吉田大助
1977年、埼玉県本庄市生まれ。ライター。紙媒体に掲載され、新しい号が出たためにアクセスしづらくなった原稿を、書評メインでちょこちょこアップしていこうと思います。Twitter@readabookreview , yoshidadaisuke0502@gmail.com
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人生はいろいろあるけれど、世界は「不幸」の予感や可能性で満ちているけれど、大丈夫。──嶋津輝『襷がけの二人』(文藝春秋)と『駐車場のねこ』(文春文庫)
滋味たっぷりな人情噺を詰め込んだ、オール讀物新人賞受賞作を含む短編集『スナック墓場』(文庫化に当たり『駐車場のねこ』と改題)で二〇一九年にデビューした、嶋津輝。待望の第二作にして初長編『襷がけの二人』は、四半世紀に及ぶ女二人の運命の物語だ。 冒頭の一章「再会 昭和二十四年(一九四九年)」で描かれるのは、鈴木千代が住み込みの女中の職を得る姿だ。独り住まいをしている三味線のお師匠さん・三村初衣は、目が見えない。口入屋も紹介をためらっていたのだが、〈千代は三村初衣という名を見
【書評】 AI、ダンス、介護。三つ巴のアプローチで人間性(ヒューマニティ)の根幹に迫る、畢生のSF長編──長谷敏司『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』
ライトノベルのジャンルで活躍する一方、AIを題材に取り入れ、ヒューマニティ(人間性)とは何かと問うSF作品を発表してきた長谷敏司。二〇〇九年刊の『あなたのための物語』ではAIに小説を書かせていたが、最新長編『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』ではAIにダンスを踊らせた。 物語の幕開けは二〇五〇年の東京。二七歳の気鋭のコンテンポラリーダンサー・護堂恒明は、不慮の事故で右足の膝から下を失ってしまう。絶望の淵から彼を救ったのは、高度なAIを搭載した義足だ。しかし、身体表現の最