2022年4月の日記~息子と爺さん2泊3日の大冒険~
4月*日
「CODA~あいのうた~」がアカデミー作品賞を取ったが、ぼくはその昔、手話を習いに行っていたことがある。まだ20代だったと思う。どうにも英語は好きになれないが、扱える言語が増えるのは楽しいはずだと思う中で、「世界共通の言語があった、それは手話だ!」と思い、毎週通っていた。ところが、その初回に先の参加理由を自己紹介に添えて話したところ、「手話も国によって違います。ここで扱うのは日本語手話です。海外に行って、全然通用しないことはないですが、基本的に違うものです」と言われて驚いた。どうしてそんなややこしいことにするのかと。ちなみに「CODA~あいのうた~」はアメリカ手話の映画だ。
4月*日
サルビアで新しい人を迎えることになり、連日中途採用面接をした。最終的に一次選考を通過した12名の方にお会いしたが、みな「どう生きたいか」に向き合う人たちで、そのことが強く印象に残った。「そういう人が興味関心を持つ募集文だったから」というのも事実だろうが、最近各社で面接をしていると同じようなことを感じることが多い。ワークとライフの境界をあえて作らず、「よりよく生きる」の中に双方を位置付ける。稼ぐことに集中し過ぎるのではなく、「どう使うか」に注目する。応募企業の商売が市民社会や地球の中で「どういう意味を成しているか」を重視するなど。「今だけ・金だけ・自分だけ」に集約される個人主義への反発なのだとしたら、とてもいいことだと思う。
4月*日
長年アソブロックを共に経営してきたN木くんが今期で役員を退任・退社することになった。自分で生み出した事業を持って独立する。とてもめでたい。今や彼が生み出した事業による売り上げが、アソブロックの年売りの半分近くを占めるので、現経営陣(10月から引き継いだ新三役)からすると「どうすりゃいいんだ」的お祭り事態である。それもいい。まさしく成長支援に不可欠な「逆境」が生み出されようとしている。一人、ほくそ笑んでいます。みながこの逆境をバネにさらに大きな人物になりますように。
4月*日
「ねこから目線」は猫の殺処分ゼロを目標に掲げた会社だ。ここの経営支援をする中でFC展開もにらみ次々新規事業にトライしているのだが、その中のひとつとしてリリースした「迷子捜索」のサービスが当たりにあたっている。もともと知識を持った専業者が少ないブルーオーシャンだったのだが、サービスとしてきちんと切り出したのが良かった。ちなみに猫は警戒心が強く、一度でも捕獲機を使った捕獲に失敗すると、二度と捕獲機には「引っかからなく」なるので、猫の習性・特性をよく理解したスタッフが捕獲に当たる必要がある。ちなみに飼い猫が迷子になって帰ってこない場合、近くのどこかで新たな餌場を見つけたことを意味する(そうでなければ腹が減って帰ってくる)。街中でちらほら見かける「迷子猫の情報求ム」は、「見かけたということは、その近くに餌場を確保している」ことを意味する貴重な情報なのだ(猫は流浪の旅をする生き物ではない)。餌場に当たりがつけばカメラを設置して該当の猫が来ているかどうかを確認、迷子猫が特定できれば捕獲機を設置し捕獲、飼い主にお戻しするという流れだ。という訳で、猫の「この顔みたら110番」はとても貴重な情報なんですよ、という話でした。
4月*日
長男中3が私の父と2泊3日の二人旅に出かけた。父からすると孫との二人旅である。企画を思いついたのは冬になる前だったか、一応「受験」という一年を迎えるに当たり、父親として何かできないかと思ってのことだった。自身を振り返ってもそうだったが、息子もこれから、人生に何かしらの影響を与える決断機会が増えてくる。受験もその一つになる可能性がある。であればその前に、一人でも多くの「色んな大人」の意見を聞いておいてほしいと思った。ぼくは大学卒業後、サラリーマンになっていない。自称小説家を経てフリーのライターになり、社会の底辺で惨めな思いをしながらもがき苦しんだが、何より良かったのは、その時期に「色んな価値観を持った大人」に出会えたことだった。怪しい人、尊敬できる人、性的マイノリティな人、ぼくを利用しようとする人、あらゆる人の話を聞いた。それはきっと、普通の会社員になっていたら得にくい機会だったと思う。人は、色んな考えを聞くことで自分の考えが見えてくる面がある。幸い、彼の爺さん(私の父)は超おしゃべりである。誰かがどこかで言っていたような当たり前の意見も言わないので、このリソースを活かさない手はないと、企んだのであった。
