狂った愛の結末は!?:神話の恐ろしい恋愛”メディア”part.2
愛しすぎた為に相手を憎んだり、人々が理解できない行動にでる。そのような人物が神話や小説に描かれることがありますよね。その代表例として、ギリシア神話のメディアを取り上げてきました。前回までのお話はこちらにございます。
【イアソン金羊皮を奪取!?】
王のいくつかの試練を突破し、いよいよ金羊皮を守る竜と対峙するイアソン。その強さは折り紙付きです。メディアの助けで竜の住処であり、金羊皮のある場所まで辿り着いたイアソン。いざ、戦おうと思ったら驚き。竜が眠っているではありませんか。この好機を逃すまいと彼は竜に襲いかかり、なんなく倒してしまうのです。なんと運の良いイアソンだと思うかもしれませんが、実はメディアがその魔術で作り出した薬で竜を眠らされていたのでした。 竜を討伐した直後を描いたとされるモローの絵画は、その事実をは知らず、自らの偉業を讃えるイアソンは誇らしげな顔をしてます。後ろで彼の肩に手をやり不敵な笑みを浮かべているメディアは、彼を我が物にできる喜びを隠しきれないでいますね。狂気だ。
モロー『イアソンとメディア』1865年
こうしてコルキス王の難題と自らの目的を果たしたイアソンはコルキスの地を離れようとします。しかし、これを許さないのがコルキス王。自身の宝である金羊皮と娘を奪われて怒り心頭です。国の軍をあげ彼らを追います。
【メディアの狂気はまだまだ続く】
イアソンとメディアは船に乗り、コルキスを脱しようとしますが、コルキス軍の兵が追ってきます。その中でも、メディアの弟アプシュルトスが彼らにとっては厄介者でした。軍の要人であり、親族である弟をなんとかしなければと頭を悩ませたメディア。彼女は弟を罠にはめ、ついには殺害します。イアソンを助ける為に親族まで手にかけるとは、深い愛がそこまで彼女を狂わせてしまうとは恐ろしいですね。
【メディアの狂気がイアソンへ】
コルキスから離れ、道中いくつもの試練を掻い潜ったイアソンとメディアは、コリントスで二人の子供をもうけ、幸せな日々と過ごしておりました。そんな折、コリントスの王クレオンに気に入られたイアソンは、王の娘を紹介され彼女の夫にならないかと迫られます。その申し出の意味は、「次の王はイアソンだ」と言うことになります。絶対的な地位と富に目が眩んだイアソンはメディアと離婚し、クレオン王の娘と結婚します。
もちろんこの行動にメディアは大激怒。怒り狂ったメディアは王クレオンと王の娘を毒で殺害します。それに留まらず、彼女はイアソンとの間にもうけた二人の子供にも手をかけ、殺してしまうのです。下のドラクロワの作品では、自らの子を殺める瞬間が描かれております。洞窟に逃れ、追手が来ていないか、あるいは追手が来ていて睨みをきかせているのか。その眼差しからは、怒りや憎しみを感じますね。
ドラクロワ『我が子を殺すメディア』1862年
今回は、神話に出てくる狂気的な人物メディアを紹介しました。ここまでやってしまうほどの愛とは何なのでしょう。そもそも、神の力で恋をしたメディアのそれは愛であったのでしょうか。本記事で紹介させていただいた内容は、シーンによっては諸説ありますので、さまざまな文献に目を通して頂くとまた違ったメディアが見えてくるかもしれませんね。