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【第二弾】忙し過ぎた2023年8月の日記に変えて

過日投稿した「忙し過ぎた2023年8月の日記に変えて」が思った以上にたくさんの人に読んでいただけたので、もうひとつ、「常にイノベーションが起こる組織をどう担保したか」についても、記しておこうと思う。

アソブロックは「事業を持たない」会社であることを志向してきた。普通は「利益を生む仕組み」をみんなで作ろうとするので、逆張りである。
それを可能にしたのは、自分で自分の給与を決める「報酬宣言制度」(下記エントリー参照)も一因だったが、より広く言えば「会社が続くことを必ずしも是としない」というメンバー全員の意識共有があった。

事業を持たないアソブロックは、それが故に、たくさんの「事業らしきもの」を生んだ。アイドルグループから組織コンサルティングまで、「一体何をやっているのか分からない」と度々言われたが、会社の存在意義を「人の成長プラットホーム」と定義し、会社の在り方自体にイノベーションを起こそう思っていた私たちにとっては、誉め言葉以外の何物でもなかった。

オペレーティブな業務で回っている組織に、どうすればイノベーティブなマインドが根付くのか

「働き方改革」が一般用語になり、「兼業」が市民権を得始めた頃からアソブロックには取材依頼や講演依頼がたくさん来るようになった。アソブロックは 、はるか昔から「兼業必須」の経営をしていたため、その様子を伺おうという狙いである。

アソブロックが「兼業必須」に舵を切ったのは、会社の存在意義を「人の成長支援プラットホーム」だと位置づけたことが大きい。すべての経営判断は、それが「社員を含めた関係する人たちにとって成長支援的であるかどうか」で決める。会社の中で、ある意味当然の業務とされるものも、ひとつひとつを検証し、成長支援的でないと思うものは止めていった。出社は自由とし、細かいものでは「電話を取る」のも止めた。

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人が成長するには 3 つの「きょう」が必要だと思う。
「熱狂」「逆境」「越境」の3つだ。
熱狂は文字通り、仕事に熱狂すること。逆境は少し背を伸ばしてがんばらないと乗り越えられない仕事をすること。越境は自組織以外で学ぶ場を持つことだが、兼業必須にするということは、全員に「越境」を担保できるということ。だから必須にした。

熱狂は、やりたいことをやらないと訪れないと思い、会社としては「なるべく再現性で稼がない」ことを志向した。「アソブロックには事業がありません」という形で意思表示していたが、再現性で稼がないということは、自ずとイノベーションが起こる。イノベーションは逆境のかたまりなので、結果的に「熱狂」と「逆境」はセットで訪れた。

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会社というものは雇用人数が増えれば増えるほど、再現性でベースの利益を稼ぎ、余剰部でイノベーションチームを組むというマネジメントをしがちだ。しかしこのやり方で会社にイノベーティブなマインドが根付くかというと、正直難しい面がある。

理由はいくつも挙げられるが、最たるものは、再現性チームがイノベーションチームの邪魔をするからだ。「それは本当にうまくいくんですか?」という再現性チームが発しがちな問いが、必要以上に力を持ってしまう。稼いでいるからだ。

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取材や講演では、そのことも理解した上で、「そんな中、オペレーティブな業務で回っている組織にどうすればイノベーティブなマインドを根付くのか」を聞かれることが多かった。この問いに対するもっとも簡単な答えは、「再現性で稼いでいる仕事を止めること」だ。

何かを始めるための第一歩は、何を止めるかを決めること。ちなみにアソブロックでは、稼ぎ方が見えてきた事業は子会社化して、その主翼を担ってきたメンバーが社長になるようにしていた。社長という新しいポジションが、「逆境」を担保してくれるからだ。そして、そうすることで常に本体は適度な貧乏を維持できた。だがそれも、社員の雇用継続や自身の生活のことを考えると難しいという人も多い。それもよく分かる。

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そんなときに、多少でも有効だと思うのは、自分のやりたい仕事や、ありたい姿からビジネスを起こす練習を繰り返すことだ。
「今ある仕事をどう大きくするか」
「今ある仕事の周辺をどう開拓していくか?」
は、多くの人が現状業務で嫌というほど考えている。それにより、生産性があがったり、売り上げがあがったりすることも多い。

ただ、それらの多くはオペレーションの改善であって、イノベーションではない。そうしたオペレーションの達人が、現在の多くの会社の経営陣や役職者に多いのもまた、組織にイノベーションが起こりにくい要因のひとつだ。

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「自分のやりたい仕事や、ありたい姿からビジネスモデルを立ててみよう」というと、多くの人がまず躓くのが「自分のやりたい仕事や、ありたい姿が見えない」ということだ。人によっては、そのことに戸惑う。そして、「そんなものが本当に必要ですか?」と言い出す人もいる。

「失敗したくない」「必ず成功するモデルを立てなければ!」といった、長年しみついた勤め人マインドが、自分の興味本位で動くことにストップをかけてしまう。実はその献身性も、イノベーションを妨げる要因になり得るのだが、一方で自分勝手な振る舞いをしたいわけでもなく、足がすくんでしまう。その結果、評論家でいるのが一番楽だし、稼いでいれば、当面文句は言われない。

その結果、
「会社の未来を考えるのは、経営陣の仕事。社会の未来を考えるのは、政治家の仕事。どっちも何をやっているんだ!」と言いながら酒を飲む毎日が待っているが、果たして本当にそれでいいのだろうか?
そのような自問自答を経て、最終的に、まず必要なのは「セルフイノベーション」だと気が付く。そして、それこそが「組織にイノベーティブなマインドを根付かせる」第一歩目となるのだと思う。