4月*日
M不動産から声をかけられsalviaで移動販売のプレゼンを受けた。晴海を中心とする湾岸エリアはM不動産の開発地で、彼らが建てたタワマンが立ち並んでいるのだけれど、その中の公園や空きスペースを活用し「MIKKE!」という名で移動販売のプロデュースを始めている。そこに参加してみませんか?というお誘いだった。出展するブランドは、彼らが用意した幾サイズかの移動販売車の中からひとつを選び、商材を乗せ連続13日間、彼らが指示した場所で販売を行う。午前と午後で移動し1日2か所、都合26か所を回ることになる。彼らは住民情報をすべて把握しているので、それらを活用し、最も良き巡回プランを提案します、ということらしい。移動販売はECとリアルの中間点にあって、これから景色がどんどん変わっていくジャンルだとぼくは踏んでいる。以前は「=キッチンカー」という感じで、球場や催事の付き物だったが(そしてなぜか一台は必ずケバブというのが定番だった気がする)、ECじゃ物足りない、でもわざわざ買い物に遠出するのもメンドクサイ、という層を確実に巻き込んでいくと思う。
4月*日
新宿にあるオフィスには週に1度ほど車で行く。コロナに引っ越しが重なり、電車で通勤することは皆無になった。その帰路、深夜12時を超えたあたりであっただろうか、四谷署を過ぎたあたりで「前のランドクルーザーの方、止まってください」とパトカーに停止を命じられた。あらゆる違反が頭を駆け巡ったがどれも該当せず、言われるままに停車すると、どうやら職務質問のようだった。車から降りるように言われ、「車内を確認する」と命じられた。年配の男性警官と、若手警官が男女一人ずつ。主に年配警官が私に話しかけてくる。内容はどうでもいいことで、若手警官が車内捜索をする時間を稼いでいるようだ。許可もなくカバンから財布を取りだされ、カードの1枚1枚まで見分していく。そのうちに、テレビで見た記憶が頼りだが「どうやら薬物を疑われているんだな」と思い当たった。もちろんそんなものは出てこないのであるが、とにかくあらゆるものを見られ、あけられ、ガッカリされて。不愉快この上なかった。
4月*日
出版社ホンブロックの会員組織「ホンブロックラ部」の皆さんに向けたトークショーがZOOMを利用して行われた。家族の練習問題の著者・団士郎さんがゲストで編集部のはまぐち、やまさきがホスト。オンライン講座でもおなじみの柴崎が進行担当兼裏方という布陣だ。こう書くとホンブロックにはたくさんスタッフがいるように思われるかもしれないが、これで全てなのでオールスター感謝祭である。ぼくはここには直接参加しないことにしているので、ひっそりと画面OFFで参加した。内容は士郎さんがこの1年に描いた「木陰の物語」の新作から2作を紙芝居形式で紹介し、その創作背景をはまぐちとやまさきが聞いていくというもの。いつも一人語りが多い士郎さんにとっても新鮮だっただろうし、ホンブロック的にも良い機会になった。何より、支えてくださる会員さんのおかげです。この会は年に2回行うことになっている。それにしても、対談というのはゲストの会のようで、実は質問者の会なのだといつも思う。ぼくも何度か招かれ話したことがあるか、「今日面白かったです」となるかどうかは質問者次第。それは、質問者によってぼくが話すことが限定されるからである。だから面白かったと感想が集う対談において賞賛されるべきは実は質問者であって、ゲストはいつも、弄ばれているだけなのだ。