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2024年9月の日記~「猫は約1万、小中高生は513。みんなの力で、限りなく0へ」号~
9月*日
世の中に「良い会社」がもっと増えればいいなと思っている。
良い会社というのは、当たり前だけど儲かる会社だけではない。もちろんそれも一つ「良い会社」の在り方だろうけれど、それだけではつまらない。
そんな色々な意味で「良い会社」にしたいという思いを抱えた人たちを応援するために始めたRHRBの活動。具体的には「自社に必要な変化を生みたい人を応援する」をテーマにゼミを始めた。題して「内側ゼミ」。
ゼミは全6回で構成されている(各回150分)。第一期の内側ゼミに参加してくれたのは、3社4名の方々。それぞれに、各社の経営及び経営企画的なポジションで働いている皆さんだった。
全6回を終えて今思うことは、迎える側一同、それなりに準備を重ねてきたものの、こちらが手渡せたヒントはそれほど大きくはなかったのではないか、ということ。でも、本気で「良い会社にしたい」と思う人たちは、そのボールを自分で何倍にも大きくできる、ということ。
いただく御礼と、こちらの「やれた感」のバランスが不釣り合いに感じていたりもする(終わりました報告がこちら)。
でも、逆よりずっといいなとも思う。こちらは十分なものを提供したつもりなのに、相手からのレスポンスが弱い場合、ともすれば「分かっていない」とか「やる気がない」とか、他責に逃げてしまいがち。
でもそうはならなかった。この感じは、経験的に言えば「やろうとしていることは当たっている」ということ。つまり、「会社」は今その在り方を問い直す局面にあるということなんだと思う。
9月*日
高校2年生の息子と二人旅に出掛けた。
行き先は京都。本人には当日まで言わなかったが(言っても盛り上がらないことが確実)、目的は鎌倉投信の受益者集会に参加すること。
鎌倉投信は「結2101」という投資信託商品を運用しているのだけれど、儲かりそうな会社に投資するのではなく、「未来に残したい、いい会社」を丁寧に目利きして選び、投資している。そのため、決して利回りがいいわけではないが、そのスタンスがいいと思っている人たちの応援を受けている。
受益者集会は年に1度開催されるのだけれど、鎌倉投信のスタンスを応援している人たちが集い、応援されている会社の方が話す、というのが基本構成。今年は京都国際会館で行われた。
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ぼくが息子を連れていきたいと思ったのは、これからの彼の時間やお金の使い方の発想に「投資」という面を意識してほしいと思ったから。高校2年生ともなると、大学進学の話が学内でも、友達の間でも出るようなのだけれど、放っておくと、大手塾が作った偏差値表と自分の学力の相関で行けそうな大学を見立ててしまう。そしてそれは普通のことなのだと思う。事実、私もそうだった。それしか知らなかったから。高校選びの延長で、そうするものだと思っていたから。
けれど、4年という長い時間を投資する先の見極め方として、果たしてそれでいいのかと思ってしまう。
「結2101」の投資先の社長が4人、あれこれと壇上で話をしてくれた。株主総会であるようなシャンシャン目的ではなく、問いによっては「ピー」が出るような個性的な話も多い。会場には投資先の方々の出展ブースもあり、各社の社員さんが色々話を聞かせてくれた。
息子の表面的な反応は「いろんな大人がおるんやな」くらいのものだが、前後に二人で話をしたことも含め、父としては十分にいい時間。「行けそうな大学に行くためだけの受験勉強を頑張るのだけは止めておけ」というところは、彼にもメリットがあるので響いていた気がする。
追伸1)写真は翌日、関西に住む息子にとってのじいさん(私の父・士郎さん)と三世代でジップラインをしたところ。77歳のジップライン、笑えた。写真の中身も、実父ライン。
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追伸2)フェイスブックとXにこの投稿をあげたところ、大変反響をいただいた。が、みんなが注目したのは、断然「実父ライン」のところ。
9月*日
理事をつとめる軽井沢風越学園の理事長・本城さん(愛称:慎さん)が「ちょっと話がある」と言って軽井沢から我が地元・鎌倉にやってきた。
こういうときの「ちょっと話がある」はロクなことがないと相場が決まっている。もしや、ぼくの禁断の不倫がバレたのかと心配したが、考えてみれば不倫などしていないので、それはない。
はたまた、昔の悪事のタレコミが匿名で学園に!とも思ったが、考えて見れば悪事らしい悪事はしていない。鼻クソを我武者羅にほじっていた時期があったくらいだから、それもない。
果たして慎さんの話は「これから風越学園をどういう形にしていこうか」という至極まっとうなものだった。
開学から4年。それなりに期待をいただける学校になってきた。その期待に応えるべく邁進するのか、それが自分の進みたい道なのか、邁進することで、広く言えば幼少中の学校教育全体のプラスに作用するのか。
正直、ぼくには大したことが言えないけれど、そういう問いを持ち続けることは大切だと、心から思う。
