見出し画像

27. バーリの夕食

20時まで待ち、徒歩数秒の店へ。入るとまだ誰もいない。おじいさんのウェイターが現れた。もう入っていい?もちろん、こちらへどうぞ。

小さな店の中を案内されると、目についたのは、壁に飾られた何枚もの大きなモノクロの写真。よく見ると、サッカーユニフォームの人たちと、若い頃のおじいさん。この地域のセリエBのアンドレアの選手で、皆で来てくれたのだと、顔がほころび、饒舌に。とてもうれしそうだ。

席に着いてみると、この店にもメニューはない。口頭で説明を受ける。

前菜はビュッフェスタイルだよ。それはいい!では、二人前で。これで自分で分量を調整できると安心した。プーリアの一皿の量、特に前菜の量は半端ではないから。

その後、この地域の郷土料理が食べたいと伝えると、パスタはおすすめのトマトソースのオレキエッテに。セコンドは、もし魚料理でおすすめがあれば。今日は鯛だ、塩焼きがいいよ。ドルチェは?後でもいい?もちろん!ワインもこの地域のおすすめを。鯛なら白を用意しよう。

と、こう書くとスムースに話が進んだように見えるが、実際はそうではない。プリモが決まって、Orecchiette, uno (オレキエッテを一人前)と言えば、驚いて Uno?? と聞き返す。眼鏡で大きく見える目がさらに大きくなった。Uno per noi. トラットリアというタイプの店なので大丈夫。量が少ないけれど、いいのか?と単に確認しているのだ。セコンドもPesce, uno と言えば、同じくUno???とびっくりしたが、すぐにSi, Unoと納得してメモをとる。先頭のUだけ、文字を大きくしたいくらいにアクセントがついていた。

おじいさんが厨房に下がっていくと、シェフの声がした。そんなことあるわけないでしょ、もう一回確認して!! ご夫婦のお店らしい。おじいさんはすぐにホールに戻ってきて、Uno? と困り気味。Si, uno. と言うと、やっぱり間違ってないぞと落ち着いて戻っていった。何だか申し訳なく感じたが、胃袋は守らねば。

おばあちゃんの家庭料理だ!うれしい。男性一人客が続けて入ってきた。いつものね、というやりとり。料理への期待が高まる。

おじいさんウェイター、エプロンがテーブルクロスだった

前菜に出てきたオリーブがジューシーでおいしい。ブラックは軽くローストしてあって甘味が濃い。グリーンは香りがしっかりある。前菜のパプリカのローストがとろける柔らかさとフルーツのような甘み!ナスのマリネ、ビーツとアーティーチョークのピクルス、他のどの野菜も美味しい。もっと食べたいが、パスタがある。

一個だけミニトマトが
粒が大きい
パンもおいしかった
粉ものがすべて美味しい

パスタはオレキエッテのトマトソース。手打ちで、このもちもち感もさることながら、粉そのものがおいしい。このソース、生のトマトをサッと煮込んだだけなのに、すごく濃い味がする。意味がわからない。煮詰めなくても、こんなに味があるの?かかっているチーズはペコリーノだろうか。この塩気がトマトの甘みと酸味ととても合っていた。食べながら何度もおかわりしたい衝動に駆られる。だが、まだ魚がある、我慢だ。

この写真では美味しさが伝わらないかもしれない
現地で買ったばかりのカメラで撮影(「26.バーリで宿泊」参照)

鯛のローストは、ナイフとフォークで食べるのが少し難しかったが、美味しかった。日本でも食べられるけれど、体調や味の組み合わせとして、とてもよかった。

レモンもいい香り

パスタと魚に合わせた白ワインも美味しい。ラベルを見て、あれっ?と声が出た。向こうで、あっまずいという顔のおじいさん。この地域のを頼んだはずが、トスカーナの有名ワイナリーRufinoだった。開けるときに確認しなかったので、仕方ない。それに、ここはハウスワインがなさそうだ。

デザートはどうする?と聞かれたが、とっても残念だけれど、もう食べられないとお断りした。

興奮しながら味わっている間、1人で来店した男性客たちに運ばれてくる料理の量がすごかった。パスタはカレー皿というのか、直径20cmで深さ4cm位のお皿に、山盛りなのだ。デザートの小玉スイカは1/4カットほど。ブドウはまるごと一房で、日本のものより随分と大きい。一人前をシェアできたことに安堵。胃袋は守られた。

調理方法がシンプルで、このおいしさ。おばあちゃんの素材の選択、タイミングや塩梅の見極めの賜物だ。リストランテで食事もいいけれど、現地に来たからには、こういうのが食べたかった。願いが叶ってとても満足。アンティパスト二人前、パスタと魚とワインのハーフボトルとミネラルウォーターで、チップ含めたお代は110.000リラ(約5500円)。

***
トップの写真の、囲みは駅とホテルやこのお店の位置です。こうして航空写真を見ると、前記事にも書きましたが、やはり州都は都会ですね。カメラを買えて本当に助かりました。

シェフのおばあちゃん、ウェイターのおじいさん、ではない呼び方も考えたのです。揃っていないけれど、このままにします。他にも、イタリア語でノンナ、ノンノとか、オーナーとかウェイターとか。どれもこのお店の雰囲気にしっくりこなかったのでやめました。

ホテルのフロントスタッフが指差して教えてくれたままで、この店の名前をメモしていませんでした。うっかり。検索してみたところ、多分この店です。トラットリアではなくなって内装も変わっています。子どもさん達がお店を継いでいるのかもしれません。

https://www.tripadvisor.com/Restaurant_Review-g187874-d3742967-Reviews-O_Chalet-Bari_Province_of_Bari_Puglia.html

少し前からInstagramで気になっていたお店が、当時のホテルの斜向かいにあることに気づきました。この店はパスタSpaghetti all'assassinaが名物のよう。「殺人」という物騒な名前が付いています。パスタを塩水で茹でずに、とても辛いトマトソースで煮込み、お焦げも作るとのこと。地域のおばあちゃんが「No!」と声を上げそうな作り方です。1967年と比較的新しくできたもの。スタンレー・トゥッチというイタリア料理界の有名な方が訪れ、この店のHPに書いたりしているので、興味がある方は創作料理的なこちらもチェックしてみてください。


今はメニューがある店が多いのかも
ちょっと寂しいけれど
明朗会計もよき

https://www.instagram.com/urban.assassineriaurbana?igsh=MWFodWNpd2xvbWdkNw==


一緒に旅をしているような気持ちになっていただけたら、うれしいです。 または、次の旅の計画のご参考になれば。