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クリエイターとプレイヤーをエンパワーするMuse: ゲームプレイ向けGenerative AI Model

Xbox Wire Blog が良かったのでまとめてみた。

Empowering Creators and Players With Muse, a Generative AI Model for Gameplay - Xbox Wire

🚀この記事のポイント

  • ジェネレーティブAI研究のブレイクスルー

    • Microsoft ResearchとNinja Theoryが共同開発したWHAM(World Human Action Model)を通じて、ゲーム世界の物理や操作を深く学習する仕組みを構築

    • 実際のクリエイターインタビューに基づき、一貫性・多様性・持続性を重視してモデルを開発

  • 古いゲームの保存と再現

    • 既存のハードウェアに依存しない手法で、過去のゲームを将来的にも遊べる可能性が広がる

    • ゲーム保存(preservation)の観点から業界に大きな影響

  • クリエイターの生産性向上

    • AIがすべてを自動で作るのではなく、アイデアの素早いテストやプロトタイピングを支援することで、クリエイターの想像力を拡張

    • クリエイターが本来のクリエイティビティに専念できる環境を促進

  • 研究成果の公開と協業

    • Azure Foundryへのモデルとデータ公開、Hugging Faceでのモデル重みデータ公開により、広く研究者・クリエイターコミュニティが参加できる

    • Xbox Game StudiosとMicrosoft Researchが同じ拠点(ケンブリッジ)で協力し、研究と実践の両面を推進

  • 今後の展開

    • GDCなどの場でさらなる発表を予定

    • ゲーム開発者やプレイヤーの実利を念頭に、ツールや技術を早期公開し、共創を促進する方針


はじめに

私たちの生活のあらゆる領域で、AIの話題が止まらない状況. 仕事、学習、そして遊び方までも大きく変える力を持っていると考えられている. そしてゲームの世界に浸っている私たちにとって(プレイヤーであれクリエイターであれ)、AIがゲームをどう変え、また新たな可能性をどう切り開くのかが大きな興味の的となる

Xboxでは、AIを活用してプレイヤーとゲームクリエイターにとって、より良く、より楽しくすることを目指している

  • より多くの人々に、より多くのゲームを届けたい

  • ゲーム開発者のクリエイティブなビジョンや芸術性を常に大切にしたい

そこで、ジェネレーティブAIがクリエイティビティをブーストし、新たな扉を開く存在になると信じている


Generative AIのブレイクスルー

今回、Microsoft ResearchがNature誌で発表し、同時に紹介されたGeneratieve AIのブレイクスルーによって、こうした新しい可能性がより具体的に見えてきた. その中には

  • 古いゲームを将来の世代へ受け継ぐ方法

  • 多様なデバイスを介した新しい遊び方の提供

などが含まれている。


Muse: ゲームプレイのアイデア創出のためのGenerative AI Model 

開発の背景

Xbox Game StudiosのNinja Theoryと協力し、Microsoft Researchは WHAM(World and Human Action Model)と呼ばれるMuseを開発。Ninja Theoryのマルチプレイヤーバトルアリーナゲーム『Bleeding Edge』を使って、初めて訓練されGenerative AI Modelである。

  • Ninja TheoryとMicrosoft Researchが同じケンブリッジ拠点であったことが協力を円滑に

  • 研究にBleeding Edgeが使用されたのはその連携の結果である。

画期的な点

Museの注目すべきポイントは以下のとおり。

  • 3Dゲーム世界の詳細な理解

    • ゲームの物理法則

    • プレイヤーのコントローラー操作へのゲームの反応

  • 一貫性のある多様なゲームプレイをAIが生成

    • AIによるゲームプレイのレンダリングが可能

    • ゲームクリエイターをサポートするGenerative AI Model への大きな前進

研究プロセスと公開

Microsoft Researchは当初、ジェネレーティブAIが新しい体験をもたらす可能性を探求する中で、「ゲーム開発者がどう使えるか」を重視

  • インディーズからAAAゲームスタジオまで世界中の27名のゲームクリエイターにインタビュー

  • その声を反映させることで、実際のニーズに即した研究を推進

さらに、Museを他の研究チームやゲーム開発者が探求しやすいように、以下をAzure AI Foundryで公開している.