義務教育校の責任とは? そもそも学校とは何なのか? 未来に向けて、学校はどういう形で残していくべきなのか。ぼくも同じことを「会社」というフレームで考えているのだと思う。そんな風に、考える対象を持てていることは、幸せだ。
9月*日
仕事で、人口学がご専門の稲葉寿(いなば・ひさし)教授に話を聞いた。
日本の労働力不足をテーマにした冊子づくりをする中で「そもそも人口とは」という話を聞いておこうと思ったのだ。
日本は慢性的な労働力不足になると言われている。実際に、現時点でも人手不足を理由に閉店するお店や、営業時間が短くなるお店など、普通に見かけるようになった。
私が大好きだった前の家の近所(横浜市青葉区)にある超人気ケーキ店も、先日、人手不足を理由に生菓子をやめ、焼き菓子店になった(涙)。
リクルートは2040年に1,100万人の人出が不足するというレポートを出していて、本当にそうなったら絶望的だなと思うのだけれど、これは少々誇張が過ぎる気もする。
そもそも推計は「今のまま行けばこうなる」という成り行きの未来を見せるもので、そうなっては困ると警鐘を鳴らすべく作る(決して未来を言い当てるのが目的ではない)。ただ、そんな中、人口推計というものは、ほぼ間違えない。そこには、歴史が証明するメカニズムが色々とあるからで、中でも「人口転換理論」というものが面白かった。
人口転換理論は、大まかに言えば、「人口は前近代的な<①多産多死>の状況から、近代化が進むと、出生率が高止まりしたまま死亡率が低下する<②多産少死>の状態となり、やがて出生率も下がって出生と死亡の差がほぼなくなる<③少産少死>の状態に至る」という捉え方のこと。少産少死とは、言い換えると高齢化のことであり、日本は今、世界最先端のここにいる。
この流れは人類史上、必ずそうなるものらしく、人間ができるのは、せいぜい①から②、③に至る時間をどうコントロールするか程度の介入に留まるという。「人は必ず死ぬ」くらいの真理のようで、聞いていてなるほどの連続だった。面白がっている場合でもないのだけれど。
9月*日
猫の殺処分を0にするために頑張っている「ねこから目線。」の話題が、産経新聞の夕刊一面を飾った。
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夕刊とはいえ、一面である。
私の父・士郎さんの大学のゼミ生であったねこから目線。社長の小池が「助けてほしい」と言って来たのは約3年前。文字通り、猫に人生を捧げる小池は、盟友の梅本と二人、24時間365日体制で避妊手術を目的とした猫の捕獲と、捕獲した猫の保護活動に奔走していた。
最初はボランティアベースで始めた活動も、依頼者さんの理解を得て、少しずつお金をいただけるようになり、二人は、猫にまつわる仕事だけで、それなりに暮らせるようになっていた。それを聞き「すごいな、良かったやん!」と答えた私に「全然良くないんです」と答えた小池は「毎日すごく頑張っているのに殺処分は減らない。つまり、この頑張り方ではダメなんです」と嘆いた。「ダメなことは分かった。でもどうすればいいのかが分からない。だから助けてほしい」と。
改めて話を聞くと、日本の猫の殺処分を0にするには、ある程度の拠点数とスタッフ数がいることが分かった。「捕まえて、避妊手術をする。あるいは、保護をする」という営みは、DX化できないのだ。
「であれば、今は個人事業なところを会社にして、拠点と仲間を増やす必要がある。けれど、マネジメントもしないといけないし、お金もかかる。短期的には間違いなく二人の報酬は減るし、大変なことだらけだよ」と答えると「猫の殺処分が0になるなら、全然やりたいです」と返してきた。
あれから約3年。拠点は大阪、京都、姫路の3つになり、メンバーは20名近くになった。フランチャイズ方式を採用し、福岡久留米、沖縄、東京にも拠点がある。0への道は、確実に近づいている。
9月*日
浜松の児童相談所職員である早野さんの声掛けに、ホンブロックとして協力する形で始めた「じそう会議」。開催2回目のゲストは、大空小学校の初代校長・木村泰子さんにお願いした。
大空小学校は、大阪市住吉区にある公立小学校だが、子どもたちの半分近くを援助が必要な子どもや生活保護世帯が占めている。その教育スタイルは「みんなの学校」という名前でドキュメンタリー映画化されたことで広く知られることになった。
木村先生とは、これまでもニアミスしていたのだけれど、ちゃんとお話しをするのは初めて。色々と心を動かされる話が聞けたけれど、中でも一番心に残ったのは、木村さんが校長をしていた2006年開校からの9年間、職員にメンタルダウンする人はひとりも出なかったという話。それどころか、メンタル不調が理由で大空小学校に異動してきた先生たち3人も、投薬をやめ、元気になったのだそうだ。木村さんは、その要因を二つ挙げてくれた。
・ひとつは学級担任制を放棄したこと
・もうひとつは「子どもも大人も、人の力を活用する力を身に付ける学校」だから、職員も一人で抱え込んだりしなくなるから
二点目は「助けて!」と大きな声で言える力のことだと、私は思う。
木村さんは、子どもたちに「助けて!」と言える力を身に付けさせれば、年間500人を超える小・中・高生の自殺者は限りなく0人に近づけられると信じている。それと同じことは、学校に限らず、あらゆる会社やコミュニティにも当てはまると思った。