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レトロゲームの追憶 #05 ハイパーオリンピック(コナミ/1983)
かつて「ゲームセンターあらし」と呼ばれた筆者が幼少期に出会ったビデオゲーム紹介と、ゲームにまつわる懐古をゆる~く綴ります。
ハイパーオリンピックのゲーム内容
ハイパーオリンピックは6種類の陸上競技で世界記録を目指すゲームです。
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コントロールパネルは中央にRUNボタン、左右にJUMPボタンの合計3ボタンのみというシンプルな設計です。いずれの競技も、設定された既定記録(QUALIFY)を上回ると次の競技にチャレンジすることができます。
100m DASH(100メートル走)
RUNボタンを連打して走ります。連打のスピードが速ければ速いほど、プレイヤーは速く走ります。JUMPボタンは使いません。
ピストルの音でスタートしますが、ボタンを押すタイミングが早すぎるとフライングを取られます。3回続けてフライングをするか、既定記録を下回ると失格になり、ゲームオーバーとなります。
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LONG JUMP(走り幅跳び)
RUNボタンを連打して助走します。JUMPボタンを押したタイミングで踏み切りますが、JUMPボタンを押し続けるとジャンプの角度が20~80度まで変化します。JUMPボタンを離したタイミングで角度が決まります。
踏み切り板を超えてしまうとファウルとなります。3回続けてファウルになるか、既定記録を下回ると失格になり、ゲームオーバーとなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1714445052980-GeQQOETSIF.png)
JAVELIN THROW(やり投げ)
RUNボタンを連打して助走します。JUMPボタンを押したタイミングでやりを投げますが、JUMPボタンを押し続けるとやりの角度が20~80度まで変化します。JUMPボタンを離したタイミングで角度が決まります。
スターティングラインを超えてしまうとファウルとなります。3回続けてファウルになるか、既定記録を下回ると失格になり、ゲームオーバーとなります。
この面には有名な隠しキャラ「宇宙人」が登場します。助走で十分に速度を上げ、やりを80度で投げると画面外に消えたやりが宇宙人を射抜いて落ちてきます。プレイヤーには1000点のボーナスが加算されます。
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110m HURDLES(110メートルハードル)
RUNボタンを連打して走ります。連打のスピードが速ければ速いほど、プレイヤーは速く走ります。JUMPボタンをタイミングよく押してハードルを跳び越えます。
ピストルの音でスタートしますが、ボタンを押すタイミングが早すぎるとフライングを取られます。3回続けてフライングをするか、既定記録を下回ると失格になり、ゲームオーバーとなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1714445237179-wapyH5C368.png)
HAMMER THROW(ハンマー投げ)
RUNボタンを押すとプレイヤーが回転を始めます。JUMPボタンを押したタイミングでハンマーを投げます。JUMPボタンはハンマーが赤い時に押さないと有効区域内へ投げることができません。JUMPボタンを押し続けるとハンマーの角度が20~80度まで変化します。JUMPボタンを離したタイミングで角度が決まります。
多く回転するほど速度が増して遠くへ投げられますが、サークルから出たりハンマーが有効区域外へ落ちるとファウルになります。3回続けてファウルになるか、既定記録を下回ると失格になり、ゲームオーバーとなります。
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HIGH JUMP(走り高跳び)
RUNボタンを連打して助走します。JUMPボタンを押したタイミングで踏み切り、背面跳びをします。頂点付近で再びJUMPボタンを押すと姿勢を変えながらマットに落ちます。跳躍時・姿勢変化時ともにJUMPボタンを押し続けると角度が変化します。JUMPボタンを離したタイミングで角度が決まります。
バーを落とすとファウルとなります。3回続けてファウルになるか、既定記録を下回ると失格になり、ゲームオーバーとなります。
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ハイパーオリンピックは、オリンピック競技を題材としたゲーム内容のわかりやすさとボタンのみの操作性の良さが幅広いプレイヤーに受け入れられ、当時のスポーツゲームとしては異例のヒット作となりました。
ハイパーオリンピックの思い出
1983年はゲーム好きにとって記念すべき年といえるよね。何といってもファミコンとSG-1000という家庭用ゲーム機の2大巨頭が発売されたことが一番のトピックだね。ビデオゲームが一般家庭に普及し始めた当時、ビデオゲームの王様はまだアーケードゲームだった。今回も懐かしのアーケードゲームの記憶を辿っていくよ!