  • Muse本体

  • モデルの重みデータ

  • サンプルデータ

  • インタラクティブなインターフェイス

https://news.xbox.com/en-us/2025/02/19/muse-ai-xbox-empowering-creators-and-players/

Museがもたらすゲームへの影響

さらなる可能性の追求

まだこの研究は始まったばかりだが、今後の展開に期待が高まる。

  • すでに他のファーストパーティゲームを対象に訓練されたリアルタイムプレイ可能なAIモデルを開発中

  • 懐かしのゲームを蘇らせる可能性や、クリエイティブなアイデア創出のスピードアップなどが視野に

古いゲームの復活

多くのクラシックゲームは、古いハードウェアに依存していて、もう遊べないものが多い。

  • Museを活用して過去のゲームをどのデバイスでも最適化できる可能性を検討

  • 将来的にクラシックゲームをより多くのプレイヤーに届けられるかもしれない

これは、ハードウェアの進化によって失われた名作ゲームをいつでも、どの端末でもプレイできるようになる夢を膨らませるもの。

新しいコンテンツの創出

Museは、ゲームの制作・拡張プロセスでも大きな可能性を示唆。

  • 新たなゲーム体験のプロトタイピング

  • 既存のゲームに新コンテンツを注入

  • プレイヤー自身がクリエイションに参加する余地

まもなく Copilot Labs で短いインタラクティブAIゲームを体験できるようになる予定.。こうした実験を通じて、新しい発見や研究の方向性がさらに見つかるはず。


Xboxにおける Generative AI

長年のAIイノベーション

XboxはAIや機械学習技術を長年にわたって活用し、Microsoft Researchとも協力してきた。

  • プレイヤーを楽しませる方法

  • クリエイティブなビジョンを形にする新しいコンピューティングの可能性

すでにAI自体はゲーム分野で使用されてきたが、Generative AIの研究が急速に進むにつれ、新しいステージを迎えていると感じている。

責任ある研究開発

Generative AIがゲーム業界や制作コミュニティをどのようにサポートするかを考える上で、以下が重要.

  • 協力的で責任あるアプローチ

  • ゲームクリエイターが常に中心

  • 従来のゲーム開発とジェネレーティブAIの融合

  • クリエイティブなリーダーがジェネレーティブAIの活用を自ら判断

  • 各ゲームやプロジェクトのビジョンや目標に合った手段の選択


これからの展望: AIを活用したXboxの取り組み

障壁や不便さを減らす

AIを活用して、ゲームのプレイや開発における障壁・不便を解消することに注力する。

  • AIプロダクトのイノベーションをより早い段階で公開

  • プレイヤーやクリエイターが新しいAI機能や可能性を実験して共同で作り上げる機会を提供

これにより、本当に必要とされる課題解決に集中し、新たな価値を提供するAIイノベーションを目指す。

責任あるAIの原則

ツール開発においては、「責任あるAI」を土台とし、以下の6つの原則に沿ってAIソリューションを設計。

  1. フェアネス

  2. 信頼性と安全性

  3. プライバシーとセキュリティ

  4. 包括性

  5. 透明性

  6. 説明責任

今後の発表にご期待を

  • 今年中にも、AIを使った新たなゲームクリエイター支援策や、あらゆるデバイスで最高のプレイヤー体験を提供するための発表を予定

  • GDC 2025に先駆け、Xbox WireやAI Resource Hubでさらなる詳細を公開

AIを活用したゲームの未来を共に形作っていくことを楽しみにしている.


まとめ

長きにわたり培ってきたAI技術と、新たなジェネレーティブAIのブレイクスルーが融合することで、

  • クラシックゲームの蘇生

  • ゲーム開発プロセスの拡張

  • プレイヤー参加型のコンテンツ創出

など、ゲーム体験の新しい可能性が次々と広がっている. Xboxでは、クリエイターを常に中心に据えながら、責任あるAI活用を推進し、より多くの人により良いゲーム体験を届けたいと考えている.

さらに詳しく知りたい方へ

Microsoft Gaming CEOのPhil Spencer、Ninja TheoryのスタジオヘッドであるDom Matthews、そしてGame Intelligenceチームを率いるSenior Principal ResearcherのKatja Hofmannが、今回のニュースについて語る対談も要チェック.

Introducing Muse: Our first generative AI model designed for gameplay ideation

詳細インタビューまとめ: World Human Action Modelとゲーム開発の未来


はじめに

Phil
「皆さん、ここに集まれて素晴らしいと思ってる。
最近、私たちのチームが取り組んでいるWorld Human Action Model(WHAM)に関するエキサイティングなニュースが出ているかもしれない。今日は、Microsoft ResearchチームのKatjaと、Ninja TheoryのDomに参加してもらい、この興味深い研究と、ゲーム開発の未来、そして私たちの研究にどう影響するかについて話したいと思っている。

今回のモデルは、Azure Foundryに公開されて、モデルの重みデータはHugging Faceで公開されたばかり。 クリエイターや研究者コミュニティの皆さんが、この研究に参加して、共に学ぶことができるようにするため。

私たちとしては、この研究を非常にユニークな機会と捉えている。何よりビデオゲームが持つ「アートとサイエンスの交差点」を活用して、クリエイターコミュニティと一緒に成長できるツールを提供したいと考えている. このテクノロジーを通じて、クリエイターが今までできなかった新しいことに挑戦できるのは、とてもワクワクする。

