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パレスチナに自由と平和を 詩作

この腕を

あったかくて強い腕はいつも頭を撫でてくれた
次の日には黒焦げになって帰ってきた
柔らかくしなやかな腕はいつも抱きしめてくれた
次の日にはバラバラになって帰ってきた
それ以外は無くなっていた
ねえ、かえしてよ。

見える世界

あの店は美味しかった。天国みたいな味だった。
それは欺瞞だった。
遊戯に耽る子供のように銃を振りかざす兵士を彼等は助けていて。
私は地獄を詰めたモノを吐き出したくなって。
吐けない代わりに捨てた。

私の宝


初めて刺繍をした。
オリーブとハトとバラを縫った。
プレゼントした時のみんなの笑顔を忘れない。
その布が赤く赤く染まっていた。
朦朧とする意識の中、宝を奪う奴等に手を伸ばした。
けれど、取り返せなかった。

生まれてきた、それだけ

我が子が生まれてきた。
わたしは泣いた。
生まれてきてくれてありがとう。
嗚呼、けれど、この地獄のような世界を生きねばならないのか。
生きて欲しいのに、我が子の成長を見届けたいのに。
彼奴等はそれすらも許してくれない。

空と地上

奴等が来る前の空は広かった。
奴等が来てから空は狭くなって檻になった。
奴等が来る前の地上は広々として橄欖の香りがした。
奴等が来てから地上は仕切られて硝煙の匂いがした。
ああ、私の世界は無くなっていく。
奴等の悪虐で、彼等の無関心によって。

あわれみ

「国の発展のためだ。憐れとは思うが、死んでくれ」
一人の兵士がそう言って私達に銃を向けた。
大義のため、多数のための少数の犠牲、それが国のためか。
嘘をつくな。お前達はただ奪いたいから殺しているだけだろう。
武器しか持てないお前達に憐れまれるのは屈辱だ。

たべる

1分もしないうちにメシを食べ終える。
敵襲に備えて、逃げられるように、するためだ。
味わう余裕なんて無い。味わっていたら殺される。
だから、食って食って食って食うのだ。
生きるために、逃げるために。

異邦人

旅行先でおばあさんに刺繍を教わった。
拙くて柄がぐちゃぐちゃでほつれもある刺繍をおばあさんは笑って身につけていた。
帰国した数ヶ月後、ニュースが流れた。
その中に私の刺繍をデコに巻いているおばあさんが屍として映されていた。

クレーンによって

花を供えようと墓地まで足を運んだ。
瓦礫の中で咲いていた花を手に私は歩く。
母は、父は、祖父母は、親戚は、友達は、喜ぶかな。
一族に伝わる歌を歌いながら入った時、目の前が真っ暗になった。
墓地が、無くなっていた。

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