22. バーリの空港で
地球で生き物が暮らす様子を眺めてご機嫌なまま、飛行機はバーリ(Bari)のパレーゼ空港に着陸。パレーゼの別名は、カロル・ヴォイティワ(Karol Wojtyła)空港。誰かと思ったら、ヨハネパウロ2世。他は出身地の人の名前が付いているようだけれど、ポーランド出身の法王なのは、なぜだろう。飛行時間は1時間15分と短く、プロペラ機は気圧の変化が少ないので、身体が楽なのもよかった。
小さな空港の到着口から出ると、古くて飾り気のないロビーに大勢のイタリア空軍の兵士が待機している。一気に緊張。一般の空港だよね、なぜここに?自分が何かしたわけでもないのに圧倒されてしまう。詳しく思い出せないが、すぐにバーリ中央駅に行くバスの乗り場を確認したり、チケットを買ったはず。それから交代でトイレに行った。1人になったら心細く、うっかり男子トイレに入りそうに。出てきた若い兵士に、女子はあっち→と指差しで柔かに案内された。これで少し緊張が和らいだ。よかった、入らなくて。
思い出した。NATO加盟のイタリアは、対岸のユーゴスラビアの内紛に介入しているのだった。この頃は通信社のユーゴのニュースをちょびっと翻訳する仕事をしていて、状況を知っていたけれど。まさか民間の空港で紛争の一部を目の当たりにするとは。どうかご無事で。
後から検索すると、もともとは空軍基地。1960年代にアリタリアが国内線運用を開始して共用になり、追加で貨物施設として建設された建物が長らくターミナルとして使用されていたとのこと。何度か改修の後、最終的に2005年にリニューアルが完了し、このときの殺風景な設備はすでにない。
バーリ中央駅まで片道5000リラ、250円ほど。周りのイタリア通はバーリに行ったことがなく、気をつけたほうがいいかも、と聞いていたため、車窓からの景色は、楽しむというより、安全かどうかをチェックするように見ていた。
バスが駅に到着すると、そのまま次の目的地へ向かうため、バーリ中央駅へ。シチリアで乗り損ねたため、イタリアで初の電車。FSE (Ferrovie del Sud-Est)線は純粋な国鉄ではなく、第三セクターと聞いた。このときは乗り換えなしだったが、大抵は乗り換えが必要だったり、途中から車両によっては別の線になるといった状況だったはず。チケットも国鉄のものとは違う。6700リラ、340円ほど。
目的地はマルティーナ・フランカ(Martina Franca)という、ムルジェ高原にあるバロック建築の小さな街。
現地の写真がないのは、空港でプロペラの飛行機を撮った後、カメラが故障してしまったから。空港で探せばよかったのだが、カメラを探す余裕がなかった。精神的にも、時間的にも。
これは道路地図だが、線路はバーリからマルティーナフランカをほぼまっすぐに結ぶように走っている。他の乗客は3人ほど、知り合いではないようだが、ずっとおしゃべりしている。車掌さんが切符をチェックしに来たり、ほのぼの。シチリアの車と同じく、この列車もディーゼル。窓を閉めても少し匂いがするが、ハンカチで覆ったらなんとかなる。車窓にはオリーブの林などが見えていたが、次第に日が暮れて景色が見えなくなっていく。終点の目的地についたのは、19時頃。着いたという安堵を感じられたのは、束の間だった。
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トップの写真は、バーリと周辺部のマップ。左側に空港、右側に港が見えます。
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パレーゼ空港からバーリへのバス会社のサイト
末尾に動画があり、街の様子がわかります。
リンク埋め込みが機能しないため以下URLをメモしておきます。
https://www.autoservizitempesta.it/servizi-orari-bus-navetta/
パレーゼ空港からは、電車でも移動できます。この記事を書いている時点では、バスの方が時間がかかりますが、値段が安いようです。電車の場合は下のリンクで調べられます。
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今はもうMartina Franca直行の列車はないどころか、Sud-Est線のサイトで検索すると、土日に表示されたのはバスの時刻表。鉄道のサイトだけれど。平日でも必ず1回は乗り換えがあり、ほとんどがバスと電車の組み合わせです。滅多に電車のみのオプションはありません。
日曜の時刻表、歩くピクトとバスのピクト。cambiの横のiマークをクリックすると、路線図が表示されます。
電車のピクトは、Rのような文字です(おそらくRegionaleの略)。電車のみの移動が一番料金が高く、時間もかかります。
当時も今も1時間に1本あるかどうか。スケジュールにゆとりがあったほうがいいですね。