幸いにも、イギリスのケンブリッジでGame StudiosとMicrosoft Researchが隣接しており、両チームのコラボレーションがスムーズに進んでいる. 今回は、Katjaにこの技術と取り組みについての考えを聞きたいと思う.」


Katjaによる技術の背景と意図

Katja
「Phil、Dom、ありがとう。 こうして今日リリースされる研究について振り返る機会をいただけて、とても嬉しく思う。

今回の研究では、ジェネレーティブAIモデルをどう開発すれば、実際のユーザー(ここではクリエイター)のニーズに真に応えられるかを探ることが鍵だった. つまり、クリエイターがどんなモデルの機能を必要としているのか、そこにフォーカスしようとした。

具体的には、アイデアの素早い検証や深掘りを可能にするツールが何を求められているのかを見極めるために、私たちは最初に27名のゲームクリエイターを対象としたユーザースタディを行った。そこから得られた知見は、すでにコンピューター支援のクリエイティブ研究で注目されている反復的な調整(iterative tweaking)や、発散的思考(divergent thinking)が重要だということ。

しかし、多くの場合、モデル開発ではこうした点が後回しにされがち. そこで私たちは、最初からこれらの機能を軸に据えて、素早いアイデア創出や対話をサポートできるモデルをどう作るかというアプローチをとった. そうして開発したのがWHAMで、特に「一貫性(consistency)」「多様性(diversity)」「持続性(persistency)」というモデル能力にフォーカスしている. 詳しくは研究論文やデモ動画をぜひ見てほしい.」


古いゲームの保存と新しい可能性

Phil
「私がこの研究で特に興奮しているのは、ゲームの保存(preservation)という視点。例えば、昔のハードウェアに依存していたレトロゲームがある。 そのエンジンが動くハードウェア自体が少なくなっていくと、ゲームは遊べなくなる。 でも、もしこのモデルが古いゲームのプレイデータや映像から学習して、オリジナルのエンジンやハードウェアなしでも、そのゲームを再現できるとしたら?

ゲーム保存の重要性を私たちはずっと語ってきたけど、もともとのハードウェアを必要としない形でゲームが完全再現され、あらゆるプラットフォームに移植できるようになるかもしれない. これは本当に大きな可能性だと思う.

それに、今回の研究はNinja Theoryの『Bleeding Edge』を題材にして行われたけど、Dom、クリエイター側としてはどのように感じている?」


DomによるBleeding Edgeとクリエイター視点の活用

Dom
「そうだね、Phil. KatjaのチームとNinja Theoryは、同じケンブリッジ市内で本当に近い距離にいるんだ. 私たちがXbox Game Studiosに参加したとき、Katjaを紹介されて、どうコラボできるかを一緒に考え始めた。

そして何年か協力を続けてきた結果、Katjaから『Bleeding Edge』をマルチプレイヤーのカタログタイトルとして使い、研究と技術のテストベッドにしたいと提案された. 私たちはそれを快諾し、今日見ている成果が、まさにKatjaとチームの取り組みの結晶だ。

私がゲームクリエイターとして常に興味があるのは、「どうやって自分たちのチームの生産性を高めるか」ということ. つまり、クリエイティブな野心やアイデアをさらに押し上げるにはどうすればいいか. この手のAI技術は、ただ単にAIがコンテンツを自動生成するというよりも、私たちの100人規模のクリエイティブな専門家チームが、より多くのことを、より迅速に、そしてより自由に試せるようになるためのワークフローやアプローチを作るものだと考えている。

たとえば、この技術を実際のゲーム制作に使ってコンテンツを生成する予定は今のところないけど、アイデアの素早い具現化や試作を助けるツールには大いに可能性を感じる. 私自身、ゲームというメディアは「人間のクリエイティビティ」が核だと思っている. インタラクティブという方法を通じて、クリエイターがオーディエンスと対話する作品を作り上げているわけだから。

だから大事なのは、人間のクリエイティビティが中心にあって、このAI技術がその能力をさらに拡張する形で貢献できること. そうすれば、クリエイターは自分のビジョンをこれまで以上に高いレベルで実現できるようになる.」


今後の展開と抱負

Phil
「私たちはいつも、クリエイターが今まで作れなかったものを創造できるようなツールを提供したいと考えている. 今回も、KatjaのチームとNinja Theoryがさらなる進化を続けていくのを楽しみにしている。

もうすぐGame Developers Conference(GDC)が控えているから、その場で私たちのクリエイティブチーム、プラットフォームチーム、研究チームが進めているイノベーションをもっと披露できる絶好の機会になるはず. 次にどんな発表があるのか、ぜひ期待してほしい. ここまで本当に素晴らしい進捗で、改めておめでとうと言いたい.」

Katja & Dom
「本当にありがとう. 素晴らしいコラボレーションに感謝している.」


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