精神科医なのになぜこんなに明るいんですか?SNSで話題の精神科医に23の質問!
精神科医は日々様々な状況におかれた患者を診療している。
時に患者が自殺に至るケースに直面することも少なくない。
そう思うと精神科医自身が精神を病んでしまうことはないのだろうか?
調べてみると『精神科医はなぜ心を病むのか 』という書籍が刊行されており、ネットでも精神科医の自殺率は一般の人の5倍という記事も出てきた。実際のところどうなんだろうか?
そんな中、精神科をもっと身近に感じ、世間の偏見をなくしたいという思いから、YouTubeやTwitterで情報を発信している精神科医がいる。
メンタルドクターSidowさんである。
昨年弊社から『メンタルドクターSidowが教える人間関係も仕事「しんどいこと」をリセットする方法 』を刊行。
彼のSNSの発信を見るととても軽やかだ。見た目も世間一般の20代若者と変わらず、リア充を思わせる印象も感じた。精神科医のイメージとSidowさんにギャップを感じ、彼が精神科医になろうとしたきっかけやYouTuberとなった今について直撃してみました。
(2021/5/5 clubhouseより)
メンタルドクターSidowさん プロフィール
精神科専門医×YouTuber。
東京都生まれ。国立筑波大学附属高等学校を経て、東邦大学医学部を卒業後、2年間の研修期間を経て精神科を選択する。精神科専門医。医学博士。現在は都内の精神科病院に常勤医として勤務。
精神科医として働くなかで、世間の精神疾患に対する偏見や誤解の解消、精神科への早期受診の必要性を実感し、SNSで精神科の情報発信を始める。
馴染みやすさと分かりやすさを重視した精神科に関する発信が、精神疾患のある人にとどまらず話題となり、YouTubeやTwitterなど自身が運営するSNSの総フォロワーは10万人を超え、さらに人気急上昇中。
YouTubeが注目する次世代のクリエイター「YouTube NextUp 2019」の日本代表にも選出される。
Q1 精神科医という職業をめざしたきっかけはなんですか?
高校生の時に同級生が自殺で亡くなってしまって、そのときに人間の心理や、自殺に至ってしまう人の考えに興味を持ちまして、そこが精神科を目指したきっかけみたいなところはありますね。
あまりメディアでは公表していないのですが、実は父も精神科医です。
ただ父が精神科医だから自分も目指そう、と考えていたわけではありません。でも精神科医という存在は他の人と比べると身近にあったかもしれません。
Q2 「友人の死」はSidowさんにどのような影響を与えましたか?
今だから半分笑い話みたいに言えるんですけど、高校生ぐらいのときまで、半分ぐらい本気でミュージシャンになりたいと思っていて、中高と、音楽をがっつりやっていたんです。
同級生が亡くなってしまったというのは、高校3年のはじめだったんですけど、その頃はあんまり進路を真剣に考えてなかったんです。ミュージシャンになるのも、半分は本気だったんですけど、もう半分はそんな甘くないだろぐらいに思っていて進路も決めかねていました。
しかし、その出来事があってから、精神科医になるには医学部に行かないといけないことを知り、真剣に医学部を目指そうと思いました。
Q3 ミュージシャン志望からまさかの医学部転向?
高校生の頃はバンドを組んでいて、打ち込んでいました。
高校1、2年ぐらいのときはバンドにかなりコミットしていたんですが、高2の後半から高3になると周りが真剣に受験についてとかを考え始めるじゃないですか。
そのころから周りの空気感が変わってきて。これはどうやら自分の今後のことを考えなきゃいけないなみたいなときにその出来事(同級生の自殺)があったんです。
受験をしないといけないと思ってはいたんですけど、身が入ってなかったというか、なんとなくふわふわした感じでいたのが、その出来事もあって、ようやく進路が決まって、自分もピリッとするようになったっていう感じですかね。
Q4 精神科医を目指すくらいですと、子供のころから心理学や哲学に興味持っていたんですか?
全然、全然(ない)ですね。
ただ、小学校くらいの頃から友達の悩み相談に乗るのは好きでした。
Q5 精神科医ってもっとまじめなイメージだたんですが・・・明るいですね!
そうですね、あんまり深く長く思い悩んだことはないかもしれないですね。
適正だけでいったら深く考えないタイプの方が(精神科医には)向いてるのかなとは思います。
Q6 精神科医は共感力が高いのですか?
中には自分自身がメンタルの調子を崩した経験から、心理系の仕事を目指す方もいます。
でも、共感することは大事ですけど、同調しすぎちゃうと、自分がメンタルを持ってかれてしまうリスクはあります。例えば自分の周りの精神科医の話を聞いても、1年に1人ぐらい、メンタル的に病んでしまって仕事を離れてしまう人はいるようですね。
そうですね、やっぱり共感しすぎてしまったり、そのせいで思い悩んでしまったりとかでメンタルを持ってかれてしまう方は、一定数いるかなと思います。
Q7 診察でエネルギーを持ていかれることはありますか?
