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柴田大輔写真展『土と奏でるブルース』
2020年11月13日(金) - 11月17日(火)
11:00 - 18:00 入場無料
場所:cafe+zakka+gallery MINERVA
〒310-0015 茨城県水戸市宮町2 - 3 - 38
ホテル水戸シルバーイン2F(水戸駅徒歩5分)
※車でお越しの際は、近隣の有料駐車場をお使いください。
新型コロナウイルス感染拡大防止のためマスクの着用をお願いいたします。
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「日本一うまいソバを作る土地がある」
そう聞いて訪ねたのが茨城県常陸太田市の、赤土町と棚谷町だ。初めて訪ねたのは2015年だった。
一帯は、江戸時代初期にはじまる葉タバコ栽培を中心に、その後作(あとさく)として活発になったソバの産地。地域には1200年続く祭りがあり、この土地での人の営みの長さを物語る。
斜面が急な山間は、耕作面積の確保が難しい。限られた土地を有効に使うため、人は知恵を凝らしてきた。その象徴が「輪作」だ。タバコ畑に入れた豊かな飼肥料を生かしつつ、土への負荷を除きながら、年間を通じ収穫を得られるよう複数の作物で畑を回す。また生活に直結する天候を知るための知識は諺となり、生活の中に根付く。
長い歴史の中で生活は常に変化した。次世代に引き継がれたものがあれば、役目を全うしたものもある。400年以上続く葉タバコが姿を消しつつあるなかで、後作のソバが主となったのも、時代の変化に応じる人々の努力のあらわれだ。
そのソバも、「高齢化」と「過疎」から過渡期を迎える。
今年、ひょんなことから、私は常陸太田市で蕎麦を作ることになった。高齢から畑をやめていた方から「うちでソバ、やってみねぇけ?」と声かけられたことがきっかけだった。
作業する中で、私は初めて急斜面での作業のキツさ、発芽と育成を脅かす野生動物と天候への恐れを心底実感し、改めてこの土地の営みを知り、土地に愛着を抱く方の想い、土地を離れる方の感情に、ほんのわずかだが接した気がした。
一帯の土は赤い。この「赤土」のもとで生きるため、人は安寧を祈り、適した作物を模索し、街へ仕事にでた。
この土地が歩んだ道のりは、私の父母が歩んだ道でもある。
営みはこの地で生きるためであり、今日もその営みはここにある。
柴田大輔