ハイパーオリンピックとの出会いは小さな喫茶店だった。
とある土曜の午後、いつものように母の実家の土産問屋へ遊びに行くと、従兄のあっくんの姿が見えない。以前のブルーシャークの回で書いたけど、あっくんは早逝した伯父さんの長男で、父親を亡くした時はまだ中学生だった。その後大学に進学すると同時に家業を継ぎ、学業と仕事を両立しながら伯母さんや家族を支えてたから、いろいろ忙しいのかなと思ってたのよ。
ところが話を聞けば、友人と近所の喫茶店にいるらしい。
「え?喫茶店にいるの!?」
オレの脳みそは「喫茶店=大人のゲームセンター」という思考だったから、あっくんに保護者になってもらえば堂々と遊べるじゃん!とウキウキしながら喫茶店へ向かったんだ。
喫茶店のトビラから中をのぞくとあっくんが見えた。あっくんは真剣な眼差しでテーブルを睨みながら体を小刻みに揺らしてたんだ。「ゲームやってる!」と直感したオレは、店に入ってあっくんの傍に行った。
「あー、だめだー」
あっくんは落胆の声をもらすと、漸くオレの存在に気付いてくれた。
「お、来たのか。これ面白いよ、やってみる?」
ハイ、もちろん。そのつもりで来たんデス!インストカードには「ハイパーオリンピック」と書いてあった。初めて見るゲームだけど、何をすればいいのかはあっくんのプレイを見て理解できてた。
100円玉を投入して1Pボタンを押すと、いきなりネームエントリー画面になった。
「おおっ!」
今まで見たことのない展開に思わず声が出た。A、A、A…名前なんてどうでもいいわ。まずはプレイに専念しなきゃ。最初は100m走だ。
「オンニュアマーク…ゲッセ」
ゲームがしゃべるとなんかカッコイイよね。「屁のつっぱりはいらんですよ」並みに言葉の意味はよく分からんが、とにかくカッコイイ。ボスコニアン以来のよく分からん英語だ。
ピストルの合図と同時に、オレはシューティングで鍛えたボタン連射を披露してあっさりクリアした。幅跳びもやり投げも、110mハードルも一気にクリアしてみせた。
「やったことあるの?すごいな」
あっくんが褒めてくれるが、もちろんやったことなど無い。ゲーム勘があればこれくらいは楽勝なのだよ。しかし次のハンマー投げは手強かった。投げるタイミングが難しいー。3投目でやっと前に飛んだけど、記録が伸びずゲームオーバー。悔しい…。
壁にぶつかったら人のプレイを見て研究するのがオレのスタイルだ。さっそくあっくんと友人のプレイを観察することにしたんだけど、この作戦は失敗だった。まさか二人ともハードルをクリアできんとは…あえて言おう、カスであると!まあこの日は所持金も少なかったし、あきらめて帰ることにした。でもその後なかなか喫茶店に行く機会が無くて悶々とした日々が続いていた。
そんなある日、マーカムの回でおなじみの駄菓子屋Aに同級生のコバヤシ君が入っていくのを見た。
(コバヤシが来るなんて珍しいな…)
気になりコバヤシ君の後を追って店に入ると…ここにあるじゃん!ハイパーオリンピック!もちろん50円!
「いつ入ったんだよ!」
プレイ中のイサオに聞いた。
「おとといだよ」
うへーそうだったのかー2日間ムダに過ごしたなー習い事やめさせてもらおうかなーなどと考えていたら、イサオがハードルをクリアしてる!やっとハンマー投げを観察するチャンスが来たよ。
ハンマー投げは、欲張って10回転まで粘るとサークルを超えてファウルになるっぽいことがわかった。ハンマーが赤くなるタイミングを狙うのも結構シビアで失敗する確率が高そうだ。そしてオレは悟った。
(音だ…音に合わせて投げるんだ)
ハンマー投げは回転中に「ブン」というSEが鳴るが、ハンマーが赤くなるのと同時に鳴っているように聞こえる。試してみる価値はありそうだ。そしてオレの番が回って来た。
順調にハンマー投げまで進むと、オレは目を閉じてうつむき、耳に全神経を集中した。画面は見ない。
ブン……ブン……ブン……ブン…ブン…ブン…ブンブンブ(ココだ!)
オレは9回転目の音と同時にJUMPボタンを押し、44度の角度で離した。
「よっしゃー!」
ハンマーは有効区域の左ラインぎりぎりを飛んでいく。もちろんRUNボタンを連打して飛距離を稼ぐのも忘れちゃいない。
「おおおお!」
ハンマーが落ちると、ギャラリーがどよめいた。記録は99m97cm。これ以上はないという大記録に、オレはすっかり天狗よ天狗。暴れん坊天狗だよ。
「余裕だよ、余裕!はっはっは!」
余裕で挑んだ次の走り高跳びはファウル3回ですぐにゲームオーバー。
走り高跳びがこんなに難しかったとは…まだ課題は多いなと反省しながらコバヤシ君に交代した。
なんとコバヤシ君は禁断の秘密兵器「ステンレス定規」を持ち込み、異次元のタイムで100m走をクリアしていた。
「それ、すげーな!」
コバヤシ君は普段からズルの天才で、ネットの無いこの時代にどこからかチート情報を入手してたみたいだ。オリャ、オリャ!と定規をはじき、未知の記録をたたき出すコバヤシ君。
本人もギャラリーも気付いていないが、このときステンレス定規の鋭利な角によってパックリと切れたコバヤシ君の指先が血で真っ赤に染まっていた。
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「すげー!すげー!」
オレは出血大サービスのコバヤシ君にエールを送り続けた。翌日登校したコバヤシ君の指に包帯が巻かれていたのは言うまでもない。
ハイパーオリンピックはオレに「因果応報」という言葉の重みを教えてくれた、仏様のようなありがたい存在なのである。