自分はうまく持ってかれないようにする、ある程度ちょっと一歩引いた目でアドバイスするなどを、心がけてはいます。
でもやっぱり、エネルギーを持ってかれてしまう人も中には居ますよね。そこも切り替え力みたいな力が大事かなあとは思いますね。
Q8 Sidowさんがメンタル落ちるときはどんな時ですか?
プライベートでちょっと落ち込んだりすることはあっても、正直、仕事関係ではないかもしれないですね。
Q9 そもそもメンタル弱い人はどうしたらいいですか?
もともとの性格や考え方はありつつも、メンタルの強い弱いって、基本的には、打たれ強さ・打たれ弱さというよりも、物事の捉え方のことだと思っているんですよね。
メンタルが弱い人というのは、例えばちょっとした出来事でも、すごく落ち込んでしまったり、それを長いこと引きずってしまったりという考え方をしやすい。そういう考え方をちょっとずつ変えていく、修正していくっていうのは後天的にでもできるのかなと思ってます。考え方を少しずつ変えていくことに役立つトピックは、SNSでも積極的に発信するようにしてます。
Q10 マイナス思考が止まりません、どうしたらいですか?
筋トレとかストレッチとかと一緒で、日々何かが起こったときに考え方を切り替えるトレーニングを繰り返していく。自分の元々の性格はありつつも、考え方を切り替える方法を日々の中で実践していって、こういう時はこうしようと意識し続けることによって、根本的に変えられる部分はあるかなと思います。
Q11 精神科医がYouTubeをやるということに、意見や反発はなかったのでしょうか?
初期の頃は一部ですけど否定的な意見もありました。要は「医者は本業やってろ」という意見ですね。
でも絶対そういう人はいるだろうし、やり始めは数字も出てないし、自分が何をやりたいのかも伝わっていないからそういうこともあるかなと思っていました。今となってほとんどいないですけどね。
僕の場合はだいたい3年ぐらい前にYouTubeを始めたんですけど、その頃は医者のYouTuberはほぼいませんでした。でもYouTubeを始める専門家が絶対増えると思っていたので今のうちからやっておけば、将来的に数も増えるだろうし、数字が増えればある程度認めてもらえるだろうというのは予想がついていたので、地道にやっていたって感じですかね。
Q12 YouTubeの編集って大変じゃないですか?忙しくないんですか?
YouTubeは1人で撮影して、編集は構成までやってます。
以前は自分で文字入れとか効果音とかテロップだしなどの編集もやってたんですけど、さすがに回らなくなっちゃいました。当時、3年前に始めたときは頼める人もいなかったから自分でやるしかなかったんですけど、最近はYouTubeをやる人が増えた分、動画編集者も増えたんですよ。なので、お願いして、時間を節約しています。ただ、始めた当初は全部自分でやってました。
時間は、もう無理やり作ってましたね。とりあえず仕事が終わって、撮れる日にまとめて撮って、本当に仕事終わって寝るまでの時間ずっと編集してました。編集日と撮影日をうまく設定して時間作ってましたね。
Q13 YouTubeを始めてから、ご自身の中で変わったなと思うことはありますか?
普段絶対出会わない人たちと出会えるようになったことが大きいです。
病院で働いているだけだったら、医療関係の人とか、その友達ぐらいまでしか繋がらなかったのが、YouTubeを始めたおかげで、YouTuberの友達もできたし、それ以外にも、お仕事をもらうことによって、いろいろな業界業種の人たちと出会うようになれたのが、一番良かったなと思います。
Q14 3年前にYouTubeを始めていなかったら、今のSidowさんと違う自分になっていたと思いますか?
自分は元々高校でガッツリバンドやっていたような、ある意味多動な人種だから、何かしらその時に流行っていることをやってたんじゃないかなと思います。
3年前は、自分が専門医を取って、ある程度仕事も落ち着いて、時間が取れるタイミングで新しいことしたいなと思ってYouTubeを始めたんです。
高校時代バンドをやっていたと話したと思うんですが、実は大学時代も続けてバンドをやっていて、当時からYouTubeに曲を出したりしていたんですよ。ただ、働き始めるとみんな集まれないから、ライブとか練習とかもできなくなってしまって。
自分1人で何か始めるんだったら、せっかくなら自分の専門性を活かしてYouTubeで精神科のことを発信したらいいなと思ったんですよね。
Q15 YouTubeをみてSidowさんに診てもらいにくる患者さんはいますか?
勤めている病院のことは大々的に公表してないんです。だから動画を見てかかりに来る患者さんは多くないですね。
Q16 患者さんから「見てました!」と言われることはありますか?
