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おじさんエンジニアと生成 AI エンジニアリング


この記事の要約
この記事は、おじさんエンジニアがAIの特性を理解し、経験と新技術を組み合わせることで、より価値の高い仕事ができることを提案しています。

  • マネージャーとしての視点

    • セキュリティ、品質管理、コスト面での考慮が必要

    • チーム全体のAI活用戦略の立案が求められる

  • 実践的な活用例

    • 会議議事録の要約(参照行: 50-83)

    • AIエディタを使用した業務ツール開発(参照行: 86-110)

    • プロジェクト計画策定(参照行: 111-129)

  • 活用のコツ

    • AIを「優秀だがおっちょこちょいな若手エンジニア」として扱う

    • 明確な指示を心がける

    • こまめな確認と修正を行う


IT 企業でプロジェクトマネジメントを担当しているつっかーと申します。システム開発 20 年目、40代も半ばに差し掛かろうとしています。

生成 AI 技術がめまぐるしく発展している昨今、急速に仕事のスタイル、アプローチが変わりつつあります。本記事では、私の普段の業務における生成 AI との関わりを例に私たち“おじさんエンジニア”がどのように AI と付き合っていくか考察してみたいと思います。


1. なぜ“おじさんエンジニア”が AI に注目すべきなのか

マネージャーとして

おじさんエンジニアといっても、職種や役割は人それぞれかと思いますが
バリバリ手を動かす立場より、チームを率いて成果責任を持った立場にある方が多いのではないかと思います。
その場合、自身が直接 AI を活用すること以外に、チームとして AI とどう向き合うか、といったことも考えねばなりません。

  • 成果物品質・権利

  • 計画・コストへの影響

  • アロケーション

  • セキュリティリスク・対策

昨年まではクライアントに生成 AI 利用を提案すると、セキュリティ面の不安などから否定的であることが多かったですが最近はクライアントから生成 AI の利用状況について確認いただくケースも増えています。
もはや逃れることはできません。

プレイヤーとして

おじさんエンジニアは多忙です。
打ち合わせやメンバーからの相談対応など、人と話すことも大切な業務です。必然的に自身の作業時間は、朝や夕方以降になりがちです。

メンバーにタスクをお願いするにしても、その下準備など、やることはたくさん。ログと睨めっこしながらコードと向き合うだけの日々が懐かしい。。。

可処分所得時間を増やすためにも、自身のツール活用は必須です。また、前述の管理監督責任者として、チームを率いる上でも、まずは自身がツール活用することで理解せねばと思います。

以上の背景から、まずは自分が生成 AI を活用してみることで、理解したいと思います。前述の管理視点については、もう少しノウハウが溜まってから、アウトプットしたいと思います。


2. おじさんエンジニアの日常業務での活用例

ここからは、私自身や周囲のおじさんエンジニアたちが行っている“リアルな活用事例”をいくつかご紹介します。

2-1. 情報の要約と詳細化

定番の活用例です。
自身が参加していない会議の議事録を読み込んだり、全体の概要を掴む際に利用します。プロンプトが曖昧だと認識齟齬が発生しやすくなるので、その点は注意が必要です。
私が最近使っているプロンプトは以下です。知人に教えていただきました。claude-3.5sonet との相性が良いです。

# 命令書
あなたはプロの編集者です。以下の条件に従い、入力された文章を要約してください。
# 制約条件
1.重要なキーワードを取りこぼさない。
2.文章の意味を変更せず、架空の表現や言葉を使用しない。
3.詳細セクションは極力長い文章で出力すること。
4.要約文のみで内容を理解できるよう、意味を削ぎ落さず記載する。
5.トピックごとにタイトルをつける。
6.数値やデータは正確に記載し、変更を加えない。
7.ネクストアクションでは、担当者と期日を明記すること。

# 出力形式
以下のセクションを作成してください:
## 会議サマリー
会議全体の重要な概要をまとめる。
## アジェンダ
会議で扱ったトピックや議題を列挙する。
## 決定事項
会議で決定された事項を明確に記載する。
## ネクストアクション
次回の行動計画やタスクを具体的に記載する。以下の情報を必ず含める:
・担当者
・期日
## 詳細
各トピックの内容を極力詳しく整理し、「### トピック1」「### トピック2」の形式で記載する。

2-2. AI エディタを活用した“業務ツール自作”の超高速アジャイル開発

業務で小さなツールやスクリプトを作って自動化したいと思うことはあるでしょう。しかし、繰り返し使うならともかく、その時限りと言うこともしばしば。手作業だとだるいし、ネットで探してもぴったりなものなかなか見つからない。かといって自作するのもめんどくさい……という経験はありませんか?

