見出し画像

文学フリマ東京40に向けて「黄表紙のぞき」3冊目つくります

江戸時代の絵草子の一ジャンルである黄表紙。
それまで女性や子供むけだった絵入りの読物に、安永四年(1775)年、大人の男性を意識した「金々先生栄華夢(きんきんせんせいえいがゆめ)」という作品が登場しました。

内容は、田舎から出て来た主人公が、休憩に立ち寄った粟餅屋でついうたた寝。その夢の中で大金持ちになって遊びまくるというもの。
当時の流行ファッションや吉原、深川、品川といった三大ホットスポットの特徴まで書きこまれたナウでヤングな作品は、またたくまに大ヒットとなり、それ以降、この黄表紙という形態はお江戸の商業出版をリードしていくことになります。

黄表紙の作品群は、浦島太郎が浮気して出来た人魚が花魁になったり、桃太郎の後日譚として桃太郎が連れ帰った白鬼が猿とバチバチの恋のライバルになるとか、本当に荒唐無稽で馬鹿々々しくもオモチロイ作品がてんこもありにあるのですが、なにせ「くずし字」なので読める人がほとんどいない。
なんとか読めても当時の言葉遣いや風俗、世情がわからないと何が面白いのかわからない。
そこで解説本などを買ってきて一生懸命読んでみるけれど、絵入草紙というものは絵と文が連動しているから面白いのであって、解説を読みながら絵を見ると面白さが半減、いやほぼ失われてしまいます。
(もちろん研究書の場合はいいのですが、一般向けとしてどうかなという話です)
現代の漫画のふきだしの中が宇宙語になっていて、その下に日本語で解説がついている、と思ってください。
あんまり楽しくないでしょう?

そこでなんとか当時の人が、ゲラゲラ、ウフウフ笑って読んでいたように気軽に黄表紙を楽しめないかと思い、考え付いたのが、レイアウトはそのままに、なるべく今の感性に合う言葉で現代語訳をして元の文章の位置に入れる、ということでした。
どうしても本文の文章だけでは分かりづらい語句や背景事情などは欄外に記載。


これを(NDLより)
こうするわけです

このように、スッキリ!眉間にしわを寄せることなく気軽に黄表紙を読めるようにしたのが、拙作「黄表紙のぞき」という本。こうしてみると、「なんだ、江戸の人たちも今の私たちと同じ欲望まみれ、こんなダジャレで笑ってたんだな笑」と、江戸時代がぐっと身近に感じられます。

※NDL(国立国会図書館デジタルコレクション)の画像は、昔の本だけに暗く汚れがひどいものが多いので、色調を変え、汚れなどを不自然にならないよう取り除いてなるべく見やすくする、という作業が実は一番大変だったりします。

こちらが一冊目の「黄表紙のぞき」。↓


くずし字も勉強していますが、勝手な解釈にならないよう、様々な書籍も参考に(参考文献も掲載)。
文学フリマや通販で販売したところ、大変好評だったため2024年12月に調子にのって続編も出しました。

※ありがたいことに売り切れましたが、また再販しております。

さらに、2025年は大河ドラマ「べらぼう」も放映中ということで、3冊目となる「続続 黄表紙のぞき」を次の文学フリマ東京40に向けて作っていこうとしているところ。

しかし、前述のようにNDLの元画像のデータがあまりに汚れが激しいと修正ができないものもあり、これぞと思う作品を自由に選べないという制約もあって、紹介する作品選びはなかなか難しい。

<1作目の掲載作品>
「金々先生栄花夢」、「桃太郎後日噺」、「的中地本問屋」、「江戸生艶気椛焼」、「箱入娘面屋人魚」

<2作目の掲載作品>
◆「心学早染草」、「人間一生胸算用」、「莫切自根金生木」、「大悲千禄本」、「辞闘戦新根」

三作目は今のところ、遊女の手練手管に感嘆しきりの「心学時計草」、山東京伝が遊女だった妻を迎えたことから、その妻の今までの苦労を紹介し、男どもはもっと遊女を大切にしなければいけないぞと和尚姿になって説く「九界十年色地獄」は入れたいな~と思っていますが、さてどうなりますやら。

ご興味ある方はぜひお楽しみに。

大和堂サイトへはこちらから


いいなと思ったら応援しよう!