Seminar Report 「PNFと運動学習」
今回は3月15日16日(土日)・IPNFA®シニアインストラクター・Carsten Schaefer氏をお招きし開催した、セミナー「PNFと運動学習」について大森が報告をさせていただきます。
講師:カーステン・シェファー氏について
IPNFA®シニアインストラクター・理学療法士であるカーステンは国際PNF協会の中で、運動学習の考え方をPNFコンセプトにどうフィットさせていくか…その課題に取り組んでいる中心となるインストラクターです。親日家で日本の文化を理解し、妥協せず指導する姿勢・分け隔てなく受講生と接する態度や日本語を覚えようとする姿勢は大変好感が持て、ファンが多い方です
PNFのイメ―ジ
PNFには「パターン」というハンドリング技術があり、運動療法としての一面を持つため、その特徴的な動きから、IPNFA®(国際PNF協会)のインストラクター・正規の講習会・セミナーを受けた経験はない方は促通手技としてPNFをとらえる傾向があります。
この考え方は間違ってはいませんが、半分正解といったところでしょうか。PNFは治療のみならず、評価・治療戦略までをトータルで考える治療コンセプトであり、患者さんやクライアントに対して、解決したい問題・課題をどのよう解決していくのか考えていく思考プロセス(クリニカル・リーズニング)なのです。
本来、パターンはその問題解決を行うための手段の一つなのですが、PNF=パターンの考えが独り歩きしています…よね
PNFにおける運動学習
運動学習はPNFコンセプトの哲学に含まれる主要なコンテンツです。ベーシックコースではFits&Posnerの理論(1965)について指導を受けます。シンプルでわかりやすい理論ですが、課題指向型アプローチや心理面等の視点から、運動学習を臨床介入にどう取り入れるかという点では、情報量が不足しがちです。認定コースでの指導時間もそれほど長くなく、さらっと終わってしまうので、致し方ない部分でもあるのですが、さらに臨床で活動できるレベルの持っていくには時間がかかります。
運動学習は運動面に特化した学習の考え方ですが、発達の面から考えても一つの動作を習得するには時間を要します。つまり運動学習の理論を理解することは、患者さんへの負担が少ない効率的な治療や各疾患に対する対応力が向上すると同時に、患者さんが本来困っている日常生活動作への理解にもつながると考えています。
学習の秘訣 Sharping
運動を学習するわけですから、運動が行えることは前提条件となります。ただ簡単にできてしまうと飽きるし、難しくてできないとやる気が落ちます…つまり学習には難易度が大きく関わります。例えば患者さんの希望が「仕事で重たいものを、痛みなく持ち上げることができるようになる」とします。患者さんの疾患名はこの時点ではわかりませんが、腰痛があることは文から読み取れるかと思います。しかし患者さんのコメントからはどの程度の重さ・大きさのものを持つと痛みを感じるのか、具体的なことは伝わってきません。そこでセラピストとしてはまず観察が必要になります。
観察とは、患者さんがどのように動作を行うのかを見ることですが、その過程で物の重さや大きさを確認していきます。これらを通じて、患者さんにとって適切な負荷量(重さや大きさ)を探していきます。結果として、患者さんの能力の限界域を知ることになり、適切な負荷量・課題設定の仮説形成が行えるようになります。
つまり、とは境界域を知り、その境界線を少し超える程度の負荷/難易度での課題を治療に用いることなのです。
次回は、後編として3月17・18日に行われました「パターンとマット」についてお伝えいたします。
文:大森崇史 IPNFA®認定PNFインストラクター