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ニックドレイクに出会った日

Nick Drakeと出会った時、既に彼が亡くなった年を超えていた。
27歳になったばかりの冬。


ちょうどアコースティックギターの熱に憑かれていて
ニールヤングからサイモン&ガーファンクル、そしてボブディランへとフォークの巨匠の軌跡を辿っていた。

専らピックでコードを鳴らし
そこにそれらしい歌詞を重ねる。
シンガーソングライターのフォーマットに則ったごっこ遊びに耽っていた。

もう少し何か、自分にぐっとくるものはないか。

フォーク おすすめ 

ニックドレイクの名前を見た時、またこれはボブディランのように
「凄いと言われていてそんな雰囲気がするんだけど、自分の波長とは違うんだろうなあ」
とか
「小手先のテクニックでびっくりさせるだけのよくあるアーティストなんだろうなぁ」
と、スルーしてしまった。

当時の俺は偉かった。
引き返して一曲でも聴いてみるか。

『Things Behind The Sun』

最初の数音が鳴っただけで、何かを感じた。
俺が求めていたのはこの人だ。と
言いようのない寂しさや虚無感が、ギターの音から伝わる感じがした。

それは、彼の概要を既に見てしまったからかもしれない。
26歳の若さで、抗鬱薬の過剰摂取により亡くなり、死後に評価されたこと。

この人ならば、きっと自分の欲しかった音楽を残してくれている。

全てが、それこそ細胞の一つ一つが
まるでしっとりと溶け合うかのように
その音に体を寄せていた。

『Pink Moon』
彼の代表曲の一つ。

「pink pink pink pink…」
ここのコードを聞いた時、この喉の渇きを潤してくれる世界で唯一の水を飲んだ感覚になった。
間違いなかった。

最初にYouTubeで聞いた時は、ボーカルに気が付かなかった。
あまりにか細く、弱く、小さかった。

次の休みにはディスクユニオンにもう行っていた。

ニックドレイクが生涯で残した3枚とも揃っていたが、一気に掘り進めるのは勿体無い気がして
1stと3rdだけを買った。

次の休みにはFamily treeも含めて全て手に入れた。

本当に求めていた音楽に出会ったと思った。

彼の音楽の好きなところは
その声とギターの音の選び方、そして音楽の背景にある彼の人生。

River manとPlace to beは同じような歌い方をしているようで、実は全然違う。
後者はまるで力が無い。
肩の力を抜いているのではなく、力が無い。

Harvest bleedも1分程の小曲だが、最後は指がもつれたかのように突然終わる。
これが正解なんだろうが、もし彼がもう少し元気だったら?と想像すると、いややめよう。



最後のアルバム『Pink Moon』に収録されている曲は、新しく書き上げたものと、過去の作品に分かれているが、
新しく書き上げた曲はどれも

(A)数行の歌詞しかないか
(B)同じようなフレーズの繰り返し、そして
(C)ギターの音数にあわせて詞をはめこんだ

ものに分けられそうだ。(半ばこじつけに)

(A)Pink moon、Hervest bleed、From the morning
(B)Which will、Know
(C)Road、Free ride
(過去作)Place to be、Things behind the sun、Parasite

過去作についてはブートや、ライブでの演奏記録がある。
新しく書かれた曲と違い、どれもしっかりとした詩を最後まで書き切っている。


「歌詞が書けないんだ」
鬱が悪化していた時にそう漏らしたというが
彼がどういう日々を送っていたかが曲から垣間見える気がして。


彼がもしもう少し生きて、新しい曲を残してくれたら、といつも思う。
Tow the lineの続きがもしもあったら。

生まれた時にはジョンレノンもとうに亡くなっていたけれど、正直彼が生きていたとしても
もうあまり興味がわかない気がする。

冬が近づくこんな季節の夜中は
いつも彼の曲を聴きたくなる。

Open your eyes to another year
They’ll all know
That you were here when you’re gone

 目を開いてありふれた日々を見るんだ
 彼らはいつか知るだろう
 私がいなくなった後で
 ここに私がいたことを

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