よくあります。「実は見てました」とか、「調べたら先生出てきました」とか、担当患者さんに「もしかしてメンタルドクターの!」と言われたことは何回かあります。
そういうときは苦笑いするだけです(笑)別に嘘はつかないので、「観てくれてありがとうございます」とお伝えはしてます。
Q17 コロナになってから患者さんの傾向は変わりましたか?
コロナそのものが原因で精神科に来る人はあまり多くない気がします。
どちらかというと、すでにかかっている人がより調子を悪くしたり、むしろよりよくなったりするケースが多いです。
調子がよくなる原因で大きいのはテレワークですね。
今まで週5回出勤で職場のストレスが強かった人にとっては、テレワークによって時間の縛りが少なくなり、上司にガミガミ言われることも減って調子が良くなる方もいます。
調子を悪くする人と良くなる人の割合は同じくらいだと思います。
特に働いている人だと楽になった人が多くて、もともと働いてない人や学校に行けていない学生さんや一人の時間が確保できなくなった主婦の方などはマイナスの影響が大きいかなと思います。
Q18 男女でいうと患者さんの割合はどれくらいでしょうか?
数えたことはないのですが、女性の方が基本的には周りに相談をしやすい傾向があるため、一般的には女性のほうが多いと言われています。
男性はあんまり自分の悩みとかを言わないんですよね。だから悩みを抱えこみやすいし、その分精神科の受診も遅れると言われています。
Q19 男性の場合、本当に深刻な状況になってから受診というケースが多いのでしょうか?
そうですね。よく言われてるのが、うつ病の患者さんは女性が男性の2倍いるんですけど、うつ病で自殺する患者さんって男性が女性の2倍いるんですね。
これは、女性の方が軽症の段階で病院に行くから、患者数として多くカウントされるんですけど、男性の場合は、深刻になってから受診されたり、結果的に亡くなってしまうケースもあるので、自殺者数だと男性の方が多いですね。
Q20 自分は弱いといえる人のほうが強くなれる?
そうですね、相談できる環境があるかどうかというのが大きいと思っています。最終的に自分で悩みを抱え込んでしまってどこにも相談できない状況になったとき限界がきてしまうことが多いです。
少しでもつらいとき、悩んでいるときに話せる相手がいるということ自体が防波堤になる可能性があるため、その話せる環境があるかどうかっていうのは、やっぱり大事なポイントだと思います。
Q21 有名人でもメンタルに問題抱えている人はいますか?
YouTuberの人や、有名な方でも、何かしらつらい経験を抱えている方はたくさんいます。自分としてはそういう経験をどんどん発信してもらいたいと思っています。有名な人たちが、「実はこんなことがあった」という話をすれば、視聴者やフォロワーの方も「この人たちにも、そういうつらいことがあったのか」と思えるので、そういう経験を話せる方には、自分のチャンネルに出てもらってお話を聞きだすようにしてます。
YouTuberの人たちって、自分の素とか、本音をなるべく見せた方が、ある意味視聴者に受けるというか、ファンの方も聞いてくれるというのを無意識にわかっている人が多いです。だから、コラボした際、そういう過去のつらい経験の話を振っても、意外と話してくれますね。逆に、「話したいです」っていうことで、声をかけてくれる人もいます。
Q22 自分の弱さをどうやってさらけ出せばいいですか?
自分なりにある程度消化できてる部分は、本人が話すことによって、周りにもわかってもらえるし、かつ、自分の心の整理にもなることは多いです。
そういう意味で、最近活動者の方々が、「実は昔精神科に通っていました」とか、「こういう病気がありました」という話をオープンにしている風潮があるのだと思います。それは僕のチャンネルに出てもらった人だけに限らず最近の傾向と言えます。隠しながら生活すると大変ですし、少しでも理解者が多いほうが生活しやすいと思うので。相手は選んだほうがいいとは思いますけど、そういうところも含めて受け取ってくれる人がいたほうがいいと思いますね。
誹謗中傷やネットいじめなどマイナスの面ばかり強調されがちですが、インターネット上での関係も、ちゃんと支えてもらってる感覚や、わかってもらえてるっていう感覚が生まれればいいと思います。ただ愚痴になってしまっていたり、使うことによってあまりプラスがない場合もあると思うので、そうはならないように注意したほうがいいかなと思います。
Q23 「ハマりやすい」を超えて「依存症」かもしれません
依存症はいろんな種類があるので、ハマるモノによっては悪影響が出てしまいます。そういう場合は、まずはハマらないこと、もしハマってしまった場合は悪影響が出ないよう仕組みを考えることですかね。
例えば、アルコール依存症になってしまう場合に、一番最初にやるべきことは、家の中から全てのお酒を捨てること。あとは、お酒はスーパーやコンビニで買えてしまうので、通勤・通学で、スーパーやコンビニに寄らないルートで帰るとか仕組みを作ってしまいましょう。自分の意志に頼るのは難しいと割り切って、意思に頼らなくていい方法を考えるのがまずはやるべきことかなと思いますね。
Sidowさん、インタビューありがとうございました!
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