そんなときに役立つのが、AI エディタとの壁打ち開発です。

  1. 要望がフワッとしたまま AI に相談
    「こんなことを実現したいんだけど、どんな構成や仕様にすればいい?」とプロンプトを投げると、AI が必要な機能候補やアーキテクチャを提案してくれます。

  2. AI に仕様を言語化&確認
    提案された内容をベースに、「この機能は必要かも」「こっちはいらないな」と取捨選択しながら、仕様を自然言語で整えていきます。AI に「こういう構成図やテーブル定義はどう?」と聞けば、図解やテキストで提案してくれます。

  3. 実装もお願いして、試してみる
    言語化した仕様を再度 AI に渡して、「それを満たすコードを書いてほしい」と指示。あっという間に雛形コードが生成されるので、VS Code などで動作チェック。ここで初めて「思ってたのとちょっと違う…」というギャップが見つかったら、すぐに修正を促します。

  4. 高速に仕様をアップデートしながら完成度を高める
    実際に動かしてみて、誤解があれば修正・追加し、再度 AI に実装を依頼。こうして超高速なアジャイル開発が実現できます。

AI とのペアプロに勤しむ図(Cursor Composer Agent mode)

2-3. プロジェクト計画の策定や提案書作成

大きめの開発案件を任されると、プロジェクト計画の策定提案書の作成に時間を取られるケースが多いですよね。そんなときこそ生成 AI が手助けしてくれます。

  1. 初期条件を与えて、計画や工程を試算
    「開発期間は 6 ヶ月程度、メンバーは 5 人を予定、ソフトウェアは◯◯フレームワーク、◯◯クラウドサービスを利用」など、ざっくりとした初期条件を AI に渡すと、必要タスクを提案してくれます。
    (工数やスケジュールも提示してくれますが、大抵、ハマらないことが多いので、そのまま使うのは危険です。)

  2. リスク抽出にも活用
    計画書の段階で、開発リスクやチーム体制における懸念点を洗い出すのは骨が折れますが、AI に「潜在的なリスクは何が考えられる?」と聞くと、要員不足や技術的リスク、スケジュールの重複などをリストアップしてくれます。
    規格を指定することで、リスクの抽出もより正確になります。
    「ここはさらに深刻かも」「このリスクは考えすぎかな」といった取捨選択ができるので、効率的に抜け漏れのない計画書やリスク管理表を作れるようになります。

  3. 提案書の骨子作りから文章のブラッシュアップ
    提案書や企画書は文章量が多くなりがち。AI に「A4 3 ページ分の提案書を作りたい、主な流れはこんな感じ」と伝えると、サンプル構成やセクション分けを提示してくれます。
    また、一度書いた文章でも「読み手にわかりやすくなるよう、ビジネスライクに修正して」と依頼すれば、固すぎず、カジュアルすぎないビジネス文書に整えてくれることもしばしば。下書きの段階で AI をフル活用することで、まとめ作業に割く時間をぐっと減らせます。

計画のリスク抽出

3. 活用のコツと注意点

3-1. AI は“優秀なおっちょこちょいな若手エンジニア”と思え

  • 間違えるのは当たり前
    AI はとても頭の回転が速くて気立ても良い、優秀だけどおっちょこちょいな新人エンジニアのようなもの。期待通りの働きをしてくれることも多いですが、見落としやうっかりミスもよくあります。

  • 大抵、指示が曖昧な場合にトラブル発生
    人間同士のやり取りでも「仕様が曖昧だと想定と違う成果物になる」ことがあるように、AI へのプロンプトが曖昧だと認識齟齬が発生しやすくなります。

  • こまめな確認と修正
    早めに試作品をチェックし、「意図とは違うかも」と気づいたら即修正を依頼。指示の仕方が悪かったのか、AI がミスったのかを細かくチェックしながら、一緒に成長していきましょう。

  • 根気よくやり取りを重ねると、阿吽の呼吸が生まれる
    最初は試行錯誤が必要ですが、何度もやり取りするうちに、「こう聞けば、こう答えてくれる」というパターンが見えてきます。人間関係と同じく、じっくり付き合うことで“気が合う”関係を築けるのが AI の面白いところです。

3-2. 指示を出す際、要件は明確に

人間同士でも要件のヒアリングは難しいですが、AI に対しても同様です。おおざっぱに頼むと認識がずれてしまい、想定と違う成果物が返ってくることが多々あります。

  • プロンプトで「やりたいこと」「前提条件」「求める形式」をはっきり書く

  • 早めに試作品をチェックして、軌道修正する


4. まとめ:おじさんエンジニアこそ AI を味方につけよう

生成 AI は、若手エンジニアだけでなく、「管理職だけど技術力も捨てたくない」というおじさんエンジニアにとっても大きな味方です。
繰り返しになりますが、今後ますます AI 技術は進化し、システム開発の現場に浸透していくことが予想されます。
逆に言えば、自ら積極的に使いこなし、その上でしか出せない「経験知」を掛け合わせることで、新たなキャリアの可能性が広がります。

行動のヒント

  • 小さなタスクから AI を導入
    コードレビューの補助や会議メモの要約など、まずは簡単なところから始めてみましょう。

  • 知識の更新を怠らない
    新しいバージョンの AI や最新ツールの機能を常にチェックし、いち早く試してみると意外な発見があるかもしれません。

  • プロンプトづくりを研究する
    AI に何をどう聞くかによって、得られる回答の質が大きく変わります。自分の“問いの設計力”を磨くことが大切です。


おわりに

自動化や効率化が進む一方で、「AI にはできない高付加価値の仕事は何か?」が改めて問われています
おじさんエンジニアこそ、長年積み上げた現場感やマネジメントノウハウを武器に、新しいテクノロジーを味方につけることで、活躍の幅を広げていきましょう。


この記事を書いた人
株式会社ゆめみ PdM ギルド所属。システム受託開発やアプリデザインのプロジェクトマネジメントを担当。
日々「もうコード書けないよぉ……」と泣き言いいながら、仕方なく書いてる。そして時間を溶かす。


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