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全国でクマが増えてるのはソーラーパネルで山を追い出されたから

こんにちは!!
野嶋ゼミ3年ファクトチェックチーム(李、田村、中里)です。

今回は、「全国でクマが増えてるのはソーラーパネルで山を追い出されたから」という内容のX(旧Twitter)の投稿についてファクトチェックを行いました。

検証対象

検証対象は、Xにおいて2023年9月19日に日本の国益🎌CFJ🎌(@JapanKokueki___)氏によって投稿されたポスト(旧ツイート)です。

出典::X(旧Twitter) 検証対象の投稿

投稿には、「秋田の野生動物目撃情報 赤色が熊 ここまで全国でクマが増えてるのはソーラーパネルで山を追い出されたからではないのか?」と記述されています。

何故このテーマを選んだのか


この投稿は、近年関心が高まっているクマ問題についてのポストであり、関心が高まっている要因としては、

・今年度のクマによる人的被害は過去最多であること。
・クマの捕獲や射殺に対するクレーム問題が話題になっていること。

の二つがあり、投稿は2023年11月14日時点で29万回の表示、3千件のリポスト、7千件以上のいいねを獲得しているため、実際に世間の注目度が高いと考えられます。

そのため今回は、クマが人里に降りてきてしまう原因は本当に私達人間が環境持続のために作ったソーラーパネルのせいなのか、それとも、この投稿には他の意図があるのか、という点に着目しファクトチェックを行いました。

レーティング

大東文化大学社会学部野嶋ゼミでは、ファクトチェックのレーティングを行う際、特定非営利活動法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のレーティング基準に乗っ取り、レーティングを行っています。

出典:FIJのレーティング基準

そして、レーティング結果は

・ポストの画像は秋田の野生動物目撃情報であり、赤色が熊である点と全国でクマが増えているという点は正確である。
・しかし、ソーラーパネルで山を追い出されたからという部分をあえて強調する意図があると判断。

等の理由により、重要な事実の欠落や誤解の余地が大きいミスリードと判定しました。

検証過程

■投稿者のクマの目撃情報の画像は本当なのか?

1つ目の検証過程として、そもそもこのクマの目撃情報はねつ造ではないか?という点について検証した結果、投稿者が「秋田の野生動物目撃情報」として引用していたスクリーンショットは、

熊の分布・その他野生生物の出現情報・URL・サイト上のアイコン

等が「秋田県野生動物情報マップギャラリー【令和5年度】」(https://tsukinowaguma-pref-akita.hub.arcgis.com/)と一致していたことから、画像に関しては正確と判断しました。そして、秋田県野生動物情報マップギャラリーの画像と投稿者のスクリーンショットで色などの差がある点に関しては、PC版サイトとスマートフォン版サイトの両方が存在する事が原因であることが分かりました。

画像左:秋田県野生動物情報マップギャラリー【令和5年度】(PC版サイト)
画像右:投稿者のスクリーンショット(スマートフォン版サイト)

また、秋田県公式HP(https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/23295#クマを知ろう )によると、今年度はクマの目撃情報が例年に比べ増加していることも分かりました。恐ろしいですね。

出典:秋田県HPより引用

■ソーラーパネルの位置と比較する


ここまでの検証では、検証対象の投稿の前半部分は正しいことが分かりました。では、投稿の後半部分はどうでしょうか。

まず、この投稿者の主な主張は、「クマがソーラーパネルで追い出された」というものです。そこで、秋田県のメガソーラーの位置の画像と、クマの目撃情報の画像を照合し、検証しました。

秋田県HP:メガソーラー導入状況・予定(2021)より引用

この画像が、公式HP、「秋田県内の再生可能エネルギーを利用した発電の導入状況」(https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/7451)に掲載されていたメガソーラー導入状況を表した画像で、黄色の丸の部分がソーラーパネルが設置されている場所を示しています。しかし、この黄色の丸では、画像を合成させても確認が取りにくいため、

FCチームが、黄色の丸付近を緑で塗り潰しました!

そして、クマの出現情報と重ね合わせた画像はこちらです。

重ね合わせた画像からは、ソーラーパネルの設置場所と目撃情報が一致している場所が存在することが分かりました。しかし、ソーラーパネルが設置されていないのに目撃情報がある場所も存在することが分かり、どちらとも言えない状態です。

しかし、秋田県公式サイトにはメガソーラー導入は平成30年度が最後なことが示されています。このことから、少なくともメガソーラーは今年度の急増した件については関わりが薄いことが予想されます。

■クマ出現数増加の理由

これまでの検証から、今年度のクマの出現数増加はソーラーパネル設置のための森林伐採と関連性が薄い事が分かりました。では、なぜクマの出現数が増加したのでしょうか。

まず、環境省の「令和5年度 クマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議」資料(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html)によると、昨年の食料が豊作であったことにより、今年度の活動量が増加したと推測​されるとのことでした。

出典:環境省「令和5年度 クマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議」会議資料


また、一般財団法人の日本熊森協会公式HP(https://kumamori.org/bear.html)からは、​生息地の破壊を要因の一つと位置づけていますが、主な原因は食料に関する問題と森林減少による生息地の減少であり、ソーラーパネル設置による森林減少はクマの生息地減少のごく一部の要因でしか無いということが読みとれました。

出典:日本熊森協会公式HPから引用

そして、ソーラーパネル設置による森林破壊はクマ出現数に影響をわずかながら与えている事は分かりましたが、秋田県のソーラーパネルは5~10年前に設置​されたものであるため、今年の出没が急増した件との関連性は低いと考えられます。

まとめ


検証過程により、今回の検証対象の「秋田の野生動物目撃情報 赤色が熊」の部分と​「全国で熊が増えてる」の部分は正確だと判断しました。しかし、

・熊の目撃情報が多いソーラーパネルが無い地域​
・熊の目撃情報が少ないソーラーパネルが設置された地域​

などの検証対象と真逆の地域も多くあることがわかりました。

​さらに、ソーラーパネル設置に伴う森林破壊は熊出現数増加のひとつの原因ですが、​あくまで数ある原因の内の一つであり、秋田県で設置されたのが五年以上前である事や、主な原因は熊の食料に関する問題である事が分かったため、検証対象は​誤解を与えうるものであると判断しました。

また、投稿者のアカウントの傾向を分析した結果、ソーラーパネルへの悪い印象​を故意に与える意図を感じたため、上記を踏まえた結果、今回のレーティ​ングはミスリードとなりました。​

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