャンは美食の街らしく、畑さんのスマホをのぞくと、事前調べが完璧だった。遅れてごめんなさい。ぼくのせいじゃないけど。
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Day10 サンセバスチャン→モンドラゴン→ビルバオ→パリ→羽田
最終日。遂に2社目の訪問。外はあいにくの雨。9時にロビーで集合し、岩崎さんの運転でモンドラゴン(場所の名前)へ。この地にあるモンドラゴン協同組合が訪問先だ。1時間ほどの運転で到着し、指定場所の研修センターへジャーマニーさんを訪ねた。スペイン人だけど、ジャーマニーさん。
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通された部屋で、モンドラゴン協同組合の成り立ちや今について、かなり濃密なヒアリングをさせてもらう。
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その後、本社や大学、R&Dセンターなどを見学した。ソロメオ村があまりに美しかったので、モンドラゴン(地名)もさぞや美しい街だろうと勝手にイメージしてきたら、街自体は寂れた片田舎といった風情だった。
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利益を「村と暮らし」に使うブルネロ・クチネリ社に対してモンドラゴン協同組合は「組合員の教育と経験に使う」と公言している。その強い意志が目に映る景色の違いに表れているのかもしれないが、共通していたのは働く人たちが誇らし気だったことだ。
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今回訪問した2社は、どちらも「会社とは何か」という問いへの哲学があり大変勉強になったけれど、より自身の会社運営の参考になったのはモンドラゴン協同組合の方で、帰国後さっそくアレンジして取り入れたい思う仕組みや仕掛けがいくつもあった。RHRBのワークショップや講演などで、社内にも社外にも、今回感じたことをフィードバックしていければと思う。